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カカの天下  作者: ルシカ
92/917

カカの天下92「前科一犯(ほんとは何犯?)」

 それは警察からの電話から始まりました。


 内容は、カカを預かっているから交番へ引取りに来てほしいとのことです。


 可愛い妹が警察に……その電話を受けた僕、トメの反応はこうでした。


「ついにやらかしましたかっ!?」


 電話向こうの無言っぷりが印象的でした。




「あ、トメさん! わざわざご苦労さまです!」


 まるで上司に会ったときのようにビシッと敬礼をとったのは姉の舎弟の警官、シュー君だ。考えてみれば警官に身内がいるって実はとんでもないステータスではなかろうか。


「ええ、そちらこそ。それで、カカは」


「やっほぃ」


 交番の奥に座っている妹は能天気に手を挙げた。


 でも僕は、その能天気さにいつものように応えることができなかった。


「カカ……おまえも、とうとう」


「……んや? トメ兄?」


「そうか、そうだよな。おまえもあの姉の妹なんだよな。そうだよ、わかってたさ。いつかこうやって人様に問答無用に傲慢無礼な天上天下唯我独尊を百鬼夜行のごとくやってしまう夜叉とか般若とかウーパールーパー(正式名称アホロートル)の類なんだって」


「……なんかよくわかんないけどムカツク」


「ああ、カカ! 可愛さあまるか微妙だけど憎さは千倍の愛しき妹よ! 君が遠くへ行っても……たとえくさい飯をくさい所でくさい仲間とくさい話をしながら食べることになっても、おまえはずっと僕のくさい妹だからなっ」


「まだくさくないっ」


「それで、シューさん。こいつ、なにやったんですか? 殺しですか? 誘拐ですか? 強盗ですか?」


「……コノヤロウ」


「なぜにそのような凶悪犯罪ばかり並べるのかかなり疑問ですが……」


「シューさん。これはあの姉の妹ですよ」


「…………!」


「ちょっとそこの警官! なに「それもそっか♪」みたいにポンッと手を打って納得してるの! そもそもさ、私のしたことなんて大したことないんだから、トメ兄もそんな恥ずかしいこと言ってないでちゃんと聞いて!」


「やー、こんなところに捕まってるおまえのほうがよっぽど恥ずかし――」


「しゃらっぷ!」


 む、なんか入り口に立ったまま大騒ぎしているうちに後ろからざわざわと聞こえてきた。このままではご近所にあらぬ噂が……僕はひとまずシュー君と交番の奥へと引っ込んだ。


「で、なにやったんですかこいつ」


「ええと、わかりやすく言えば」


「全然大したことないよ」


「オヤジ狩りですかね」


「ほらね」


「大したことあるわっ!!」


「んむふひゅうひほひゃひょよふふはほひへ!」 


 僕の必殺技。ほっぺた周辺とにかくモミクチャ攻撃が炸裂。


 これは両手で頬を挟んでとにかくメチャクチャにするという簡単かつ地味に効果絶大な必殺技である。ぜひお子さんにもすすめてあげてください。


 これをやられるとひじょーに煩わしくて高確率で「二度とやられたくない」とおとなしくなります、もしくは「やめんかボケ!」とキレます。


「ひゃひふるほー」


 なにするのーと言ってるかな。


「はふはふ……違うんだよトメ兄。別にお金目当てで襲ったとかそういうんじゃないんだよ」


「そのわりには財布抜いてましたけど」


「それは単なるケンカの礼儀であって目的じゃないの。てかシュー余計なこと言うな黙れ」


「……はい」


 よえーなー警官。


 や、考えてみれば小四の子供に狩られるオヤジも弱いが……まぁカカだしなぁ。


「そのオヤジがさ、綺麗な花を踏んづけたから」


「綺麗って……結構、みすぼらしかったけど」


「黙れと言った」


「申し訳ないですっ!!」


 ほんっとよえーなー警官。


 しっかし……花を踏んづけただけでケンカ売るか普通。いくら規格外な脳みそ持ってるカカでもなぁ……カカがそこまで暴走するといえば……あ。


「なぁ、カカ。もしかしてその話、サエちゃんどっかに絡んでないか?」


「よくわかったね。あの花をね、サエちゃんが綺麗って言ったの。だから綺麗。それを汚すやつは私が血で汚してやる」


「こあい! こあいからその発言! はぁ……おまえは上官がカラスを白と言ったらそれは白、とか言う軍人かよ……」


「ふふふ……サエちゃんは目に映るもの全てを白と言ったら、私は迷わず白ペンキをサエちゃんにぶっかけるよ。それが私の愛」


「や。サエちゃんにかけるんかい」


「目に映るもの全てにかけられるわけないでしょ。だからサエちゃんにかければ解決」


「現実的だな。それでいいのか愛は……」


「あ、あのー」


 あ、ついいつものように雑談に興じてしまったが……ここは交番でカカは捕まったのだ。なにか、処罰とかあるのだろうか?


「相手は子供ですし、処罰などはありませんが……今後気をつけていただけると嬉しいです。多分無理と思いますけど」


 よくわかってらっしゃる。


 とりあえず大事はないようだ。僕は安心してカカを連れて帰ろうとした。


 その折、カカはシューさんに言った。


「シュー。あの花さ、もう誰にも踏まれないように花壇にでもして守っておいてよ」


「……了解しました、お姫様」


 ……あれ、なんで警官のほうが処罰っぽいことさせられてんだ。


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