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カカの天下  作者: ルシカ
91/917

カカの天下91「彼女の生きがい」

「こんばんはー、トメさん」


「おやサカイさん。久しぶりじゃないですか」


 ちっす、家でのんびりしていたトメです。


 カカも遊びに行って何もすることがなくテレビを見ていると、しばらく見なかったサカイさんが訪ねてきました。


「どうしたんですか?」


「いえそのー……最近ずっと家に閉じこもっていたもので、たまには外に出て人と話さないとと思いましてー」


「へぇ……まぁ上がってくださいな」


 サカイさんを居間に通して、適当にお茶とお菓子を出して座る。


「それで、閉じこもって何してたんですか?」


「ええ、その、主にネトゲを」


「ネトゲ? って、ネットゲームですか?」


「はいー。他にもアニメとかを気になった橋から端まで全部拝聴したりー。ネット通販でなんでも届くなんて今の世の中は便利ですねー。ハマってしまってからは外にも出ずにそればかりになってしまいまして」


 ……それなんてニート?


「このままでは人としてダメになってしまうと思い、なんとか重い腰をあげてここまでやってきたのですー」


「重い腰、ですか」


「はい……パソコンの前から離れられなくなってしまって……それはもう日本の将来を腰に背負ったくらい重かったですー」


「……重そー」


 というか腰なのに背負うとはこれいかに。


「というわけでートメさん。こんなダメ人間の私はどうすればまともな人間になれますか?」


 なんかディープな相談がきたな……ええと、そういえばこの前サカイさん仕事辞めたんだよな。ずっとそのままだろうから……


「とりあえず、なんでもいいから働いてみてはいかがでしょう」


「面倒ですー」


「あんた本当にダメだなぁ!」


 近所の優しいお姉さんというキャラというかポジションというか……そういうものが昔はあったのに、いまは見る影もないなぁ……


「でも前はそんな無気力なゴミ人間じゃなかったですよね?」


「ううー、容赦ないですトメさん。でもそうばっさり言ってくれたほうがダメなこの身には効きます……そう、自分でもそう思ってるしー、ぶっちゃけ世間体とかもうどうでもいいから気になりません」


「気にならないんなら効いてないやん」


「そう、前はやる気があったんですー。でも生きがいがなくなってしまったというか」


「へぇ、生きがい」


「なくなってはいないんですけど……なんていうか、その生きがいを確認できないとやっぱりやる気も起きないというか……」


 そういやサカイさんの身の上話、前に聞いたっけなー。能天気にダークなこと言うから事実なのか疑問だったけど……


 たしか旦那さんと別れて、事情があって子供にも会えないんだっけ?


「ただいまー」


 何を言おうか迷っていると、騒がしい足音とともにカカが帰ってきた。


「トメお兄さんこんにちわ、お邪魔しますー」


「と、トメさんここここここ」


「こけっこっこー?」


「こけこっこんにちわ、って何言わせるのサエすけ!?」


 ぎゃーぎゃー騒ぎながらいつものトリオはカカの部屋へと進軍していった。


「む、そういやカカのやつサカイさんに挨拶してな……い、って、サカイさん何してんの」


 はて、今の今まで僕の前に座っていたサカイさんはいつの間にか台所のほうへと引っ込んでいて、そこから顔をちょこんと出してこちらを伺っていた。


 こちらを? いや。


 なんだかカカたちが去っていったほうをじっと見ているような……


「サカイさん? どしました」


「…………………………へ!? はー、いえー、そのー」


「なんでそんなとこに隠れてるんです?」


「いえ、その、気配がしたので咄嗟に」


 忍者かあんたは。というか引きこもってたくせに身のこなし素早いな。


「せっかく来たんですしカカにも挨拶させますよ」


「結構です!!」


 即答だった。


 不自然なまでに。


 自分でもそう思ったのだろう。サカイさんは取り繕うようにブンブンと手を振り回しながら、


「や、あの、ですねー。ほらー、私仕事探さないといけないですしー」


「へ? さっきやる気でないって……」


「いえ、出ました。うん、やっぱり生きがいの確認は大切ですよね」


「は?」


「でわ、私は仕事探してきますのでさよならです。今日は相談に乗ってくれてありがとうござ――」


「トメ兄、お菓子あるー?」


 どたばたと騒がしい足音が聞こえた瞬間、サカイさんは逃げるようにかき消えた。まじで忍者みたいだ。


「あれ、どったのトメ兄、ハトと豆鉄砲食べてるみたいな顔して」


「……いや、なんだったんだろう」


 首を傾げるカカサエサユカのトリオを尻目に、僕は「それを言うなら豆鉄砲をくらったハトだろう」というツッコミも忘れてきょとんとしていた。


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