カカの天下908「とにかくホッケとケーキ」
こんにちわ、サユカですっ。
夕方の喫茶店、わたしとサエすけ、サラさんとテンカ先生の四人は集まりました。そう、バレンタインでトメさんに告白したメンバーです(なぜかサカイさんを除く)。
「皆様、集まって頂いたのは他でもありません」
サラさんが重々しく口を開く。
「今回のホワイトデーについて、皆様が気になってることを説明しようと思います」
「気になること別にねーから帰っていいか?」
テンカ先生が軽々しく口を開く。
「テンカさん! なぜですか、なんだかんだでトメさんにチョコあげてた貴女が気にならないはずが無いでしょう!」
「うっせーな。それよりうちに帰ってからの晩酌のほうが気になるんだよ。今日はホッケ食うんだ。決めてるんだ」
美味しいわよね、ホッケ。わたしはサバの方が好きだけど。
「ホッケの骨についたビラビラしたとこしゃぶりながら日本酒で一杯やるんだ、邪魔すんな」
「なに通のオヤジみたいなことを言ってるんですか」
「へへん」
「照れないでください褒めてないんですから」
「んだよ、怒んなよ。あんたのことも褒めてやっから。えーと、いいおっぱいしてんな、揉ませろ」
「どこまでオヤジなんですか!?」
「あぁん? オヤジなめんな、オヤジが好きそうな酒とつまみは最高にうめぇんだぞ」
「そんなことは今はどうでもいいの! とにかく、ご近所にはこんな噂が流れていたんです、聞いてください」
~ご近所の噂物語~
とある町に、トメという男がおったそうな。その男は大層働き者で、仕事が終わってからも家事に勤しむため、商店街によく訪れていたそうな。
「ぐへへ」
そんな素敵な笑顔が似合うトメには――
「ストップッ」
「どうしたんですかサユカちゃん」
「トメさんはそんな笑い方しませんっ。なんで、ぐへへ、なんですかっ!」
「いいから最後まで聞いてください」
むうっ。
――そんな笑顔が似合うトメには噂がありましたとさ。なんでも、商店街のアイドルおっぱい美人のサラさんに、貢がせるだけ貢がせたうえに身体を弄び、妊娠させたうえに酷いことばかりしているそうな。
「ぐへへ」
「ほら、この笑い方が似合うでしょ」
「ぶっ飛ばしますよっ?」
「お、怒んないでくださいよ。噂してたの私じゃないんですから。続き話しますよ」
――そんなサラさんを不憫に思った街のおばちゃん達は、親身になって話を聞いてあげ、別れるように説得したのでした。
そしてホワイトデー、サラさんは果たしてトメを振ることができるのか!
ご注目!
「こんな噂が広まっていたんです」
「サラさんとおばちゃんが、やたらと良い役なのが気になるわっ」
「そこはスルーしてください。とにかく、そんなわけで私がトメさんと話しているとき、実はいろんなところから野次馬が覗いていたんです」
こわっ。
「つまりこんな感じです」
~ホワイトデーにトメとサラが絡んでいる場面の裏側~
「あぁ、ついに女たらしとおっぱいが接近! あらやだこのセリフってば少し、いやらしいわ!」
「皆で決めたコードネームだから仕方ないわ」
「スパイには付き物ね! あらやだスパイなんて興奮しちゃう」
「ただの野次馬とも言うわね、あぁ、おっぱいが泣いている! おっぱいが泣いている! どうしたというのか!」
「なんか試合の実況みたいね!」
「恋愛は試合みたいなもんよ。いけ、いまだ、おっぱいミサイルだ!」
「それいけ、おっぱい!」
「断れおっぱい!」
「見てみて! 無事に振ったみたいよ!」
「あらやだトメさんたら不細工な顔しちゃって! 天罰ね」
「ちょっと! コードネームどうしたのよ! 本名でてるわよ!」
「そうだったわ。あらやだトメさんたら女たらしな顔しちゃって! 天罰ね」
「訂正箇所そこじゃないけど、とにかくざまぁみろだわ!」
「おっぱいが守られて町内も安心ね!」
「私は噂を終わらせるために、トメさんに冷たく当たるしかなかったんです。その後、あなたたちに振られる姿も見られてたので、トメさんはすごく哀れな人だ的な噂が広まったので一旦は落ち着きました」
「とりあえず、この町のおばちゃん滅びればいいのにっ」
トメさんがひたすらに不憫だわっ。
「それに関しては全く同感です。脳みそ腐ってるんだから全身腐ればいいのに」
「さ、サラさんにしては過激なこと言うわねっ」
「だってあいつら、私のことをおっぱいって呼ぶんですよ!?」
「いいじゃないですか、皆は羨ましいんですよっ。サラさんだって自慢できるとこでしょ?」
「じゃあサユカちゃん。あなたお尻に自信があったら『おいケツ』って言われたいの?」
「全力で嫌っ!」
「そうでしょ? 私が花屋で働いているときも『ねぇねぇおっぱいさん、おすすめはどれかしら』っておすすめのおっぱい聞かれてるようで意味がわかりませんよ! 大体なんでおっさんならともかくおば様方までおっぱいとか呼ぶんですか。おかしいでしょ!」
そこはまぁ、この町、基本的に変ですし。
「ともかく、そんなわけだったんです!! ねぇテンカさん!?」
「ホッケ食べたい」
「話聞けよ呑んべぇ!」
おぉ、ついにサラさんがタメ口を。
「つーかよ、つまり何が言いたいんだ?」
「話を聞いてほしかっただけです」
それだけなんだ。
「あと、その、これからどうしよっかなーとか、皆さんどーするのかなーとか」
「どーもこーもない。オレは酒を飲むだけだ」
なんかセリフだけ見ると格好いいわね。深くないけど。
「そういえばサエすけ、一言も喋ってないわね」
「クリームソーダおいしー」
この二人は飲食物にしか興味ないのかしら。
「せっかく集まってるんだから、何か言いなさいよっ」
「んぐんぐー。そういえばー」
「うんうんっ」
「そもそもこの噂って、テンカ先生がトメお兄さんに告白されたところから始まったと思うんですけどー。そこんとこ、どうなんですか?」
そういえばそうだわっ! たまに喋ったかと思えば爆弾落としたわこの子っ。
「そ、そそそそそうですよ! そこんとこどうなんですか!」
慌てふためくサラさん。わたしと同じく忘れてたみたいね。
「は? いい大人が酒の席の話を間に受けんなよ。第一、あの日のことは酔っ払いすぎて覚えてねぇ」
正論だわっ。正論だけど……酔っているとはいえ、そんな場面があったのよねっ。
「もういいか、オレは帰るぞ。じゃーな」
酔ってるって言っても、覚えてないと言っても、そういうことがあったわけで、それってちょっと、うーん。
「あぁ、帰ってしまいました。ごめんなさい、なんか私が愚痴っただけになっちゃって」
「私はクリームソーダ奢ってもらったんでー、別に気にしてないですよー」
「え、あ、はい」
『そういえばおごりよね、そうよね、小さい子にお金出させるわけにもいかないものね』とブツブツ言いながら財布を確認するサラさん。あらサエすけったらいつの間にかケーキとか頼んでるわ。ちゃっかりしてるわね、私も注文しようかしら。
「むぐむぐ。ところでテンカ先生、『あの日のことは酔っ払いすぎて』って言ってたけど、どの日のことかは覚えてるんだねー」
「「……あ」」
実際の心境は結局わからず終い、とりあえずケーキが美味しい一日だったわ。
いやはや、皆様のおかえりなさいという言葉で泣きそうになりました。そんな温かい言葉をかけられながら書いた話がおっぱいだらけで申し訳ない気持ちですが、ホワイトデーはひと段落ですのでカカ天らしい話をちらほら書こうかと。さすがに毎日更新とはいかず、時間軸も少しずれるかと思いますが、お付き合い頂ければ幸いです。重ね重ね、このように時間を空けたにも関わらずお帰りと言っていただけることをカカ達と共にお礼を申し上げます。ホッケ食べたい。ではまた。