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カカの天下  作者: ルシカ
906/917

カカの天下906「女の敵は酒の味方?」

 審判の日まで――あと4日。


「町内会長、聞きました?」


「あぁ、今回の一番の議題だ。あのサラさんが……妊娠、しただと!?」


「会長! お気を確かに! まだそうと決まったわけでは」


「おい副会長! その笠原トメを今すぐ連れてこい!!」


「会長、ノリがヤクザです」


「我らが愛するおっぱいを汚したことを後悔させてやる!」


「どう見ても変態です」




「……というわけで連れてきました」


「あ、どうも。笠原トメですけど。や、何の用なんでしょう? 僕、町内会とかあんまり接点ないんですけど。面倒で」


「飲め!」


「はい?」


「いいから俺の酒を飲め! てめぇの根性を叩き潰してやる!」


「あ、はぁ。どうも、いただきます」


「言ってることは過激な割に、やること大したことないですね」


「さぁ町内会の始まりだ!」


「いやメンバーまだ集まってないですけど。あぁそんなに飲ませちゃって。そんなに飲んじゃって。もっとやれ」




 審判の日まで――あと3日。

 

 こんにちは、サラです。


「はぁ、はぁ、はぁ」


 私は追われています。走って、走って、必死に逃げて。


 でも、ついに行き止まりで追いつかれてしまいました。


「はぁ、はぁ……ひぃ!」


 振り返れば、恐ろしい形相をした――


 ご近所のおばちゃん達。


「ね、サラちゃん。妊娠は何ヶ月なの!?」


「子供の名前は!? 私がつけようか! タケダなんてどう!」


「それ苗字でしょ! 名前ならやっぱダニエルよ!」


「それより旦那は何してるの!」


「毎日サラちゃんのおっぱい飲んでるってほんと!?」


「あらやだ破廉恥! そりゃ子供もできるわ!」


「そのときはどうせ赤ちゃん言葉でしょ!」


「あらあら経験あるように言うのね奥さん」


「男なんて皆一緒よ」


「いやーん」


「その歳でそのセリフはきついわよ。見苦しい」


「同い年に言われると素直に凹むわね」


「とにかくどうなのサラちゃん!? どうなのどうなのどうなのどうなの」


「いやああああああああああああああああ」


 ご覧のとおり、大好物の噂話が投下されたことで商店街の隠れた野獣達は大興奮。こうなったら誰にも止められません。その傍若無人たるや、まさに野生の獣。いや虫以下。礼儀、遠慮、一切なし。女として、人としての尊厳を生ごみにポイして、ただ「楽しければ良い」という頭しかない最低最悪の人種に他ならない。天国どころか地獄の閻魔も願い下げ、見たくもないというほどの――あれ、皆さん静かになりましたね。


「……サラちゃん。今の、全部、口に出してたよ」


「ええ! 私ったら正直!?」


「……ねぇ奥さん、他人に気を使うって、大事よね」


「う、確かに。礼儀をなくしたら、大人として終わりよね」


 あ、あら。なんだか私の言葉が大ダメージだったのか、散ってくださいました。よかった! やっぱり人は通じ合えるものなんですね!


「仕方ないから笠原さんとこいきましょ!」


「そうしましょ!」


 前言撤回。


 ※この商店街のおばちゃんは基本的に他人の話は(面白そうなネタ以外)あまり聞きません。


「ま、待ってください。そんな噂を流した人はいったい誰ですか!」


「えっと……笠原トメさんが、昨日の町内会で自分で言ってなかったかしら?」


「いいえ、あたし達が行ったときは会長と酔い潰れてベロンベロンだったから話を聞けなくて、鬱憤が溜まったから本人に直接聞きに来たのよ」


「ちょっと奥さん! 何を正直に言ってるの!? トメさんが自分で言ってたんでしょう!?」


「あ、そ、そうそう」


 ※この商店街のおばちゃんは言うことが適当です。


「と、トメさああああああああああん!」


「あ、走り出していったわ。さっきの会話、聞こえてなかったのかしら」


「ご都合主義ね。あたし達にとって」


「そして修羅場ね」


「笠原さんを攻めに行くのはやめましょう」


「見学くらいならいいかしら」


「そうね」


 ※この商店街のおばちゃんはとことん傍若無人です。




 その日。


「どういうことなんでしゅか、トメさあああああん」


「わかんねぇよおおおおおお」


「じゃあ飲んで思い出してくらはあああい」


 ハテナマークが飛び交う中でサラの酒にとことん付き合われたトメ。


 ヤケ酒が進んだだけで、特に作戦実行等はありませんでしたとさ。


「まだおっぱいは始まらないのかしら」


 ※野次馬おばさんです。


「まだね。すいませーん、生ひとつ」


 なぜかその店は平日にかかわらず繁盛したという。




 ――審判の日まで、あと2日。


「トメお兄さん、私のランニングに付き合ってもらえませんかー?」


「え、あ、僕、ちょっと体調悪いんだけど」


「ちょっと汗流したほうが体にいいですよー」


「まぁ、いいけど」


 こんにちは、サエですー。今日はトメお兄さんをハメるため、誘い出してみましたー。


「はぁ、はぁ、飲んだ次の日にこれだけ走るのは堪えるなぁ」


「はい、トメお兄さん。特製ドリンクです。これを飲めば元気溌剌!」


「お、気が利くねぇ」


「ぐいっとどうぞ」


「おう。ぐいっ」


 お酒です。


「ぐはぁ!!」


 ちなみここは私の家の敷地内。広いし誰も来ないから、という理由でランニングコースにしていたのです。ふっふっふー。


「さぁ、トメお兄さん」


「ふぇー?」


 完璧に酔っ払ってます。さすがに98度のお酒を突っ込んだのはまずかったかなー。


「トメお兄さんは、私のこと好きですかー?」


「うん」


「かわいいと思ってくれてますかー?」


「うん」


 まぁ! まぁーまぁー! なんて素直なんでしょー! 感動です!


「よーし、この録音テープを早速」


「かーわいー」


「にゃあああああああああああああああああー」


 だ、だだだだ抱きつかれました!? こんなの予想してないですよー?


「すきだよー」


 み、耳元に息が、ぬくもりが、え、ちょっと、想像してたのと違、なに、やだ、心臓がどんどんバクバクして爆発しそう、あ、まだ早くなるの、ちょ、きゃ、や――


「えいー!」


「ふはぁー!」


 やっとの思いで引き剥がすと、トメお兄さんは満足そうに大の字で寝そべりました。


「ど、どうしよー」


 もし私の思う通りにできたら、なんて考えてたけど。


 どんどん顔が熱くなる。


「むりー」


 こんな恥ずかしいの、耐えられるはずが無い。


「かえるー!」


 トメお兄さんをほっといて帰りました。




 ――審判の日まで、あと1日。


 こんにちは、カカです。


 皆が頑張ってトメ兄に酒を飲ませているので、真似してみようと思います。


「てい」


 説明しよう! 現在は深夜、トメ兄の寝室に忍び込み、寝ているトメ兄の口へ一升瓶を突っ込んで日本酒を流し込んでいるのだ!

 

「……ぷはぁ!!」


「お、良い飲みっぷり」


 あ、ガバっと起きた。


 あれ、なんかトメ兄が私に抱きついてきた。


 あれれ、耳元でなんか――


「ぴゃ!?」


 あまりにびっくりして変な声出しちゃった!!


 続く。


 え、続くの? ここで? まさかのラブシーンへ? ま、まさか――あーれー!!




 泥酔状態での行動、発言には情状酌量の余地があります。多分。きっと。いや行動が行き過ぎたら無いかも。あ、ない? 散々飲まされ続けたトメさんの決断やいかに。次回!

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