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カカの天下  作者: ルシカ
897/917

カカの天下897「頑張れクリスマス」

皆様お疲れ様です、トメです。


なぜいきなりお疲れ様などと言ってしまったかというと、僕自身が疲れているからです。


「あぁー」


コタツに入って寝転がり、おっさんくさい呻き声を出す。


「今日は早く帰れてよかったぁぁ」


先月に社員が二人も辞めた上に新任の上司が入ってきたおかげで年末の忙しさは異常だった。残業と休日出勤の繰り返し。仕事して寝て仕事して寝て仕事して、という地獄をくぐり抜けた僕の身体は疲労困憊。立ち上がることすら面倒になるほど気力が尽きていた。


「ご飯、は食べなくていいや」


面倒くさい。


「喉渇いたな」


水を飲みに行くのも面倒くさい。


「寝ようかな」


それが一番ベストな気がした。


「トメ兄!」


そこに、そんな安らぎを邪魔しようとするヤンチャさんが現れる。


「メリークリスマスイヴ!」


ああ、そうか。今日ってそうだっけ。完全に忘れてた。


「今日はサカイさんちでクリスマスパーティーだよ、準備を手伝いにいっこー!」


こいつは元気でいいなぁ。


「あれれ、トメ兄てば最近ノリ悪い。どったの」


疲れた。


なんてことは言いたくない。子供にそんな泣き言をこぼしてたまるか。や、何度かこぼしてしまった記憶もあるが、僕だって意地を張りたいときがある。


「悪い、あんま寝てないんだ。今日のところは勘弁してくれ」


えー、とこいつは不満をこぼすだろう。でも僕には全く元気が残ってない。きっとするであろうプレゼント交換の用意もないし、カカヘのプレゼントすら考えてなかった。


わかってくれカカ。今回の僕は無理だ。


「わかった」


「わかったの!?」


「何をそんなに驚いてるの」


「い、いや」


こいつがこんなに物分かりがいいとは思わなかった。


「じゃ、いってきます」


あっさりと僕を置いて、カカは出かけてしまった。


「そうだよな」


カカも中学生だ。いつも僕にべったりだった頃とは違う。


「寂しいけど、ありがたい」


意識が落ちていく。身体を疲労という重みに支配されながら、なんでこんなに疲れなきゃいけないんだろう、なんでこんなに頑張ってるんだろうなんて、そんなことを考えていた。




ふと、目を覚ます。


「22時」


三時間は寝ただろうか。


「今頃カカは」


「ここに」


「そう、ここでクリスマスパー」


ぽかんと口を開けて固まる。サカイさんちに行ったはずのカカがそこにいた。


「何してる」


「クリスマスパーって何」


「質問に答えろ」


「それよりクリスマスパーが気になる」


「そんなことはいいから」


「よくない。何なのクリスマスパー。じゃんけんのパーと違うの。頭がパーなの。クリスマスはどう関係してくるの」


「何がそこまでおまえの琴線に触れたんだ」


いや本当にどうでもいい。


「おまえ、クリスマスパーティーは」


「蹴った」


「なにぃ!」


あのカカが?


「あ、あぁ。何かを蹴飛ばしたらトンデモナイ事態になって収拾がつかなくなって終了したから早く帰ってきたのか」


「んなわけないでしょ」


「だってカカだし」


「あのねトメ兄、私はもう中学生なんだよ」


「でも所詮はカカだし」


「クリスマスパーティーなんかで浮かれないし」


「嘘だ、カカだもん」


「料理もできるようになった」


「カカなのに?」


「さぁ食え!」


「ぎゃあああ」


「いい加減に怒るよ!?」


だって信じられないのだ、コタツの上におかゆが湯気を昇らせているのが。しかもインスタントではない、不揃いに切られた野菜たっぷり。


「カカ」


「なに」


「クリスマスパーティー、行ってよかったんだぞ?」


パーティーより僕を選んでくれたのは嬉しい、でもこいつがクリスマスを楽しめないのは嫌だった。


「仕方ないじゃん」


しかしカカは恥ずかしそうに、しかしはっきりと言った。


「もうすぐお年玉なんだから」


「それは仕方ありませんなコノヤロウ」


「ま、クリスマスプレゼントってことで」


「……悪いな。お返し用意してなくて」


「その分お年玉に期待してるから大丈夫」


「おまえ、サエちゃんに似てきたな」


「嫁ですから」


「そですね」


 笑顔に陰りはない。無理はしていない。長年一緒にいたカンがそう言ってる。


 じゃあ、こいつは本当にこれでよかったと思っているということか。


 それは正直、嬉しい。僕を気遣ってくれたことも。おかゆなんて慣れないものを作ってくれたことも。


 僕が頑張ってきた甲斐があったというものだ。


「お、うまいじゃないか」


「何せ中学生だからね私ゃ」


「そうか、料理できるようになったって言ってたな。他には何ができるんだ?」


「これしかできん」


「それできるって言わない」


「じゃあ今度教えてよトメ兄」


「望むところだ。何が作りたい?」


「雑炊」


「なんでそんなんばっかなの」


「雑炊とおかゆは違う!」


「ごめんなさい」


 くだらない会話が続いていく。なんだか久々のような気がした。


 自分が何のために頑張っているのか。僕は落ち込んだり疲れ果てたりする度に、こんな時間で再確認している。


 そう、僕が頑張っている理由は。


「私のお年玉のため」


「黙らっしゃい」


 理由は。


 言葉に出来ない、温かいモノのため。


「おかゆまずかった?」


「黙れというに」


「や、だって温かいモノっておかゆのことじゃないの? 言葉に出来ないって、変な味ってことかと」


「……僕、声に出してた?」


「独り言全開」


「メリークリスマス!!」


「や、そんないきなり叫んで誤魔化そうとしても」


「メリークリスマスー!!」




 その頃。


 パーティをすっぽかされたサエとサユカ。


「クリスマスに結ばれるわたしとトメさんっ」


「どうも。サエですー。ただいまジョッキをあおりながらサユカちゃんの妄想を聞いているところですー」


「そしてカカすけは妹に! あぁ、あの小生意気な小娘がわたしをお姉様と慕ってくるなんて快感っ」


「ちなみに飲んでいるのはジンジャエールですー。なんとなく名前がお酒っぽいので気分で酔っ払ってます」


「カカすけはわたしのことをどんな風に言うかしらっ。ねぇねぇ、サエすけはどう思う? カカすけの声真似してみてよっ」


「ねーちゃん、金くれ」


「言いそうっ! じゃなくて違う! ねーちゃんじゃなくてっ」


「お姉ちゃん。略して、おちゃん、でいいね。というわけで、おっちゃん金くれ」


「おっちゃんって言ってるしっ! お姉様とお呼びっ」


「おねえさま。略して、おさ。ねぇねぇおっさん金ちょーだい」


「なんで略して~の呼び名に『っ』とか『ん』とか余計なオプションがつくの!」


「カカちゃんはこう言うよ」


「言いそうだけどっ。あとなんで毎回金をせびるのっ」


「私の婿だもん」


「そうだった!」


「乾杯」


「乾杯!」


 メリークリスマス。




 はい、ド年末にクリスマスの話を無理矢理お届けしました。すいませんこれが精一杯! そらもー今年は話中のトメと似たような感じで過ごしてたもんで限界でした!

 今年はリアルの仕事が波乱万丈でカカ天を全く書くことが出来ませんでした。でも月に何回か書く時間、そして感想をくれる読者様の声を聞くたびに、もっと書きたい。もっと続けようという気持ちが湧いてきます。

 私事ですが、来年からは仕事も一新します。落ち着いた時間にまた更新していきますので、どうかお付き合いいただける方はカカたちを見守ってやってください。


 それでは皆様、よいお年を!

 

 とりあえず年末年始という形で次は書きます! 

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