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カカの天下  作者: ルシカ
894/917

カカの天下894「待ちに待ちわびた待ち」

 ――10月31日。


 こんにちは、カカです。明日は待ちに待ったサエちゃんの誕生日! もう前日から張り切って準備しております!


「おいカカ、電話があった」


「なにトメ兄」


「サエちゃんな、急な祖父さんの呼び出しで旅行に行くことになったんだと」


「え、明日!?」


「ああ。だからパーティは延期だって」


「そんなぁ……」


 でもまぁ、仕方ないか。なんか強引なジジィだって聞いてるし。偉いらしいし。逆らうと面倒くさいんだろうし。


「じゃ、お祝いメールだけしとこ」




 ――11月2日。


 サカイさんの家にてパーティの準備を進める私たち。


 しかし。


「ごめんねー、みんなー」


 間延びした声で主催のサカイさんが言った。


「サエねー、じじーのワガママで海外まで連れまわされてるらしいのー」


「なんですとー!?」


 せっかくいつものメンバーは集まってて、料理の準備もゲンゾウ三兄弟にしてもらってたのに!


「ごめんねー、なにせ業突張りの偏屈思いつきジジィだからー」


「や、そこまで言わなくてもいいんじゃ」


「私のサエを奪ってるのよー? 死ねばいいのにー」


「まぁまぁ落ち着いて! み、みんな? せっかくだしここは普通に食事会といこうじゃないか」


 トメ兄の一言で集まったメンバーはしぶしぶ納得。幸いメインとなる料理の用意はまだこれからだったらしく、次に持ち越すこともできるらしい。


 はぁ……サエちゃん、早く祝ってあげたいよ!




 ――11月4日。


 まだか、まだなのか。


「ゲンゾウさん、料理大丈夫?」


「もう食材が限界だ。今日中に使って食っちまおう」


「えー……」


「心配すんじゃねぇ、また新しいの仕入れてきてやるよ。ただ、安く仕入れられるもんはもうねぇから、もっと高級なもんになっちまうがな」


「大丈夫なの?」


「ま、スポンサーが金出してくれるだろ」


 スポンサー。あ、サカイさんか。


「とにかく今日も食事会だな。全員呼べ」




 ――11月7日。


「明日、サエちゃんが帰ってくるそうだ」


「トメ兄ほんと!?」


「おお、サカイさんが謝罪とジジィの悪口を一緒に連絡網まわしてる」


「よし、明日こそは!!」




 ――そして当日!


 ようやく始まったパーティはものすごく豪華になっていた。遅れた一週間の中で装飾は増え続け、料理も都合により高級なケーキと料理の数々が並ぶことに。


 そして主役の登場!


「サエちゃん、誕生日おめでとおおおおおおおお!!」


 湧き上がる大歓声! 皆、溜まりに溜まったお祝いの気持ちを一心に叫ぶ!! やった、ようやく祝うことができる! 私も待ちくたびれて最初に用意したプレゼントから更に色をつけたりしちゃって何個も……


「……なぁ、カカさんや」


「……なんだい、トメさんや」


「いま、僕はすごく失礼なことを考えてる」


「奇遇だね、私もだよ」


「こんなことを考える僕らには愛がないのだろうか?」


「や、ほら。先日、似たようなことやった人だし私。トメ兄はそれを怒った人だし」


「そうか、そうだよなぁ。でも、まさかなぁ」


「見てよ、あのサエちゃんの嬉しそうな顔」


 ニコニコだ。ものすんごく。


 そんなサエちゃんは私たちの姿に気づくと、小走りでやってきた。


「おめでとう、サエちゃん!」


 揃えて言った私とトメ兄、しかしその微妙な顔に気づいたのか首を傾げる。


 そして納得したように頷き、


「ね、カカちゃん。焦らすなら、こんな風にしないとー」


「やっぱりか! やっぱりわざとなのか!?」


「サエちゃんてば! ほんっとサエちゃんなんだから!」


「そんな褒めなくてもー」


「もう! 私、本当に祝えなくて苦しかったんだからね!」


「今、祝えてどんな心境なのー?」


「最高!」


「じゃーいーじゃーん」


「いいけど! ほらトメ兄、私にしたみたいにお説教してよ!」


「よしきた! いいかサエちゃん、周りに迷惑をかけて――」


「皆、すごく楽しそうですよー?」


「それは結果論であって。今までの皆の予定とか」


「きちんと事前に連絡が回るようにしましたよー」


「で、でも実際にはいままで準備した料理とか」


「何度か食事会で消費したから無駄なく楽しめたと思うんですけどー」


「確かに! や、確かにそうなんだがよく知ってますね!?」


「私は溜め込んだ幸せをもらってー、皆さんは長い準備期間で良いもの食べて、最後に弾けて幸せー。完璧じゃないですかー」


「完璧だ! ダメだカカ、僕にはこの子を怒れない」


「可愛すぎるからか」


「人の話聞いてました!?」


 聞いてたけど細かいことはもういいや。とにかく私も溜めこんできた『祝い』を爆発させなければ!


「サエちゃん、おめでとぉ!!」


「ありがとーカカちゃん!」


 あー、もう。


 この笑顔があればなんでもいいや。




本作キャラ、そして読者の皆様。大変長らくお待たせいたしました。

しかし読んでいただけるとわかる通り、お待たせしたのはあの子なので。

許してちょ(ぇ


とにかくサエおめでとう! その腹黒さに乾杯!!

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