表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カカの天下  作者: ルシカ
892/917

カカの天下892「誕生日を祝え、そのご」

 さて、私の旅もそろそろ終着点です。残る知り合いがそろそろ少なくなってきましたので。


「いたいた、カカちゃん!」


「ユカさん」


「誕生日でしょ、面白いネタないの?」


「あなたそればっかだね。結婚記念日待ってなよ」


「あーあー、それがね? 編集のほうから『百合はいい加減ほどほどにしろ』って言われてるの」


「ゆり?」


「うん、百合っていうのはね」


「カカちゃん、おめでとうございます!!」


「お、キリヤだ。ありがと、ところでゆりって」


「カカちゃんはそんな言葉を知らなくていいのです!」


「なんで邪魔すんのよ」


「いいですかユカさん? 説明してしまったら」


「しまったら?」


「吹っ切れてその道に走ってしまうことが決まってしまいます!」


「いいじゃん」


「いいんですけど」


「あ、いいんだ」


「その道に行くかどうか迷うロマンスを見てみたいと思いませんか?」


「あ、それはネタになるかも」


「でしょう、そんなわけで説明しない方向で」


「わかったわ、そんなわけでごめんねカカちゃん」


 どんなわけなのか、さっぱりわからなかった……二人は仲良く帰っちゃうし。


「さて、あと残ってるのは……あの二人か。やっぱあそこかな」


 私はいつもの公園に向かった。




「あ、誕生日カカです!」


「ほんとでしゅ、略してタンカでしゅ」


 いたいた、クララちゃんとタマちゃん。


「もっと略したらタンですね!」


「タンってなんでしゅか」


「ばっちぃやつです!」


「カカばっちぃでしゅ」


「おーい、置いてかないでー」


 この私が話についていけないとは。将来有望な二人だ。


「ところで誕生日の人に言うことはないのかな?」


「ばばぁ!」


「としまでしゅ」


「てぃ」


 かかきーっく。


 ふみふみ。


「ご、ごごごめんなさい!」


「謝りましゅからもう踏まないでくだしゃい!」


「かかとでぐりぐり止めてください!」


「ふん。最近はおとなしくしてたけど私ってば、やんちゃさんだったんだからね」


 皆様もお忘れでしょう。え、忘れてない? そっか。


「で、言うことは?」


「ごめんなさい!」


「違う」


「まだ若いです!」


「気にするなでしゅ!」


「慰めてもらう箇所などない!」


「みぎゃああああ」


「にゅううう」


 最近の若い子は「おめでとう」と言うことの重要性を理解していないらしい。というわけで中学生のおねーさんが勉強させてあげることにした。


 小一時間ほど。


「じゃ、私はいくね」


「勉強させていただきました!」


「ありがとうございましたでしゅ!」


「はーい」


 二人とも従順になった。


「む、カカ様」


「あれゆーた」


 もっと従順な男が来た。


「奇遇だね」


「はい、タマ様を迎えにきたのです」


「む? そういやなんで私まで様?」


「それは今日、あなたが主役だからですよ」


「わお」


「誕生日おめでとうございます」


「すごいゆーた。紳士みたい」


「大人へと向かう未熟な年頃……たまりません」


「よかった、ちゃんと変態だ」


「はっはっは、では」


「またねー」


 さてさて、お腹減った……お腹減った? ああ、忘れてたゲンゾウ三兄弟!


「れっつごー! と、ちょっと待った」


 日を変えて一人ずつ行ったほうがいい。きっと美味しいものをご馳走してくれるはず。今日はトメ兄が作ってくれるしね。


「さてさて、帰りますかね」


 誰か一人忘れてる気がするけど、まぁいいや。




「トメ兄、ただいまー」


「おかえり。ご飯もう少しだからな」


 お鍋がシューシューいってる。


 あれ、誰か思い出しかけたような。


 気のせいか。


「ところでお母さん、いま電話したら繋がると思う?」


「や、いま父さんにおんぶしてもらって爆走しながらこっちに向かってる最中だからどうだろう」


「何してんの私の親は」


「おまえにおめでとうって言うために来るんだろ。県外から走って」


「はぁ……どうして私ってこんなに幸せなんだろう」


「僕のおかげだな」


「そだね」


「否定しろよ!」


「なんでさ」


「や、照れるじゃないか」


「適当に言った返事でそんな照れられても」


「マジメに答えろよ!」


「そんなさらりと言ったセリフにマジメに答えろって言われても」


「そだな」


「もっと抵抗してよ!」


「なんでさ」


「や、つまんないじゃん」


「冷めたセリフで返してきたくせに面白さを求められても」


「熱くなれよ!」


「こんな寒い日に熱くなれよって言われても」


「そだね」


「納得するの早いんだよ!」


「これいつまで続くの?」


「父さんたちが帰ってくるまで続けてみよっか」


 そんな他愛の無い会話を延々としながら。


 のんびりと、私の誕生日は過ぎていくのでした。めでたしめでたし。




 だらだら話もようやく終わり、次は結婚記念日の話です。


 サエちゃんの誕生日まであとわずか! もう細かい日時設定と現実世界の時間がかなり合わなくなってますが、できる限り合わせるけど無理なものは無理だから納得してもらう方向で。


 まぁ、現実でその日になったときに「おめでとう」って心からその人のことを想えればそれでいいんですよ、うん。


 いいことっぽいことを言って誤魔化そうとしてませんよ、ええ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ