カカの天下887「酒の肴は水着とな」
こんばんは、トメです。
「かんぱーい」
飽きもせずにテンと病院で飲んでます。
「おうトメ、今年の夏はどうだった」
「死ぬほど暑かった」
「同感だな」
「そしてビールが死ぬほど美味い」
「間違いない! 乾杯だ!」
「おお、乾杯だ!」
毎度のことながら僕らは何回も乾杯をしている。気分的に盛り上がるからな。酔っ払いなんてのはそんなものだ。
「んぐんぐ。ところでトメよ、今年の夏はどうだった」
「暑かったと何度も言ってるだろ」
「そしてビールが美味い」
「乾杯」
同じことを繰り返すのも酔っ払いの特徴である。
「んぐ。そうじゃなくてだな。夏ならではの青春話とかねぇのか」
「その歳で青春とかいうとオヤジくさいぞ」
「やかましい。乾杯」
「乾杯」
ほんと乾杯好きだな僕ら。
「そうだなぁ……カカたちと海に行ったな」
「ほほう。で、水着はどうだった?」
「真っ先に聞くことがそれか。やはりオヤジくさい」
「るせぇ。で、どうだったんだ? まずカカは」
「明るいオレンジのビキニタイプ、運動で引き締まった肢体を存分に見せつけながら海と戯れていたな。まるで妖精のように」
「は?」
「どした」
「いや……サエは?」
「大人しめな黒のワンピース、可愛いフリルと白い手足が眩しかった。波打ち際を歩く姿は可憐としか言い様がなく、絵にすれば間違いなく男どもは魅了されるだろう」
「ぎゃー」
「だからどした」
「サユカは?」
「大胆」
「一言かよ!!」
「なんだよさっきから変な顔して」
「変なのはおまえだ! あぁ……トメが変態くさいスケベになった……めでたい! 乾杯!」
「根も葉もないことを!」
「根も葉も種も、数分前からのてめぇのセリフにありまくだが」
「そんなバカな!」
「じゃあ思い返してみ。自分が何を言ったのか」
「ありまくりだ!」
「だろうが!」
「まるで森のようだ! 誰か森林伐採してくれ!」
「もう手遅れだ」
全然気がつかなかった! 恐るべし酒の力!
「待て、違うんだ。これには理由があるんだ」
「酔ったんだろう? あいつらの可愛さに」
「妙に気取った言い方をするな! これはだな、ユカのせいだ!」
「なに、ユカの性癖がうつったとな」
「話を聞け! 話を聞かしたんだ!」
「てめぇはさっきから何を言ってんだ」
まてまて、落ち着け僕。
「ユカが僕らをネタにして小説を書いてることは知ってるだろ? 今回行った海の話も使いたいからって説明させられたんだよ。そこで水着の説明もしろと言われたんだ」
「へぇ、そんであんな変態的な説明をしたと」
「や、『可愛かった』とだけ」
「つまらねぇー」
「ユカにもそう言われたんだよ。そしたら、もっと小説っぽい表現で語ってみろと言われて、何度もダメだしをくらったあげくにあんな表現になったわけだ。で、それを覚えてたから口が勝手に動いたというか」
「なるほど、本当に理由があったんだな」
当たり前だ。何が悲しくていい大人が中学生の水着を凝視し、評価せねばならんというのか。
「しかしサユカは一言なんだな」
「ああ、それ以外言うことがない」
「どんな水着を着たんだよ……見てみてぇな」
「二度と着ないって言ってたぞ」
「やべぇ、乾杯!」
「何に乾杯か知らんが、まぁ乾杯」
「トメのキモさに」
「だから僕は悪くない! ユカの要望に応えただけだ!」
「応えんなよ」
「言い返せねぇ!」
くそー、負けてたまるか。テンの夏の話で逆襲だ!
「今度はテンの番だぞ! 夏は何してた!?」
「仕事」
「……ずっと?」
「教師なめんな?」
「ごめんなさい」
……お疲れ様、かんぱーい。
久方ぶりです。色々とあって書く時間がありませんでしたが、今日は誰かさんの誕生日。なんとしても書かねばと舞い戻ってまいりました。とはいえいきなりその話に行くのもなんなので、夏のひとまとめとしてこんな話を入れてみました。
夏のことを語り合うはずが、なぜか水着にしか触れてません。この人らの飲み会ですから仕方ないですね。
頑張って今日中にまた更新しまっす!