カカの天下886「海も心も綺麗にね」
トメです。最近、カカたちが水着がどーだのうるさいので、姉の車に乗って皆で海に来てしまいました。
快晴が続いたおかげで海は大盛況、かと思いきや。連日の暑さがあまりにひどいせいか、今日はそんなに混んでいませんでした。
メンバーは僕、カカ、サエちゃん、サユカちゃん、姉。場所取りしたり準備したりと動いていると、ふとカカが一人で波打ち際にいることに気づきました。
「何やってんだカカ」
「波と戦ってるの!」
カカは必死っぽく言いながら、波を追いかけたり逃げたり行ったり来たり。なるほど、寄せては返す波にできる限り近づきつつ、でも触れたらアウト、とそういう勝負か。
「わっぷ」
勝敗はあっさりと決した。波は海へ戻ったかと思えばいきなり大きくなってカカへと襲いかかったのだ。勢いよく水を真正面から受けたカカは思わず尻餅をついた。
「どうしてくれんだ海!」
ざっぱーん。
「クリーニング代払え!」
ざっぱーん。
「ざっぱーん以外に何か言え!」
ざざー。
「バカにしてんのか!?」
ざざっぱぁぁん!!
「うわぁぁ」
再び大きな波にやられて尻餅をつくカカ。
「……よぅし、そっちがその気なら、こっちにも考えがある!」
カカはしゃがみ、砂を一生懸命海に向かって投げ始めた。
「何やってんの」
「私を汚した分、海も汚してやる」
投げる投げる、砂を投げる。我が妹は中学生にもなって、これで環境破壊しているつもりらしい。
「なぁカカ」
「なに」
「海の底には何がある?」
「砂」
「おまえが今投げてるのは?」
「砂」
「……や、まぁ。カカが納得してるならいいけど」
「よくわかんないけど海め、汚れてしまえ!」
そのとき! 何処からともなく男たちが三人も現れた!
「そんなことを言ってはダメだ!」
「そーだそーだ、こんにちは!」
「初めまして!」
「なんだあんたら」
男たちは偉そうにふんぞり返りながら言い放つ。
「我らは『綺麗な海を守る会』です!」
「ゴミ掃除係の人だね」
「やってることはそうだけど身も蓋もない言い方はやめて!」
まぁ張りたい見栄ってあるよね。
「とにかくそこのお嬢さん、海を汚してはいけません!」
砂投げてただけだがな。
「海は壮大で綺麗で、様々な生命を育み、人の心と身体を癒してくれる。そんな素晴らしい海を汚すとは何事か」
砂投げてただけだがな。
「愚か者! 発言を取り消せ!」
砂投げてただけでそこまで言わんでも。
「じゃ、あんたら代わりにクリーニング代出してよ」
しかし妹は強かった。
「はい!? いや、その」
「あんたらは海の代理人みたいなもんなんでしょ。じゃ海の代わりにクリーニング代出してよ」
「べ、別にそんな大層な者じゃ……そ、それに! 水着はもともとそういう汚れ方をするものだろう! 汚れた内に入らない!」
「じゃ海に砂を投げるのも汚れた内に入らないと思うけど」
「うぐ!」
あ、ちゃんとわかっててやってたのね。
「口が上手くなったな、カカ」
「ツッコミばっかしてる人といつも一緒にいるからね」
海を守る会らしい三人は、そのまま潔く「ごめんなさい!」と謝って去っていった。
「さて、海との勝負を再開しよう」
「どうでもいいけど、それどうやったらおまえの勝ちになるの?」
「私が満足したら」
そですか。とりあえずお昼ごはんを買いにいったサエちゃんとサユカちゃんが戻るまで放っておこう。
段々と涼しくなってきましたね。話的にはまだ八月、夏休み中の話となってますのでそろそろ時間軸的に苦しくなってきました。気にしては負け(ぉぃ
しかしなんで皆、海に文句とか言いたくなるんでしょうねぇ……