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カカの天下  作者: ルシカ
876/917

カカの天下876「乱れ七夕桜」

 こんにちは、カカです。突然ですがあらすじみたいなものをば。


 七夕になぜか咲いてしまったクララちゃんの桜。皆はノリでそれに短冊を吊るしまくったんだけどあらフシギ、その願いごとが叶い始めてしまったのでした。しかしそこはやはりクララちゃん、お願い事の意味がよくわかっていないようです。


 例えば『もっと寝たい』と願いを書いた人はそのまま路上で気絶。


 例えば『幸せになりたい』と願いを書いた人もそのまま路上で気絶。きっと夢の中では幸せ。


 例えば『料理が上手くなりたい』と願いを書いた人には『がんばれ』という手紙が届いたり。


 例えば『彼女がほしい』と願いを書いた人には『ラブ○ラス』が届いたり。


 例えば『給料をあげて』と願いを書いた人には揚げたての給料袋が食卓に並んだり。


 例えば『もきゃー!!』と願いを書いた人は『もきゃー!!』っていう鳴き声っぽい生き物に変身したり。まぁ本当に変身するわけではなく、脱げない着ぐるみをいつの間にか着ていたりするんだけど。


 こんな感じに、無差別に思いつくまま叶えようとしまくった、みたいになっているのです。


 さて、身近な人がどうなったかも紹介しましょう。


「さぁタケダ君、たーんと召し上がれ!」


 どこからともなく現れたインドちゃんは幸せそうな顔でタケダにカレーを食べさせ続ける。


「もぐ! んぐ!? んぐぐ、もぐ、あの、俺の願いは」


 それは無視。


「ほらほら、食べて食べて。まだまだあるよ」


「むぐもぐめぐまぐ!?」


 早くなんとかしないと腹が破裂して死にます。どうでもいいけど。


 続きまして、少し場所を飛ばしてセイジ食堂とファミレス東治。


「なんだこりゃ!? もう閉店間際だってのに店が繁盛しすぎだ!」


「店長! もう材料ありません!」


「なんとかして調達してこい! こんな稼ぎ時は滅多にねぇぜ!」


 ここは大変そうだけど幸せそうみたいだね。


 次は……学校。え、校長?


「おほほ、邪魔をなさるのね、教頭」


「チェーンソー片手に学校を徘徊する校長を黙ってみていろと?」


「おほほほほ、七夕に『もっと暴れたい』とか書いたからかしら。胸に秘めた熱い思いが止められなくなったのよ!」


「止めなさい、大人なんだから」


「ちなみに教頭はなんて書いたのですか?」


「いえ、特には。ただまぁ、世界が平和であればいいなぁとは思ってますがね」


「おほほ、ならばわたくしを止めるのは道理ですね」


 かくして、校長『もっと暴れたい』 VS 教頭『特になし』が始まる。


 こっちも早くしないとどっちか死ぬかな?


 ……さて、平和な展開になった人もいます。


 例えばユカさん、『仕事が増えますように』と書いたんだけど、彼女の仕事は小説家。仕事が増える=書くネタがなければいけない。そのネタさえ降ってくれば……ユカさんはそう思ってたみたい。


 そんなわけで、ユカさんの上から今ネタが際限なく降ってます。


 寿司の。


「うーん、面白いといえば面白い光景だけど、インスピレーションはわかないわね」


 そっちのネタはいまいちらしい。


「とりあえず食べよ。はむ……あー美味しい。ご飯はないかな」


 まぁ呑気ですな。


 あと、タマちゃんは『たまになる』とかいうわけのわからない願いを書いていたのですが、文字通り玉になってしまいました。


「ころころー」


 呑気に転がってますが、人間がボールになるのは明らかに異常事態。はやくなんとかしないと。可愛いけど。


 サカイさんは急に電話がかかってきて、どっかに行った。どんな欲望が叶えられたのか少し恐いけど気になる。


 姉にはなぜか効かない。


「お、俺の願いは」


 くどい、タケダの願いもなぜか叶わない。


「え、ちょ、なんですかこれ!?」


 そして一番むごいと思われるのがサラさん。


 彼女はお花屋さんの看板娘。そのおっぱいに惹かれていたお客さんの数は尋常じゃない。短冊に書かれた『サラさんのおっぱいであれやこれや』と書いた男の多いこと多いこと。


『うおおおおおおおお!! おぱーい!』


 自身の滾る劣情を抑えきれず叫ぶ男たち。


 しかしサラさんの書いた願いは『優しい彼氏ができますように』だ。この阿呆どもの中にそんなものがいるわけない。


 そんなわけで、まるで磁石が反発しあうように逃げまくるサラさんと追いかける男ども、という構図が完成し――


「こ、こら変態ども、逮捕だー!」


 『たくさんの犯罪者を逮捕できるようになりたい』と『力持ちになりたい』と書いた短冊の裏に書いていたシュー君がさらにそれを追いかけるという、なんとも騒がしい構図も完成してしまったのだった。互いに願いを叶えようとしてるんだから、多分一生続く鬼ごっこだと思う。


「ま、いろいろと大変になったね」


「カカちゃん、どこに向かって喋ってるの?」


「や、ちょっと現実逃避を」


 現実逃避したくもなる。目をそむけたくなるってもんですよ。


「トメさんっ!」


「サユカちゃん、抱っこしてほしいのかい!?」


「トメさんっ!」


「サユカちゃん、チューしてあげよっか」


「トメさんっ!?」


「サユカちゃん……おいで」


「はい……きゃああああああああああああっ! 密着ぅっ!! だ、抱きしめられて、そ、そそそそそして、チューを」


「サユカちゃん、手を繋ごうか」


「抱きしめられてから手を繋ぐって順番違うけど幸せぇ!」


「サユカちゃん、釣りに行こう。まずは道具の調達だ!」


「え、ちょ、ああぁ密着がぁ! 離れてくぅっ」


「サユカちゃん、やっぱりバーベキューしようか」


 サユカちゃんが書いた短冊にはトメ兄とあれこれしたいという内容が欲望のままに書かれていた。書かれすぎてトメ兄本人が混乱していて何を喋ってるのかわからなくなっている。


「きゃーっ、トメさんったら腕を組むなんて大胆っ! でもなんか腕を組みつつ肉を焼く準備をしてるとまるでわたしが焼かれるみたい! 獲物を逃がさないように捕まえてるみたいっ!? きゃーっ! 嬉しいっ!」


 サユカちゃんも程よく混乱している。


「トメおにーさん」


「サエちゃん、ぷっぷくぷー」


 ちなみにサエちゃんは『トメお兄さんがおもしろくなりますように』と書いた。だからサエちゃんが声をかけると面白くなる、というか妙な言葉で返す。


「トメおにーさん」


「サエちゃん、ホーホケキョ」


「トメおにーさん」


「サエちゃん、びびでばびでぶーぶーぶーアルファ。俺の鼻は象の鼻」


「あははー、トメお兄さんおもしろーい」


 たしかに妙な言葉と共に顔も愉快な形になるから面白いといえば面白い。


 ……え、私?


 んとね。


「トメ兄」


「カカ、怪我はないかい?」


「あるわけないじゃん」


「カカ、心の傷はないかい?」


「いきなり重い」


「カカ、もっとお兄ちゃんの近くにおいで」


「うざい」


 とまぁ、『トメ兄がもっと優しくなりますように』って書いたら気持ち悪いほど優しくなったわけで。え、『愉快になりますように』って書いたんじゃなかったかって? や、それはまぁ……照れ隠しですよ、うん。


「トメ兄」


「トメおにーさん」


「トメさんっ!」


 試しに三人いっぺんに呼んでみると。


「僕とエッチなペケポーンで心配はないかい?」


 この人ヤヴァイ。


「僕と一緒に裸になってサーロインステーキを食べようよ、大丈夫かい?」


 おまえが大丈夫か。


『ああ、大変です!』


「どうしたのクララちゃん。もう充分すぎるほど大変なんだけど」


 主にトメ兄が。


『あ、あのですね? 短冊の中に、カカやサユカやおねーちゃんのことが結構書いてあってですね?』


「私たちのことがー? なんてー?」


『主に一緒にいたい、仲良くなりたいとかいう内容です! それでですね! それを叶えようとする人たちが我よ我よとこちらに向かってます! お金をもって!」


 なんでお金?


 そう疑問に思った直後、どどどどど……と激しい足音が。


「カカちゃんと一緒に過ごす権利は俺のものだぁ! 有り金全部出してやる! 三百円!」


「いいや、俺のもんだ! 貯金なんざクソくらえ! 五百円!」


「く、じゃあ五百と一円!」


「さ、さ、さ、サエちゃあああああん! 三十二万円出すから僕の元に!」


「俺は五十二万円だ!」


「サユカちゃん、八十八万円あげるから幸せになるために使って!」


 どうやら願いを叶える権利をお金で競り合っているらしい。それにしても私だけ額に差がありすぎるような気がするんだけど気のせいだろうか。


「待て待て待てっ!」


 そんな団体に立ちはだかるトメ兄。


「エッチな妹達は僕が守る!」


「待て待て待て」


 トメ兄おかしくなりすぎ。なんか取り返しのつかないセリフを吐いてる。


「ああ、トメさんっ!」


「もっとやれー」


「サエすけ!? あんたなんてことを」


「もっとしてもらいたいでしょ? サユカちゃん。色々と」


「うへへ」


 こいつらもダメだ。


「いい加減やばいよねぇ……なんとかしないと」


 私もドタバタは好きだけど、こういう節操ない兄を見てるのは正直イライラする。


「あ、お姉!」


「んあ、呼んだ?」


 いつのまにいたのやら、呼んだ瞬間に隣へ現れる正体不明の女。


「ねぇ、なんとかしてよ!」


「んー。愉快な展開だったから傍観してたけど、さすがに潮時か。ま、妹ちゃんの頼みだしね、了解」


「え、そんな簡単になんとかできるの?」


 お姉はスタスタとクララちゃんの桜の木に歩み寄り。


 ドスン、と一発。蹴りをかました。


 桜の花が全部散った。


「……あれ、僕は何をしてたんだ」


 するとあらフシギ、皆が元に戻ってしまった。


「うあ。本当にあっさりと治っちゃった」


「ま、七夕の夢としてみんな程よく忘れるだろさね」


「クララちゃんは大丈夫なの?」


『あうー、クララ頭がパンパンですー』


 よかった、あまりに見事に花が散ったから死んだかと思った。


「無茶するからこういうことになんのさ」


『元はといえばカツコさんが願いごとをかけまくるから!』


「本気で叶えようとするなんて思わなかったのよ。こういうもんはね、叶えてもらうもんじゃないの。叶えたいって気持ちを言葉にするっていうのが大事なの」


「上手くまとめたものの、お姉は面白がってしばらく見物してたんだよね色々と」


「ふははは! カカちゃんも酒飲む?」


「飲むわけないでしょ」


 あ、トメ兄がぶっ倒れてる。サユカちゃんとサエちゃんが介抱してる。どしたんだろ、トメ兄も願いごとを実行しすぎて頭パンパンになっちゃったのかな。


「そういえばお姉の願い事は?」


「おもろいやつらを肴に美味い酒が飲めますように」


 もしかして今回の元凶は、全部コイツじゃなかろうか。




 空を飛んでいた人は桜が散った瞬間、全員落下したのだろうか……いやいや、その辺はうまいことなるよね?笑


 どうも、お久しぶりです。前回からめっちゃ間が空いてしまいました。仕事と暑さに加えて異動決定のストレスやらで身体がやられ……書く余裕がなかったというのが正直な理由です。今は身体も回復しましたし、お盆と異動でバタバタするものの、カカたちの夏を書かずに終わるのは作者の名が廃る! もう結構廃ってきてる気もするけど!


 夏休みの宿題を後半に(ヘタすれば最終日に)終わらせる勢いで書いてやるつもりなのでお楽しみに。その名の通り更新日もその辺になるかもだけど。

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