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カカの天下  作者: ルシカ
874/917

カカの天下874「世にもフシギな木ですから」

 こんにちは、カカです。今日は七月七日、桜の木に短冊を吊るす日です。


え? なんか違う? この時期に桜なんか咲くわけがない? いいえ、それが咲くのです。


「クララ、今年の春に咲き忘れてたので、どうせなら七夕にあわせることにしました!」


 そう、桜のうっかり妖精に付き合って私たちも盛り上げてやろう! というわけです。


 そして夜。


「……うわ、本当に咲いてる。なんでだ」


 事情を知らないトメ兄は困惑中。まぁ大人は妖精のことなんて知らないからね……適当に誤魔化しておこう。


「フシギだねぇ」


 誤魔化し完了。


「それで、何を思ってこれに短冊を吊るそうと?」


「本人の希望」


「はぁ?」


 なんでも願いを叶える笹さんたちが羨ましかったらしい。


「トメ兄は短冊ちゃんと書いてきた?」


「あぁ、一応」


「なんて書いたの?」


「物価が上がりませんように」


 地味だ。


「もうちょっと夢のあること書こうよ」


「そういうカカはなんて書いたんだ」


「トメ兄がもっと愉快になりますように」


「大きなお世話だ」


「うん、いつもお世話になってるからお返しに」


「何を言っとるのだおまえは」


 そんなことを話してるうちに皆が集まってきた。


「カカちゃん、トメお兄さん、こんばんはー」


 まずはサカイ親子の登場。サラさんも一緒だ。途中で合流したのかな。


「あらー、本当に咲いてるわー。動画でネット投稿したらウケるかしらー?」


「相変わらずオタクちっくな考え方ですねぇサカイさん」


「あらあら、歳に似合わず乙女ちっくな考え方のお皿さんよりはいいと思いますけど」


「いい歳っていうならあなたに言われたくありませんねぇ」


「ふふん、わたしは早くに相手見つけたものー」


「わ、私だって相手くらい」


「あぁ、あっちの雑貨屋さんに良い皿売ってますよー」


「皿の相手じゃなくて!」


「あ、そっかー。皿に合うのはスプーンとかフォークですよねー」


「人間プリーズ!」


「スプーンって名前の人ならどこかにいますよきっとー」


 この二人は相変わらず仲がいいんだか悪いんだか。多分いいんだと思うけど。


「あ、トメさんっ! こんばんはっ!」


「おやサユカちゃん……なに、それ」


 サユカンはものすっごく大きなモノを背負っていた。


「これですか? 短冊ですっ」


「これ……全部?」


「はいっ」


「ね、願いごと多いんだねぇ」


「トメさんのことしか書いてないです……えへ」


 可愛い、その照れ笑いは可愛いんだけど行動自体はなんかこあい。あれ全部叶ったらトメ兄は一体どうなってしまうんだろう。


「サエちゃんは短冊なんて書いたの?」


「ひみつー」


「わたしのはねっ」


「ごめんサユカン、なんか恐いからそれは聞きたくない」


 で、さらにわらわらと集まってくる人々。


「キリヤ参上!」


「あーあー、恥ずかしいからやめなさいって」


「恥ずかしいといえばユカさん、短冊にはちゃんと二人の愛が上手くいくように書いてくれたのでしょうね?」


「んや、仕事のこと」


「奇遇ですね、私もです。もっと休みがほしい」


「私はもっと仕事がほしい」


 大丈夫かこのカップル。


「あれ、タケダだ。呼んだっけ?」


「それはひどいぞカカ君!」


「サエちゃんが呼んだの? 余計なことを」


「えへー」


「ぬぬぬぬ……いいんだ俺はこの短冊の願いごとに全てを託す!」


「なんて書いたのー?」


「カカ君と」


「やだ」


「返事はやっ」


「いぇーい! 姉、さんっじょう!! 商店街の皆に短冊書いてもらってきたぞぃ!」 


「お、お姉様……重いです……」


「情けない。シュー、短冊にはちゃんと腕力アップも書いたんだろうね?」


「はい」


 書いたんだ。


「タマね、タマね、タマになるの」


「はっはっは、いい願いごとですな」


「ゆーたはなんて書いたの?」


「私は無論、ロリコン帝国を」


「こらそこ! なぜ兄をさしおいて大きい人と仲良くなっている!?」


「ふむ? 貴様はタケダとかいったか。ならば一つ教授してやろう。男とは大きくて固いほど良いのだ」


「何の話だ!?」


 私、子供だからよくわかんない。


「ほらほらカカっち、手伝っておくれよん」


「お姉」


「皆の願いを桜に吊るすのだ!」


「おっけ」


 しばらくして。


 そこに短冊だらけの、世にも奇妙な桜の木が完成した。


「はー、へんなのー」


「こらサエすけ、思ってても言っちゃダメッ」


「や、変だろこれ」


「ですよねトメさんっ」


「サユカンって……」


(クララ参上です!)


 お? クララちゃんの声だ。でも、声だけ?


(いまクララの桜はすごいことになってます! この状態で人化したらすごい格好になってしまいます! なので声だけで失礼します!)


 あ、そっか。クララちゃんの格好って桜の木がどんな姿で影響されるんだっけ。花が咲いてるときは綺麗なピンクの服だったり、夏は緑色だったり。じゃあ今の短冊だらけだったら……どうなるんだろ。見たい。


(とにかくクララ、ホッとしました。これで今年はちゃんと咲けました!)


 うんうん良かったね、と頷く私とサエちゃんサユカン。そしたらトメ兄に変な顔された。私たちとお姉以外の人はクララちゃんの声が聞こえていないみたい。


(よぅし、それじゃ頑張って願いを叶えますよ!)


 ……へ?


(おりゃー!!)


 なんだろう。


 桜が一瞬、光ったような。


「あ、そっかぁ」


「どしたのお姉」


「桜の木って笹の木より力が強いんだよねぇ」


「力って、なんの」


「想いを叶えたり、そういう力」


「え、じゃ、願い事叶うの?」


「かも」


 マジで!? じゃ、じゃあ、えっと、とりあえず桜の木にあった願い事は、例えば……


「やぁサユカちゃん! 僕と一緒にお風呂で愉快なことをしないかい?」


「とりあえずトメ兄が変なことになったぁぁぁぁぁ!!」


「喜んでっ!」


「うわー喜ぶんだー」


「感心してる場合じゃないよサエちゃん!」


 こ、このままでは。


 なんか面白いことになってしまう!!


 わくわく。




 続く。




 クララちゃんの暴走によって街は大変なことになってしまいました。詳しくはカカラジニュースにてお伝えいたします。

 皆さんは短冊書きましたか?

 私は書きました。四月に大怪我、五月におたふく風邪。そんな私の願いごとは……『もう何も起こりませんように』ええ本当に書きました。

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