カカの天下869「教師Aの奮闘記?」
こんにちは、教師Aです!
中学の担任として働き始めてからはや二ヶ月。そろそろ中間テストなどもこなしている時期なのですが……
「失礼します」
「やぁ、A君」
「どうも、普通の教頭」
「……なんだ、その普通の教頭というのは」
「私の知りうる限り、教頭には『デストロイヤー』とか『デンジャー』とか『マエストロ』とか肩書きがつくんですけど、うちの教頭にはそんな特徴ないじゃないですか」
「まさか君に『特徴がない』と言われるとは思わなかった」
「よほど特徴がないんですよ」
「口を慎め」
「はい、普通教頭」
「慎んどらん!」
わがままな教頭だなぁ。
「とにかく、なぜ呼び出されたかはわかるかね?」
「特徴がないのをどうすればいいか相談したいんでしょう? 大丈夫、その道にかけては私はプロです」
「君は『普通を脱却するプロ』ではなく『限りなく普通でい続ける』プロだろう」
普通とか特徴ないとかAとか言われてるけど、俺らって結構イカシタ会話してると思わないかい? そこのベイビー。
「とにかく! 君を呼んだのは中間テストの件だ」
「ああ、それですか」
ちなみに俺は国語担当だ。
「君自身はどう思ってるのかね?」
「答え合わせが楽でした」
「それは楽だろうさ……平均点99点のテストならな!」
うん、皆ほとんど○だったんだよな。
「いやはや、最近の中学生って勤勉ですよね」
「んなわけなかろう!!」
そう一言で切り捨てるのも可哀想だと思うのですが。
「なぜこのような事態になったのだ! テストは平均点が60点になるよう作れと言っただろう」
「予想外な事態というのはいつでも起こりうるものです」
「予想外にしては出来すぎだ!」
「奇跡ですね!」
「素直に感動してないで原因を探ってこーい!!」
そんなわけで、俺の作ったテストの何がいけなかったのが聞いて回ることになった。
「サエ君」
「はーい」
「いきなりだけど、俺のテストの悪い点を教えてくれ」
「簡単すぎー」
ショック!
超ショック!!
「も、もっと具体的に」
「出す問題に捻りが無さ過ぎです。授業中に『ここ出るよ』と言ったところを出すのはいいんですけど、そのまま出しても意味がないでしょう。問題文の書き方も変えないとー。あとー」
……その後、真面目に散々ダメだしをされてしまった。俺、情けない。
さらに聞いて回る。
「カカちゃん!」
「あ、Aだ」
呼び名にはツッコまない。慣れたから。
「ちょっと聞きたいんだけどさ」
「どれだけ頑張ってもAはAでしかないよ」
「どんな質問を予想したの!? 違うんだよ、この前の俺のテストでどこが悪かったか教えてほしいんだ」
「ええ」
「うん、助かるよ」
「ええ」
「ん?」
「ええ」
「いや、あの、お願いするよ。教えてよ」
「ええ」
「いくら俺が教師Aだからって『ええ』しか返事しなくなることないだろ!」
「や、これが私の回答だよ」
「……どういうことだ?」
よくわからない。次いこう。
「サユカちゃん!」
「あ、自分がトメさんに似てるとか不届きなことをほざいたA先生。何か用ですかっ」
「ひ、引っ張るねぇ。反省してるから勘弁してよ!」
「仕方ありませんねっ」
とか言いつつまた言われそう。この子、普通にいい子なんだけどトメが絡むと色々……いや愚痴はこの辺にしておこう。
「聞きたいことがあってね。じつはこの前の中間テスト、俺が書いたやつなんだけど」
「あぁ、あのとてつもなく簡単なテストですね」
うぐ……痛い、痛いけど平均点99点なんだからそりゃ簡単だったんだろうさ。
「そ、それでね? なんでそんなに簡単になっちゃったのかなぁと思って原因を探ってるんだけど」
「原因なんて簡単じゃないですかっ」
「それも簡単なの!?」
俺のテストって一体どこまで簡単なんだろう。
「自意識過剰ですよ」
「いきなりそんなこと言われる意味がわかんないんですけど!?」
「もう皆がやったテストの答えを見ればわかると思いますよっ」
言われたとおり、職員室に戻ってテストを引っ張りだしてきた。
見直す。うん、やっぱり普通の問題だよな。
……ん、待てよ。サユカちゃんは問題じゃなくて『答えを見ろ』って言ったよな。答え……答え……あ。
選択肢の答えが全部Aかaだ。漢字の問題も読み書き全て『え』とか『ええ』だ。カカちゃんが答えてくれた意味がやっとわかった。
「普通の教頭!」
「なんだね普通のA」
「原因がわかりました!」
「ほう?」
「俺、なんだかんだ言っても……やっぱりAが好きみたいです!」
なんだかすんごく怒られた。
なんでだろう。
奮闘記と書いたものの、そんなに頑張ってないAさん。まぁやる気も人並みにしかないんですね。
しかしなんとなく書いたものの『マエストロ教頭』ってなんか良くないですか? いずれ出そうかなぁ。