カカの天下868「おたふくトメさん」
どうも、トメです……はぁ……すいません、思わず初っ端からため息を吐いてしまいました。なぜかというと、鏡を見たからです。
別に僕は顔にコンプレックスを持っているというわけではありません。別に自信があるわけでもありませんが、とりあえず普通の顔だろうなぁと思っているからです。
しかし今はため息です。なぜかというと……顔が縦に伸びたからです。
わかりやすい言い方をしましょう。おたふく風邪になったのです。耳から顎にかけてボンボンに腫れあがっているのです。お相撲さんみたいなのです。この歳にもなって……
説明しよう! おたふく風邪とは多くが子供の頃にかかる、一度かかった者は二度とかからない(はずの)ウィルス性の病気である! ひどい風邪と似たような症状に加え、頬から下がその名の通りおたふく状態に腫れあがるのが特徴。稀に大人になってからかかる者もいるが、ぶっちゃけそっちの方が色々と大変だったりする。簡単に言うと子供が作れなくなる可能性とかあるのだが、詳しくは各自で調べてほしい。
「あー……痛い、寒い、だるい」
とりあえず僕はベッドの上。感染する可能性もあるので会社には行けず、高熱のせいで寒く、腫れてるおたふく部分が痛くて眠れず、ずーっと自室でゴロゴロしながら苦しんでるのである。
「トメ兄、水持ってきたよ」
「おー」
ちなみにカカは幼稚園の頃にかかっているので問題なく部屋に入ってこれる。
「おじゃましまー……ぶふっ!!」
そして部屋に入る度に笑われる。
「はい、お水……ぶはは! お相撲さんがいる!! ほっぺたがたゆんたゆん!」
「はよ出てけ!」
「あっはっはっは!」
あぁ、僕の顔ってば超ボリュームで面白い。本人的には全然面白くない。
僕は何度目かのため息を吐きながら、ありがたく水を飲む。そう、ありがたいのだ。起き上がるのもキツイ状態のときに面倒を見てくれる妹がいるということに感謝しなければならないのだ。少しくらい笑われたくらいで腹を立ててはいけない。
「トメお兄さん、こんにちはー」
「ん、この声はサエちゃん?」
扉の方に顔を向ける。
にっこり。
そんな笑顔を向けた後、扉はすぐに閉まった。
……もしかして、笑われたのだろうか。ま、まさかな。サエちゃんはいつもニコニコ、あれがいつもどおりだからな、うん。
「トメさん、こんにちはっ」
「あれ、サユカちゃん」
「ぶごっ!」
サユカちゃんはなぜか自分の顔を殴った。
「え、え、どうしたの!?」
「な、なんでもなぶふご!」
わかった。
サユカちゃんは僕の顔を見て吹き出しそうになり、その度に自分を殴っているのだ。
「わ、わたしは笑いません……だ、だぶふごっ! だからは、はやく良くなってぶふぐっ!」
「ああ、ああ、わかった、わかったから我慢しないで笑っていいんだよ?」
「笑いません! わたしは笑いません!」
あぁ、愛だ。やばい、ちょっと感動してしまった。
「でもそろそろ限界なんでこれで失礼しますっ!」
そして去っていく足音……僕の顔、そこまで面白いのか?
「トメさん!」
「うあサラさん!?」
いきなり登場したサラさんは僕の顎を凝視して……
「確かに今のトメさんのおたふくはボインボインです……でも、でも! 私のほうがボインなんですから!」
「ちょ、ちょっと!? 変な対抗心燃やしたままどっか行かないでよ、ねぇ!」
行っちゃった……なんなんだ、一体。
「……んん?」
またもや開く部屋の扉。今度はなんだ!?
「姉、テン、サカイさん? なんなんだ一体」
『ぶはははははははははははははははははは!』
「さて、酒の肴もできたことだし、飲みに行くか」
「なぁ姐さん、いっそここで飲まねぇか?」
「あははー、それはいくらなんでもいくらなんでもですよ、いくらなんでもー」
仲良く笑って去っていく三人。そのまま地獄へ落ちろ。
「クララ参上です!」
「……はいはい。なんでしょうか」
「クララもおたふく風邪になるですか?」
「知るか!」
その後も訪問者は尽きることなく。
そして例外なく皆、笑いやがった。
――翌日。
「ぶふっ!」
「あの、いい加減に笑うためだけに来るの止めていただけませんか!?」
僕は部屋に集まった暇人どもに怒鳴った。
全員おたふく再発してしまえ! と念をこめて。
そしたら――
僕の容態が悪化した。そして僕以外はいたって健康そうだった。どちくしょう。
なんでこんな話を書いたかというと!
私が今おたふくにかかったからです。いやマジで。ほっぺたの下ボインボインです。これ何よりも口開けるだけで痛くて食べれないのが辛いですね。なんか流行ってるみたいなんで、まだなってない人は注意! 40度いったときは死ぬかと思いました……や、ほんと面白い顔になっちゃってますけど笑っちゃダメですよ。といいつつトメを笑う話書いてるんですけど^^;