カカの天下867「超ママ」
ふあぁ、おはようございます。カカです。今日もいい天気。
雨ばかり、そして寒い日ばかり続いていたお空はようやく春を思い出したらしく、最近は温かくて安心します。
さて、顔を洗って歯を磨こう。私は部屋を出た。そのまま洗面所へと向かう。
床に『ママ参上』と書かれた紙が落ちていた。きっと目が寝ぼけているんだろう。
さて、洗面所に到着。鏡を見るとぼやーっとした私の顔。
その背後にはママの笑顔。
まだ寝ぼけているらしい。現に、顔を洗ったらその顔は消えた。
歯を磨こう。歯磨き粉を取る。『ママすっきり』と書いてある。そんな品名だっけ。まぁいいや。
しゅこしゅこ磨いてうがいしてゆすいで……よし、居間へ向かおう。
通りすがりに見えたカレンダーの絵がなぜかママだった。ママのカレンダーなんか買ったっけ。買ったんだろうきっと。
「トメ兄、おはよ」
「おう、おはよう」
いつもの定位置に座りながらテレビを見る。
『おはようございます、ママです』
映ってるのは私のママじゃないけど……なんかセリフおかしいな。耳も寝ぼけてるらしい。
テーブルの上にあった新聞を手に取ってみる。そして読んでみる。
『ママままママままママままママままママままママままママままママままママままママままママままママままママままママままママままママままママままママままママままママままママままママままママままママままママままママままママままママままママままママまま』
ダメだ。寝ぼけすぎててまともに読めない。
仕方ないからテレビを見ることにする。
『本日、この家で事件が起きました、ママです』
ママが事件を起こしたんだろうか、それともママという事件を起こしたのだろうか。
『そんなわけでママに話を伺ってみようと思います』
犯人か。
『ママさん、そのときの状況は?』
『ま、ママが、ママに、ママしたんだよ!』
ママしかいない。
『そうですかぁ……聞きましたか皆さん、大変ママです。どうしましょう』
ほんとどうしましょう。
「カカ、朝食できたぞ」
「ん、あんがと」
いつの間にか並べられていた皿の数々に目を向ける。
全てのおかずにケチャップやマヨネーズで『ママ』と、味噌汁はネギで『ママ』と書かれていた。
「トメ兄、私まだ寝ぼけてるみたい」
「なんでそう思う?」
「ママがいっぱい見える」
「麻薬にでも手を出したのか」
そうなのかな。いつの間にか一服盛られていたのかな。
「とりあえず食べろよ。まさか皿の上に母さんの生首が見えるわけでもあるまい」
「それはさすがにないけど」
あったら恐すぎるけど。
……んー。
「トメ兄がそんなこと言うから食欲なくなってきたじゃん」
「ごめん。僕もなくなってきた。ほんとごめん」
全くもう……相談の結果、テレビを見て落ち着いてから食べることにした。
チャンネルを変える。お、今日の占いだ。
「今日の一位はママ座、二位はママ座、三位はなんと、ママ座です!」
今日のママは幸運から不幸まで全て味わうのだろうか。
「ということは、最下位は……残念! パパ座の皆さんです!」
そこはパパ座なんだ。全国のパパ、残念。
「くっそー! 僕は最下位かぁ」
「トメ兄いつの間にパパになったの!?」
「は? 何言ってるんだ。僕はおうし座だろ」
そ、そだよね。やっぱ私の耳が寝ぼけてるのか。や、それにしても寝ぼけすぎじゃない?
『さて、次は街の様子を見てみましょう!』
画面が切り替わる。
とある市場が映された。
全員、私のママだった。
売られている魚もママだった。
「ぎゃあああああああああああああああああああ!!」
だからこんな叫び方をしても仕方ないと思う。
「どうしたカカ」
「ま、ママが、ママがいっぱい!」
「やっぱ変な薬でもやってるんじゃ」
妹がこんだけ取り乱してんだからもうちょっと慌ててよトメ兄!
「ふっふっふ……それはね」
どこからともなく聞こえてくる声! これはやっぱり!
「本物のママ!」
「その通り!」
テーブルの下からニョキッと生えてきたのはまさしくママ!
「今年は母の日に何もくれなかったから、ママってば悲しくて悲しくて思わずカカちゃんが寝ている間に『全てがママ関連に感じる』という暗示をかけてしまったのよ!」
ママって変な特技持ってるね。
「さぁカカちゃん。母の日に何も送ってくれなかった理由を言って! ママ、そう簡単には許さないからね!」
「何も送らなかったら直接来てくれるかと思って。会いたかったから」
「ママったら超許しちゃう!」
めでたし、めでたし。
ママですね。
それしかいえません。