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カカの天下  作者: ルシカ
866/917

カカの天下866「サユカの任務、必要以上に二人きり編」

 こんにちは、サユカですっ! 今日はわたしとトメさんの誕生日! 二人の運命の日っ!


「あ、サユカちゃん。誕生日おめでとう、と、おはよう」


 だから今日は、二人でお出かけなのですっ!


 きゃーッ!! 


 きゃぁー!!


 っきゃああああああああ!!


 はっ!? テンションが上がり過ぎたわ。


「トメさんっ! 誕生日おはようございます!」


 テンション上がり過ぎて混ざったわっ。


「うん、おはよう」


 トメさんってばツッコむことなくスルー!? 冷たいっ、でもそれはそれで快感っ。


「じゃ、行こうか」


「はいっ」


 今日は二人っきりになれるといいなっ。




 ――商店街に、着いた。


 ひゅーるりー、と寂しい風が吹く。


「誰も、いないぞ」


 二人っきりだっ!!


 じゃなくてっ。え、なに? なんでいつも賑わってる商店街に人っ子一人いないの!?


「……人類が滅んだ未来に迷い込んだ、なんてことはないよな」


「それはそれで」


「え、サユカちゃんなんて言った?」


「いいえ、なんでも」


 わたしたちがアダムとイブに、なんて思ってませんよ。ええ。


「でも、本当に誰もいませんねぇ」


「とりあえず歩いてみようか」


「はいっ」


 トメさんと仲良く探索開始。


「……静かだね」


 カサカサ!


「……ですね」


 カサカサ!


「……でも、なんか」


 カサカサ!


「……人の気配はするような」


 カサカサ!


「……なんか、かつて無い勢いで避けられてるような感じじゃないだろうか」


 わたしもそんな気がしてきた。街の皆が隠れてる。わたしたちに見つからないように。全員が揃いも揃って。


「よし、店に入ってみよう」


「そうですねっ」


 試しに喫茶店に入ってみた。さてさてどうなるのかしら。もし誰もいなかったら勝手にケーキとか食べてやるんだからねっ。


 カランカラン、と来店を告げるベルが鳴る。


 お客さんはいない。


 店員さんは……いない?


「いらっしゃいませ」


 いないのに声がしたっ!


「お、お好きなお席へどうぞ」


「そこの店員。なんでカウンターに隠れてるんだ」


 トメさんがその姿を目ざとく発見したみたいだっ。カウンターの影かな? 覗きこむと確かにウェイトレスさんが。でも、なぜか縮こまってフルフルと震えている。怯えてるの? 何に?


「お客に対して失礼じゃないか?」


「そ、そのぅ」


 そのとき、ハラリと床に落ちた紙。それを見て私たちは全てを理解した。周りの人々が姿を見せない――いや、見せないほどにわたしたちに近づかない、その理由。


 トメさんの背中からはがれ落ちた紙には、大きくこう書かれていた。『この人、うんこたれ。逃げろ』と。


「ひぃ! や、やっぱりたれるんですか!?」


「誰がたれるかぁ!! ていうかやっぱりってなんだ!!」


「きゃあああああ! たーれーらーれーるー!!」


「人聞きの悪いことを叫ぶなぁ!! こんな冗談みたいな貼り紙を真に受けてんのか、この商店街の住人は!! しかも全員!?」


「だってたれるんでしょう!?」


「たれねーよ!!」


 いま、街の人々はこんな感じで怯えているのね……ん、ハラリとまた紙が落ちたわ。同じもの、ってわたしにも貼ってあったの!?


「こんなことするのは誰か、なんて考えるまでもないわよね。カカすけっ、サエすけっ!」


 案の定、ひょっこりと現れる二人。


「なに、サユカちゃん。やっぱりたれるの?」


「たれないわよっ!」


「だからなんでやっぱりなんだ!?」


「あははー、トメお兄さんさんてば今にもたれそーな顔してるー」


「怒ってんだよ!!」


 わたしは怒りをかみ殺しながら、ゆっくりと聞いた。


「なんで、こんなこと、したの?」


 カカすけはハッキリと答えた。


「二人きりになりたいと思って」


「ありがとう!!」


「お礼言うの!?」


 ごめんなさいトメさん。二人きりになりたいと思ったのはわたしなんです。それを二人は叶えようとしてくれた……だからお礼は言わないと。


「喜んでもらえてよかった。これが今回の二人への誕生日プレゼントだよ」


「存分にたれてねー?」


「たれないって言ってんだろがあああああ!!」


 ……まぁ、うん。色々と歪曲してる気はするけど、祝ってくれてるのはわかる。かろうじて。だから感謝。


 今日でまた一つ、歳が増えました。トメさんに見合う大人へと近づけたかな? いや、もっと大人にならないと。このくらいのイタズラはスルーできる大人に!


 ……と。


「あー、なんだよ。たれないのか」


「おーい皆、たれないんだってさー!!」


 なーんだ、と胸を撫で下ろしてわらわらと姿を現す大人たち。


 大人たち。


「おまえらバカだろ」


「バカですね」


 思わず同意したわ。


 すると大人たちは声を揃えた。


『オゥイエ!!』


 こんな大人にはなりたくないわ。




おめでとう二人とも!


そう、何気に二人の誕生日なのです。しかし毎回この日は感動的な展開はありえないですなぁ。まぁこんな感じがサユカにとっては一番幸せでしょう。多分。



多分。

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