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カカの天下  作者: ルシカ
859/917

カカの天下859「本日の放送委員会」

 こんにちは、サユカですっ。


 めでたく中学生になれた……そう、わたしは中学生です。もう大人みたいなものです。なので、ここはどーんとでっかいことに挑戦するべきだと思います。


 というわけでトメさんの会社にやって来ました。


「おー、工場見学だー」


 サエすけの言うとおり、トメさんが働いているのは印刷会社の工場なのです。今もここで美しい絵柄を印刷しているに違いありません。


「さ、行くわよサエすけっ」


「うん、でも本当に大丈夫なのー?」


「大丈夫よ、わたしたちにやましいことなんて無いんだから」


 そう、本当にない。ことの発端はカカすけの電話。「トメ兄が会社に弁当忘れてったんだけど、サユカン届ける?」というものだった。カカすけは「私は眠いから、喜んで行きそうな人に押し付けようと思って」と言っていたけど、わたしにとっては願っても無いシチュエーションだった。だってほら、忘れたお弁当を届ける若奥様……いいじゃない?


「じゃ、ごーごー」


 でも一人はやっぱり不安だからサエすけにも来てもらったの。女子中学生が二人もいれば大抵のことは大丈夫よね、きっと!


 あ、ちなみに今日は土曜日ね。わたしたちはお休みだけど、トメさんは休日出勤なの。お疲れ様だわ。


「お疲れ様ですっ!」


「あ、ああ。ありがとう」


 思わず口に出したら、工場から出てきた社員っぽい人に聞こえてしまったみたいね。なんだか「?」マークをいっぱい浮かべてるけど。


「まさか仕事終わりに女子中学生に労われるとは思ってなかったんだろうねー」


「そっか、じゃあ良いことしたのね」


「うんうん」


 気分も晴れやかになったところで乗り込もう!


 どう見ても『会社の正面入り口です!』と主張している場所から堂々と入る。


 そして受付へ。


「中学生です」


「どうぞ」


 うん、やっぱり中学生てすごい。


「……ん? え、ちょちょちょ! 待ってください!」


 やっぱだめか。慌てた受付おねーさんに止められた。


「もー、サユカちゃんたらー。そんなので入れるわけないでしょー」


「入れそうだったじゃないの」


「あまりに堂々としてるからつい……」


 冷や汗をぬぐうお姉さん。


「おねーさん、中学生を二枚ねー」


「はーい」


 あ、それならいいのね。


「って違うっ!」


 やっぱダメなの?


「あのね、お嬢ちゃんたち。ここは映画館でも観光名所でもないのよ?」


「じゃー工場見学ってどう手続きすればいいのー?」


「う……さ、さぁ?」


 頼りにならない受付ねっ。


「え、えぇと! 工場見学しに来たの?」


 するにはどうすればいいか、はひとまず置いといて用件を聞いてきたわね。


「笠原トメっていう人にお弁当を届けに来たのよっ」


「ああ、そういうこと……だったら工場内のアナウンスで呼び出してあげる。ついてきて」


 はーい、と頷いて放送室に案内されるわたしたち。やっぱり工場見学っぽくなってきたわね。




「てき、ぱき、てき、ぱき」


 どうも、トメです。ただいまテキパキ仕事中です。


 お、アナウンスの音だ。


『――さん、女子中学生がお見えです。受付のほうまでお願いします』


 なんだよ、女子中学生がお見えってのは。機械の音がうるさくて名前は聞こえなかったが……僕の聞き間違えかな?




「うーん、来られませんねぇ」


「聞こえなかったのかなー。おねーさん、もっかいお願いー」


「いいわよ。あ、そういえば。あなたたちは笠原さんとはどういう関係?」


「どどっどどどういうって、その」


「好きな人ですー」


「ちょっ、サエすけ!?」




『笠原トメさん、笠原トメさん、あなたが好きな女子中学生がお見えです』




「むしろこの際、恋人ってことにしとけばー?」


「そ、そうねっ」




『笠原トメさん、笠原トメさん、あなたの恋人の女子中学生がお見えです』




「サユカちゃん、そのミニスカ可愛いねー」




『笠原トメさん、笠原トメさん、あなたが好きなミニスカがお見えです』




「はぁ、綺麗な脚……子供ってピチピチでいいですねぇ。私はもう歳のせいでミニスカなんか……」


「お姉さんだって綺麗じゃないですかー」


「そ、そうかな」


「そうですよっ」




『笠原トメさん、笠原トメさん、でも正直ピチピチすぎて羨ましいです』




「ところでトメさんの社内評判はどんな感じなんですかー?」


「そうですねぇ、私はあまり接点はないんですけど、細かい人という印象が」


「というと?」


「この間、休憩室の自販機のボタンを押すときに『ポチ』じゃなくて『ずびし!』とか『あべし!』とか言って押してたら、たまたま居た笠原さんに『それは痛そうだろ』ってツッコまれました」


「それはなんともトメさんらしい」


「あ、マイクのスイッチONになってたー」


 サエすけってば絶対わざとねっ。


「こらああああああああああ!!」


 あ、やっとトメさんが来たっ! 作業着姿が格好いい!


『というわけで、そんな笠原トメをよろしくお願いしまーす』


「工場全体にそんな宣伝しなくていいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」


 うん、やっぱりカカすけ連れて来ればよかったわ。




 中学生になり、行動範囲が広がりました。おかげでトメさんも楽しくなったことでしょう。


 さて怪我ですが、とりあえず今週末に抜糸です。いまだ片手しか使えないし仕事も再開したので書けたのは一話だけですが、治ったらもっと色々書きますんでよろしく! ではではっ。


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