カカの天下858「中学最初のお仕事は」
「ただいまー」
「ねぇトメ兄」
どうも、仕事を終えて会社から帰って来たのに「おかえり」の一つも言ってもらえないトメです。
「ねぇねぇトメ兄。自己紹介」
は?
「……どうも、仕事を終えて会社から帰って来たのに『おかえり』の一つも言ってもらえないトメです」
とりあえず言われるがままに自己紹介してみた。嫌味もこめて。
「NO!」
まさか英語になって返って来るとは思わなかった。どうしよう、これじゃ嫌味が通じているのかわからない。まぁそれはさておき。
「なんだよ、自己紹介しろって言ったじゃないか」
「ノー! ノー!」
「なんだよもー!」
「のー!」
「もー!」
「なにぬねのー!」
「まみむめもー!」
なんとなくノッてみたものの、僕ってば何を言ってるんだろうか。
「トメ兄ってば鈍いなぁ。中学校で初めての自己紹介はどんな感じにしたらいいかな? って言ってるんだよ」
「言ってねぇだろ」
「言ったもん!」
「じゃあそれを言ったときのセリフを一字一句間違えずに繰り返してみろ」
「まみむめもー!」
「言えてないしそれは僕が言ったセリフだ」
いつまで経ってもやはりカカはカカである。
「あー、もういいよ。わかった、とにかく自己紹介の練習がしたいんだな?」
「あいうえおー」
「なんだそれ……ああ、『おー!』っていう返事か」
「さしすせそー」
「そーかそーか」
意外と便利な言い回しだな。
「しかし自己紹介なんかいちいち練習しなくてもいいだろ。普通に名前言うだけでいいじゃん」
「ダメだよ。中学校は生徒が色んな小学校から集まってくるんだよ? どんな人が来るか油断できない、掴みはしっかりしないと」
とりあえずこの妹は何かにつけ個性を発揮しておかないと気がすまないらしい。
「うーん、普通に名前と、所属してたクラブでも言えばそれでいいと思うんだけど」
「こんにちは、笠原カカです。小学校のころは手芸部でした」
「そうそう」
「……それだけ?」
「む、それじゃ質問。手芸部でどんなものを作ってたんですか?」
「主に漫才です」
「待てぃ」
「あ、一気に言ったほうがいいのか。 こんにちは、笠原カカです。小学校のころは手芸部で漫才を作ってました」
「文章がおかしい」
「こんにちは、笠原カカです。小学校のころは漫才をしながら手芸部をしていました」
「それ単なる不真面目な生徒だろ」
「もう、じゃあどうすればいいのさ」
「だから余計なことは言うなって」
「わかった」
本当にわかったのか?
「ではカカさん、自己紹介をお願いします」
「おまえらが私を知る必要はない」
確かに余計なことは言っていない。要点すらも言ってない。
「名前を言って、それで終わりでいいじゃないか」
「えー。つまんない」
「どうせこれからいくらでも個性を発揮してくんだから、自己紹介くらい普通に済ませろ」
「はぁい」
――そして、中学生としての初日。
「ただいま」
「おかえり」
「よぅカカ、自己紹介は結局どうしたんだ?」
「普通にした」
「そっかそっか」
「そしたら『カカちゃんなのになんで普通なんだろう』って皆に首を傾げられた」
「皆って……生徒全員?」
「先生含めた全員」
なんてことだ。まさか本当に余計な事を言う必要がなかったとは。コイツ色々目立ってたもんなー、他の小学校にまで名前が知れ渡ってたのか。
「とりあえず、まみむめもー! って言ってやった」
「反応は?」
「拍手された」
とりあえず僕も拍手してあげた。
「……ふふん」
なんか自慢げな妹の中学生活は、こうして始まったのだった。
いよいよ中学編スタート、色々書くぞー! と思ってたのですが……
先日、事故によって右手の指を三本ざっくり削ってしまい、救急行きになり縫ったりなんだりして……包帯に巻かれて全く使えない状態となってしまいました。とりあえず一ヶ月もすれば治るし、後遺症なども残らない予定なのですが……とにかくキーボードが打ちにいくい。右手は全部、無事な親指で打ってるんですが今にもツりそうです笑 とにかく今回は一話書くので精一杯でした。仕事は休ませてもらってるので時間はあるのに……くそぅ。
なんか開始早々こんなんだと書けないイイワケみたいで嫌なのですが、残念ながら実話です^^;
また筆が遅くなってしまうと思いますが、どうかご勘弁お願いします……
あー、うー。
カカたちもごめんよおおお。ちゃっちゃと治して書いてやるからなあああ。