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カカの天下  作者: ルシカ
854/917

カカの天下854「卒業式?」

 どうも、おなじみのトメです。


 いよいよ卒業式当日となりました。僕は父兄として体育館にて開式を待っています。


「胸がドキドキしますねー」


「あらサカイさん? ドキドキするような胸、あるんですか?」


「あら、そういうサラさんは無駄な脂肪が邪魔して心臓がうまくドキドキできないんじゃないですかー?」


「ほーんと、サカイさんのソレはスリムでいいですねぇ」


 ……隣の二人は相変わらずだ。誰かなんとかしてほしい。


「はっはっは、いやぁ楽しみですねぇ」


「キリヤ、なんでおまえがここにいる。父兄じゃないだろ」


「ふ、カカちゃんに招待されたのです。面白いことするからどうぞ、と!」


 どう考えても卒業式の誘い方じゃねぇ。


「ところであの先生、ゴボウに似てませんか?」


「なんだ急に……うわ、確かに似てる」


「きんぴらゴボウにしてやろうか!? とかケンカ売ってみたら面白そうですね」


「確かにどういう反応するか見てみたいが、それはさておき……ユカも一緒か?」


 なにやらきんぴらゴボウにウケたらしいユカは笑いながら答えた。


「ええ。カカちゃんの卒業式なら見ておかないとね」


「おまえ、結構カカ好きだよな」


「まぁ、それもあるし。仕事もあるし」


 だから何の仕事なんだよ。わけわからん。


「うわ懐かしい! この小学校入るの何年ぶりだろう!」


 そして、さらに何の仕事をしているかわからない人間まで現れた。


「友人A? なんでおまえまでここにいる」


「ふぇ? なんとなく」


 本当に通行人Aと同じ人種なのね、おまえは。


 ――こんな騒がしいメンバーで並んで座っているわけだが。さて、注目のテンカ先生様は……あ、いた。ステージ脇で準備してる。


 様子は、いたって普通。


 はたしてこれから泣くのか、否か。


「お、そろそろか」


 父兄も粗方座り終わり、周囲で準備していた先生がたの動きも落ち着いてきた。


 そして、始まる。


 卒業式が!!




「在校生、入場!」


 綺麗に整列して椅子へと向かう一年生から五年生の子供たち。うん、きちんとしてる。


「卒業生、にゅーじょー!」


 あれ、なんか言い方が違うような。まぁ変わらないよな。


 ほら、入ってくるカカたちにも違う様子は……様子は……なんか変だ。


 みんなパックの牛乳持ってる。


「着席!」


 あ、座った。


「一気!」


 一気に飲んだ!?


「げっぷ!」


 や、それは一緒にしなくてもいいだろう。


「卒業生の乳場でした!」


 シーン、と静まる体育館。


 すっくと立ち上がるカカ。


「乳がなくて悪かったな!!」


 なぜか全員がサラさんに注目した。


「え、え、え? なんで私を見るんですか!?」


「起立!」


「え、あ、はい!」


 カカの号令によって無理矢理立たされるサラさん。


「礼!」


「は、はい」


「乳!」


「ええええ!? どうすればいいんですかそれ!!」


「適当に!」


「え、えっと……じゃ、とりあえず揺らしてみます」


「死んでしまえ!!」


「そんなああああああ」


「着席!」


「わ、私って一体」


『えー続きまして』


 半ば泣きながら座るサラさんに構わず式を進めるデストロイヤー教頭。


『開式のぢ』


 ……ぢ?


「どうも、開式のジジィです」


 誰!? いまステージに上がってるじーさん誰!?


「えー、本日は開式となるにあたって、ぢの話をしようと思います。このぢというのは肛門部周辺の静脈が圧迫され血液の流れが滞ることによって発生する疾患の総称です。ぢにはいぼ痔、切れ痔、痔ろうの3タイプがあります。その内、約半数程度を占めるのがいぼ痔で、切れ痔、痔ろうは1~2割程度です」


 いきなり朗々と語りだしたじーさんは、ゆっくりと懐から円筒状の薬を取り出した。


「そこで皆さんにオススメなのがこの薬、『ヂニナール』」


「なるんかい!!」


 思わずツッコんでしまった。注目が集まってしまうかと思いきや、皆「うんうん」と頷いてる。そうだよな、僕は間違ったこと言ってないよな?


「これを塗るとあら不思議」


『以上、開式のぢでした』


「ええええ! もっと喋らせぃよぅ、きょーとー!」


『つまみ出せ』


「は、離せ! わしにもっとぢの話をさせろおおおおおお!」


 教職員に引っ立てられるじーさん……カカよ、あのじーさんどっから連れてきた?


『続いて、校長の話です』


 あ、オホホおばさんがステージに上がった。


「おほほ、本日はとてもおめでたい日ですわね」


 ぽと、と校長の隣に何かが落ちた。


 僕が前に買った鯛だ。


「皆さん、今までの六年間は――」


 隣に落ちてる生魚を無視して話を進める校長。


「――そんなおめでたい日のお天気が晴れなのも、きっと天が皆さんをお祝いしているということでしょう」


 あ、もう一匹落ちてきた。


「本当に、おめでとう」


 あ、落ちてきたかと思ったらいきなり天井から腕が伸びてキャッチ、上に戻った。おめでたいとおめでとうを聞き間違えたな。ていうか、誰が落としてるんだ?


「トメさん、あれー」


「ん」


 サカイさんの指差す方向を見てみる。そこの壁には卒業式のスケジュールが達筆で書かれて貼ってあった。こういうのにはお偉いさんの名前も載っているものだが、その中に……




『友情出演、笠原カツコ』




「何の番組だコレは」


 ていうか何してるオマエ。


「おほほ、私からのお話は以上です」


 そんなこんなで校長の話は終了。


「めでたい」


 ぽと。


「いやそれ鯛落としたかっただけでしょ」


 僕のツッコミも虚しく、にこやかに去っていく校長。


『続きまして』


 そこでいきなり教頭の髪の毛がポーン! と破裂して宙を舞った。


 固まるハゲの教頭。そして今までの異様な雰囲気にお笑い的な意味で呑まれていた人々が一斉に吹き出した。


「許す!」


 許すんだ!?


『さて、こうか斉唱である』


 そう言いながらハゲカツラを取る教頭。二重にカツラをかぶってたのか、つーか教頭すげー協力的だな。カカのやつ、一体どんな懐柔を……


「いやぁトメ君、こうか斉唱とはなんだろうね。私は楽しみで楽しみで」


「は? 何言ってんだキリヤ。校歌は校歌だろ」


「でもあのスケジュール表を見てください」


 僕はさっきの『友情出演、笠原カツコ』という箇所を見ないように、改めてプログラムを見てみた。


『こうか斉唱』


「……なんで校歌がひらがななんだ」


「だから楽しみなんですよ」


 確かに何かがありそうな気配。しかし準備はいたって普通、一人の生徒がピアノの前に座り、伴奏を始め――




『こーうーかー♪』




『以上、こうか斉唱でした』


『えええええええええ!』


 さすがに驚愕する父兄の皆様。


「終わり!? 終わりなの!?」


 思わず立ち上がってステージ脇の教頭へと声をあげてしまった。


『ええ、問題が?』


「そら問題だろ!」


『たしかにこうかを斉唱しましたが』


「いや、うん、したけどさぁ」


『見事なこうかでした』


「たしかに妙に揃ってたけど! ハモってたけど!」


「教頭ごめんね、うちの兄が」


「僕はここにいる全ての皆さんに同じセリフを返したいところだぞ! ごめんなさいうちの妹が!!」


 さっきから思ってたけど(思ってて口に出さなかったのはカカに慣れすぎたせいかもしれんが)とにかくやりすぎだ!


「校歌くらいちゃんと歌え!」


「むぅ、仕方ない。教頭、やりなおそ?」


 おい妹、なんでおまえそんなに偉そうなんだ。


『致し方あるまい。こうか斉唱!』


 ……ひらがなのままなのが気になる。まさか。




『こーうーかー♪』


 変わってないし。


『そーうーかー?』


 返事してるし!!


『そーうーだー♪』




「以上、ソーダ斉唱でした」


 さすがにツッコミが思いつかなかった。


『閉式のぢ』


「どうも、閉式のジジィです。さて、ぢの素晴らしいところは――」


『以上をもって、卒業式を終了いたします』


「はやいっ、はやいぞ! いやじゃ、わしはもっとぢの話をするんじゃあああああああ」


 つまみ出されるじーさん。


 えっと……なんだコレ。あのさ、全く関係ない人が見たら面白いかもしれないけどさ。いやそこの関係ないユカさんなんか腹かかえて笑ってるし。うん、でもさ? 当事者としては全然笑えないんじゃないか?


 だってほら、ずっと脇に待機してたテンだって絶句して――


「ぶはははっはははははっはっはははははくはははははっははは!!」


 ――ない。腹抱えて大爆笑してる。オイ当事者。


「はは、は、は?」


「ん? どうしたんだあいつ」


 テンはギクリと肩を震わせると、慌てたように立ち上がり、そのまま体育館の外へと走っていった。


「追うよ!」


 そして同時に立ち上がり、追うように外へとなだれ込む卒業生たち。


 なんだ、一体なんなんだ。


 しかしとりあえずこれだけは言わせてくれ。



 

 卒業証書、渡してなくね?




 なんかメチャクチャな卒業式ですが。


 まだ続きます。


 きんぴらゴボウにしてやろうか!


 発言に意味はありません。

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