カカの天下853「不安な準備」
「トメ兄、買い物いくよね?」
「ん、ああ」
「じゃあこれ買ってきて」
「え、おい。結構これ高いものも」
「はい、お金あげる」
どうも、トメです。
そんなわけで買い物に言ってきたわけですが、カカに頼まれた妙なものも沢山買ってきました。とりあえず、なんでそんなものを買わなければいけなかったのか問い詰めてみたいと思います。
「よしカカ、質問だ」
「なんぞやもし」
「まずこの、買い物リストの一番上にあった『ぢの薬』はなんだ。おまえ、ぢなのか?」
「乙女にそんなこと聞くやつは死んでしまえばいい」
「じゃあ友達がぢなのか」
「違うよ、いいからちょうだい」
うーん、ぢの薬をぢ以外に使うのか? 思い浮かばん。
「あと、この牛乳。まだうちに一本あるだろ?」
「うん、でも未開封のが必要なんだよ」
「なんで」
「持ち歩けないじゃん」
さっきからどうも会話がかみ合わない。
「……あと、この大量のクッションは?」
「一人10個がノルマなんだよ」
「この『活きのいい魚、この二種類』はなんなんだ」
「活きがよくなくて腐ったりしたら困るでしょ」
どうしよう、妹が何を言ってるのかさっぱりわからない。
「そもそもこんなに買えるほどの金、どうした?」
「私のお小遣いと皆のカンパ」
……カンパ?
「ていうか自分で買いにいけばよかったんじゃ」
「私は計画書を書くのに忙しい」
「計画書って、何の?」
「卒業式の」
ここでようやく僕は合点がいった。テンを泣かそうと相談していたカカたち。泣いたら中学までついていく、などという約束をしてしまったテン。そしてこの妙なアイテム。こいつらはまた変なことをやらかすつもりなのだ。
「なぁ、カカ。テンを泣かしたら中学までついてきてくれるって、本気で思ってるのか?」
「あれ、トメ兄知ってたんだ。うん、思ってるよ」
「あのな、いくらなんでもそれは無茶だぞ」
「その無茶を可能にしてくれるのがテンカ先生だよ」
どうやら本気で言ってるらしい。
「カカ、できないことはできないんだぞ」
「できないできないって言ってたら、できるもんもできなくなるでしょ。やるだけやってみないと」
「それは、そうだけど」
カカは真剣で、必死だった。
「そんなにテンのことが好きなのか」
「うん」
僕は応援できない、止めることもできない。わかってる、大人だから知っている。無理なものは無理だということを。でも、それがなんだ? たかがそんなことを知っている程度の僕が、この子たちの純真な想いを妨げていいとでも? いいわけがない。この子たちが先生に来てほしいと願っているなら、そのための努力をさせてあげるくらい構わないじゃないか。
きっとそれは、誰にも迷惑はかからない――いや、かけてもきっと許されるだろう。
「よし、トメ兄。もうちょっと協力してくれる?」
「なんだ、僕にできることなら」
「かんちょー」
「はぅあぅぅぅああああああああ!?」
とある箇所からほとばしる衝撃!
「ぬぁ、ぬぁにぉしゅりゅ」
「ねね、ぢになった?」
「な、なってないとおもふ」
「じゃ、もっかい」
「はぅぃぅぅぃぃっぃ」
め、迷惑はかかるかも。そしてこれでぢになったら許せないかも!
その頃のタケダ。
「もうすぐ卒業式だな、キンジロウ!」
「……うん」
「どうしたどうした、卒業式が近づいてきたのが悲しいのか?」
「……うん」
「なんでそんなものを握り締めて泣いてるんだ?」
「……うん」
タケダは思う――卒業式なんてこなければいいのに。
その頃のインドちゃん。
「ふ、ふふふ、ふふふ……これで一晩寝かせれば……ふふふ」
インドちゃんは思う――最高のカレーができそうだ。
その頃のサエちゃん。
「……んー」
「どうしたのサエー?」
「もうすぐ卒業式だよねー」
「そうよー。お母さん張り切って撮影するからねー!」
「なんか普通に寂しくなってきた」
「よしよしー、お母さんの胸においでー」
「……ぐず」
サエちゃんは思う――もっと皆といたい。
その頃のサユカちゃん。
「あーあー! んんっ、あーかーさーたーなー♪」
サユカちゃんは思う――発声練習はこのくらいにしておこう。
その頃のイチョウさん。
「くー」
イチョウさんは夢の中で思う――ちょっと早く寝すぎたかしら?
卒業式まで、あと少し。
次はいよいよ卒業式。
準備はかなりぼかしましたが、何をどのように使うやら。
そして最後はどうなるか。
まぁ、私の中では決まってるんですけど。皆さんはどうなったらいいと思いますかね?