表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カカの天下  作者: ルシカ
851/917

カカの天下851「今年の雛祭りはコレだ」

 こんにちは、トメです。今日はひなまつり……え? もう過ぎた? そんな馬鹿な。だってほら、僕の部屋にあるカレンダーを見ても三月三日ですよ。よし、今日は三月三日だ。


 というわけで、イベント好きな僕の周りは今回も大騒ぎすることでしょう。


「トメくぅぅん! きょーぅおはった、の、し、うぃ雛祭り、フォー!!」


 やたら高いテンションで我が家に現れたのは……


「友人Aか……」


「なんだそのガッカリしましたって顔は! あぁそうですかそうですかトメハーレムの誰かじゃなくてゴメンなさいねぇ美人女性じゃなくて美形男子ですいませんねぇ! えぇそうですよ君の周りの女性陣がどうせ集まると思ってつまみ食いに来たんですよあたしゃハイエナですよこうでもしないと彼女ができる可能性とかないんですよ、ケッ!」


 友人Aという地味な名前にしては面白いことを言う。


「あれ、トメ兄どしたの」


 と、ここでカカが登場。外行きの服装だ、どこかに行くのか?


「おぉカカちゃん!」


「誰この人!」


「友人Aだよ!」


「あんたなんかと友人になった覚えはない」


 あ、泣いた。


「ところでカカ? 今日は雛祭りだよな、何かやるんだろ?」


「や、何もしないよ。それどころじゃないもん」


 あれ。


「いってきまーす」


 首を傾げる僕を置いて、さっさと出かけてしまうカカ。


「珍しい……イベント好きなあいつが」


「後をつけよう!」


 友人A復活。


「なんでさ」


「雛祭りしないなら俺は暇だ!」


「暇つぶしかよ」


 まぁ、今日は僕も予定がないからいいけど。


「でもこれストーカーみたいだぞ」


「そう、これこそが俺たちの雛祭りだ!」


「おまえどこの偏執的な教育で雛祭りを習ったんだよ」


 ともかく妹の後をつけることに……




「カカちゃん、気づいてないな」


「あんにゃろ、携帯見ながら歩いてやがる。危ない、許せん」


「おまえって兄というよりママみたいだよな」


「きっとテト○スの練習だな。おのれ、今度こそ対戦で勝ってやる」


「あ、いまちょっとお兄ちゃんっぽい」


 ともかくつける……




 やがて辿りついたのは、いつもの公園だった。


 しかしそこには、なんとも異様な光景が広がっていた。僕の記憶が正しければ、あれはカカのクラスメイト。あの人数だと、もしかすると全員が集まっているのかもしれない。


 ――その大人数が、横三列に並んで合唱しているのだ!


『あーかーさーたーなー!!』


 綺麗に揃う合唱。


「……なんだ、あれ」


 大きな木の陰にこっそり隠れながら、僕は呟く。何かを練習しているのはわかる。しかし、意図は不明。


「なるほど……これがやつらのヒナマツリ……! それどころじゃないというのは、『そんな普通のひなまつりなんてやってられない』という意味だったのか!」


 意図は不明、だが、この阿呆Aの言っていることは絶対に違うと思う。


「ほら、もっと力入れて!」


 カカの声だ。僕は周囲を見渡すと、合唱団から少し離れたところに見つけた。


「どすこーい!」


 ……なぜか、しこを踏んでいるタケダと一緒に。


「ダメダメ! そんなヘナチョコじゃ」


「そ、そんなことを言われても……俺はもともと天才的な文系で――」


「じゃあやめるの?」


「やります! カカ君のためならば!」


「よし、とりあえずもうちょっと太れ」


「おお、カカ君が太った男好きというならば喜んで!」


「デブは嫌い」


「え、じゃあやめ――」


「でも必要だから太れ」


「う、うぉぉぉぉぉ……これは愛の試練なのか、どすこーい!」


 ほんと、なにやってんだあいつら。


「あれ、友人A? 帰るのか」


「おう。なんだか期待してたイベントは起こりそうにないしな」


「とりあえずツッコミどころ満載なイベントは起きてるぞ、そこで」


「いやぁ、俺が期待してたのはもっと大人にデンジャラスな展開なわけよ」


 そんな展開を僕の周りで望むほうが間違ってる気がする。


「じゃ、また会おう」


「お、おう」


 さて、僕一人になってしまった。どうするか。ツッコみにいくか? んーでも、何かの練習だとすると……邪魔しないでおくか。


 僕はそう結論づけると、そのままこっそり家へと帰るのでありました。




 で、帰ったら。


「待ってましたよトメさん!」


「待ってたよ弟!」


「待ってましたよートメさんよー」


 なんか、サラさんと姉とサカイさんがいた。


「さぁさ、お雛様の格好しましょうねー」


「え、え、え! なんで僕がお雛様!?」


「そのほうが面白いからです!」


「本当はうちのサエをお雛様にしたかったんだけどー」


「あたしもカカちゃんをお内裏様にしたかったんだけど」


『忙しいってフラれちゃったから、代わりヨロシク』


 友人Aカモン! そして身代わりになれ! おまえの望む『大人にデンジャラスな展開』が相当高いレベルにおいてただいまライブで進行中――うわあああ脱がされるぅぅぅぅぅ!




 ――合唱。


『あいうえおいうえあー♪』


 違った。合掌。




 え、雛祭りは随分と前に過ぎた?


 そんなもん知りません。


 知りませんとも。


 えぇ。


 ……えーと。


 ごめんなさい。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ