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カカの天下  作者: ルシカ
849/917

カカの天下849「いつもどおり」

 こんにちは、カカです。今日も今日とて、いつもどおりの授業が終わり、いつもどおりの昼休みとなりました。


「さて諸君、相談だ。テンカ先生を泣かすにはどうしたらいいと思う?」


 私とサエちゃんサユカンの三人でプランは決めた、けどやっぱり皆のテンカ先生だし、クラス全員の意見を聞いとかないとね。


「なに。カカともあろうもんが何も思いつかなかったの?」


 おやアヤちゃん。随分と挑戦的ですな。


「そんなわけないでしょ。ヤバイくらい沢山思いついたよ」


「じゃあその中の、ボツ案を一つだけ聞いてみようかな」


「あれ、ボツの方でいいの?」


「何をやるか先に知ったらつまんないでしょ」


 うんうん、と頷くクラス一同。なんだ、皆で楽しみにしてくれてるのか。


「別に面白いことするわけじゃないんだけどなぁ」


「はいはい、そうかもね。ところでボツ案は?」


「んっとね、卒業証書を渡した途端に教頭の鼻毛が爆発するとか」


「充分に笑えるわよ、それ」


 ぱくり。


「や、鼻毛は汚いからきっと笑えない」


「その発想自体が面白いと思うけど……そもそも笑わすんじゃなくて泣かすんでしょ」


 おっとぉ、私が間違ってたら世話ないじゃん。


「うーん、教頭と鼻毛まみれになったらテンカ先生も泣くかなぁ?」


「ま、やっぱり放っておいても楽しくなりそうね」


 ぱくり、ぱくり。


 うんうん、と再び頷くクラス一同。んー、それで納得してるんなら、まぁいいけどさ。


「そういえばニシカワ君は? いつも一緒なのに」


「いつもってわけじゃないわよ! えっとね、その、あの、ニッシーは……トイレ」


 あれ。


「ニシカワ君、最近トイレ多いね。さっきも授業中に行ってなかったっけ」


「そ、そうね」


 なぜかどもるアヤちゃん。


「ふふふー、それはねー?」


 そしてどこからニョキっと現れたサエちゃん。


「バレンタインにアヤちゃんのチョコを食べてからニシカワ君のお腹は――」


「キャー! キャー! 言わないで!!」


 一体何があったんだろう。とても気になるけど、アヤちゃんとサエちゃんは楽しそうに追いかけっこして、そのまま何処かへ去っていってしまった。


「相変わらず騒がしいわねっ」


 ぱくぱく。


「あぁ、トイレからおかえり。遅かったね、サユカンもお腹がゆるいの? いっぱい出た?」


「そういう下品なことを言わないのっ! わたしはただ途中でタケダと会ったから話してただけよ」


「女子トイレで会ったの? うあタケダきもい。ちゃんとトイレに流した? タケダを」


「あんな小さなところに流せないわよっ」


「細かくすればなんとか」


「こまか……っ! うぇぇ、気持ち悪い」


「……ごめん、私もけっこー気持ち悪い」


 この表現はやめとこう、うん。


「とにかく途中の廊下で会ったのよ」


「どんな話をしたの?」


「タマちゃんが元気すぎて困るってさ」


「いつもの愚痴かぁ。でもタケダって絶対シスコンになりかけてるよね」


 ぱくぱくぱくぱく。


「ところでさ、さっきからこのぱくぱく言ってるのはなんだろう」


 や、自分で聞きつつもわかってたんだけどね。見ないフリをしてただけで。


 ぱくぱくぱくぱくぱくぱくぱくぱく!


 そんな勢いでカレーを食べてるインドちゃんが教室の真ん中にいたのだ。相方のイチョウさんが隣でオロオロするばかり。


「あの、もしもし? もう給食は終わってるんだけど」


 おそるおそる声をかけたら、キッと睨まれてびっくりした。まさかおとなしいインドちゃんに凄まれる日がくるとは。


「私は今、すごく悲しいの」


「とてもそうは見えない」


 ものすっごい量のカレー食べてるし。


「なんで……?」


 やがてインドちゃんが喉から絞りだしたのは、その一言。


「えっと、なにが?」


 ぱくぱくぱくぱくぱくぱくとカレー食べて。


 ヤケ食いのように口へと詰め込んでもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐと租借してからインドちゃんはもう一度言った。


「なんで、そんなに楽しそうなの?」


 クラスが黙った。


「笑える? 面白くなる? 相変わらず? いつもの?」


 先程の会話を反芻するように言って。


「それがもうすぐ、なくなっちゃうんだよ?」


 言って、現実を突きつけた。


 小学六年生の二月。


 三月は卒業。


 もうすぐこの学校に来なくなる。


 この学校での時間が、終わる。


 そんなことは皆知ってる。来月は卒業式、それが終わったら中学に行くんだ。お別れする人だっていっぱいいる。うん、知ってる。でも誰も実感なんてないんだ。


「大丈夫だよ」


 私は言った。根拠はない、でも言い切った。


「テンカ先生を泣かして、中学まで来てもらうんだ。そうすれば中学校でも皆で一緒。なくなったりしない。何も変わらずに、ずっとやっていくんだ」


 信じてれば叶うなんて、小学六年生にもなって言うつもりはないけど。でも、信じて頑張ってれば、きっとうまくいくんだ。知ってるの。私の周りには優しい人ばかり。だから頑張れば、絶対に認めてくれるはず。


 だから、頑張らないと。




 さーて、カカたちはどうなりますかね。三月から仕事が本気で忙しくなる予定ですが、小学校編のラストです。しっかり書き上げたいと思ってます。


 そして次はカカラジですな。なんかすっごい久々に書く気がする笑


 さてさて、ネタはあるかな……?

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