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カカの天下  作者: ルシカ
848/917

カカの天下848「バッビーバレンダイン」

 どうも、トメです。今日はバレンタイン……べ、別に浮き足立ってなんかいないんだからね! なんて気持ち悪いことを言いつつ(わかってるんです、自分でも。ええ)居間でのんびりしています。日曜なんでね。


「よぅトメ、チョコ持ってきたぞ」


「友人A!?」


 解せぬ。なぜ最初にくるのがおまえなんだ。


「どうせチョコがもらえない者同士、仲良くし――」


「トメ兄、はいチョコ」


「うおおお」


 初っ端から飛ばしてくれるじゃありませんかぁカカさん! おっとぉ、これは意外と綺麗なラッピング! ピンクの正方形箱に赤いリボン、大きさ的にもヘンナモノが入っているとは考えにくいのがイイ!


「あけるぞ?」


「どぞ」


「おお……これは生チョコ!?」


 こんな高度なものをカカが作りあげるとは! 早速食べてみよう。毒とかカエルとか姉とか入ってないよな? 有り得るけど、ここは兄として妹の誠意というものを信じよう。


「むぐ……うまい!」


 至高の甘さがとろけて舌を侵食していく。


「信じられん、美味すぎる!」


「ふ、そりゃ美味いさ。手作りだからね。ゲンゾウ兄弟の」


「おまえの手作りじゃないんかい!?」


「私が作るとは言ってないよ」


「嘘つき!」


「嘘じゃないよ。だってそれ手作りじゃん」


 それはそうだが! 嘘はついてないけど本当のことを全部言ってない、とか詐欺の論理だぞ。お兄ちゃんの感動とか返してほしい。


「……トメ?」 


 あ、友人Aのこと忘れてた。


「ま、まぁそうだよな。家族はくれて当たり前だよな」


 うん、と答えようとしたそのとき。


「トメお兄さんやーい、チョコですよー」


「サエちゃん? あ、ありがとう」


 確かこの子も言ってたよな……


「サエちゃん、これって手作り?」


「はいー」


「誰の?」


「うぎゃー」


「何そのリアクション」


「騙せなかったかーと思いまして。お察しの通り、ゆーたに作ってもらいました」


「やっぱりか……」


「脇で」


「脇!? わき、ワキ!? なんでそんなとこで作ってもらうの!?」


「斬新かとー」


「程があるよ!? 僕そんな得体の知れないもの食べないからね!」


「えー……私のチョコ……」


「いや君作ってないでしょ」


「頑張って包装したのにー」


「じゃあ包装紙だけもらう」


「ならいいよー」


 ふぅ、よかった。考えるまでもなくあのゆーたさんがサエちゃんに「トメお兄さんにあげるから作ってー」と言われて毒物以外のものを作るなんてありえないからな。


「と、とめぃ!?」


「なんだ友人A、いたのか」


「ななななんだ今の美少女は!?」


「なんだと言われても、妹の友達だが」


「そうだよな!? 小学生だよな! ものっそい可愛いくて小さくて可憐で小悪魔めいててどうみても犯罪だよな!?」


「あぁ、おまえの発言がかなり犯罪だ」


「いいや! そんな子にチョコをもらうおまえが」


「トメさんっ! これをどうぞ!」


 またもや友人Aを無視して現れたのはサユカちゃんだった。その手には不器用さ丸出しの包装をされたものが。


「手作りチョコですっ! 頑張りましたっ!」


「これはサユカちゃんが作ったんだよね?」


「当たり前ですっ」


 そうだよな、普通はそうだよな……そう思いながら包みを開き、ハート型のチョコにかぶりついてみる。


 うん、あまり美味しくない。


 でも一番嬉しい。


「ありがとうサユカちゃん」


「は、はいっ! それ本命チョコですからねっ! ではっ」


 走り去っていくサユカちゃん。そんなに照れなくてもいいのに……ん?


「友人A、どした」


「なんたることか、なんたることか。なんたることか!?」


「ど、どした、本当に」


「我が友人トメはいつの間にやら小学生キラーになっていたというのか!? しかも揃いに揃って美少女ばかりを狙った犯行……一体どんな手口を使った!? この世すべてのロリコンは貴様を呪い殺す準備がすでに整っていることは間違いないぞ! さぁ遺書を残すなら今のうちだ、内容は『ロリ万歳』で本望か!?」


「お、落ち着け! 僕は別にロリコンじゃ――」


「トメさーん」


「あ、サラさん」


「はい、普通のチョコです! 普通でごめんなさいね」


「いや、嬉しいよ」


「えへへ、では」


 にこやかに去っていくサラさん……はっ。


「ゆ、友人A」


「そうか……そうだな、普通だった、普通に可愛い子だったな。あぁ認めてやる、おまえはロリコンじゃない、ロリコンでもある、が正解なんだな」


「そうじゃなくて――」


 あ、テン。


「トメ、オレのチョコは?」


「……ないけど」


「あぁん!? 仕方ねぇな……ほれ」


「え、くれるの?」


「しゃあなしだ、しゃあなし。来月ちゃんと返せよ。じゃな」


 なんか恐いオーラを感じて友人Aを見る。


「しゅっぽー!!」


 なんか頭から汽笛を鳴らしていた。


「我、神に問う! 何故だ、何故このような男に可愛い妹や美人の小学生や活発デレデレ小学生、さらに普通の女性しかも胸でけぇーし更にツンデレまで揃えて『さぁお選びください全てお召し上がりでも構いません』という状況にしているのですか。後にどれだけ軍勢が控えているのか想像するだけでも嫉妬で血涙を尻から流しそうな勢いだ! 何故! 何故それに比べ我はこれほど孤独なのだ!?」


 なんか始まった。


「我の年齢とは彼女いない暦と同義! ときめきを得るためには二次元に逃げるか、もしくは大通りで可愛い子と横に並んで歩いて『俺はこの子とデートしてるんだエヘヘ』などと妄想に浸るしか楽しみがない! それをなんなんですかこんちきしょーは。これだけチョコをもらいつつ誰とも付き合わない、友達以上恋人未満のネットワークを広げまくってウハウハですか? おぉ神よ!」


 一体どんな神に向かって訴えているのか気になる。


「こんなにも羨ましいトメ! こんなにも恵まれた野郎が私の目の前に展開されたこの屈辱的な光景はなんという! なんという運命の悪戯といいますか、なんというその、ぶっコロスといいますかチートといいますか! あぁ私は何を申し上げているのでしょう。もしもこんな脚本を描いたやつがいたらマジ殺す! 神だろうと悪魔だろうと作者だろうと! それが嫌ならばどうか私に慈悲を! トメには不幸を! 私に出番を! トメには堕落を! 私には可愛い彼女を! トメにはブサイクを! 私に幸せを! トメには借金を! 私にチョコを! トメには泥水を! 私にほんのささやかな喜びを! トメに世界最大級の地獄を!! バレンタイン反対! モテるヤツ撲滅! トメ有害! ラブコメ作者は帰れ! 脇役にも日の目を! 下克上バンザイ! 名無しバンザイ! 俺バンザイ! バンザイ! バンッザアアアアアアイ!!」


 こ、ここまで言われなきゃならんのだろうか。とりあえず身の危険を感じる……逃げておこう。


 ……ん、携帯にメールがきた。なになに?


『バレンタインだし、チョコあげる』


 姉か。


『はい、チョコ』


 ……はい、って言われても。どこにチョコがあるんだ。


『用意するの面倒だから文字だけでいいよね。んじゃ』


 『チョコ』って文字を、くれただけ?


「うわぁ、こんなチョコ初めてもらった」


「まだもらったと申すか? 申すのか!? もすもすもすもすもすもす!!」


「ひいいいいいいい!」


 今日はバレンタイン。


 僕はチョコだけじゃなく、いろんな攻撃をもらいました。




 どうも、キリヤです。


「あれ、トメ君がいない」


 せっかくオチをあげようと思ったのに、トメ宅にはでっかいボロ雑巾しかありませんでした。とても残念です。


「……仕方ありません、ユカさんにでもあげますか」


 きっといい悲鳴をあげてくれることでしょう。




 先に言っておきますが、サブタイトルは誤字じゃありません。まぁ濁点つきそうな話だったということで。

 これでもトメが幸せそうに見えるから許せん。いい加減にトドメを刺すべきか。


 皆さんはどんなバレンタインを過ごしましたか?


 私は仕事しただけでした。うがあ。

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