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カカの天下  作者: ルシカ
846/917

カカの天下846「深夜の迷惑な忘れ物」

 よ、カツコだ。通称姉だよ。


 実はね、今日はお休みだったのだよ。だから一日中寝倒してやったわ。なんと24時間寝たんだぜ。寝る子は育つんだ。どこが育つかって? もちろん筋肉だ。


「くぁー、もう23時かぁ」


 昨日ベッドに入ったのと同じ時刻。若干損した気分にもなるけど、まぁよしとしよう。


「さて、明日は何日だ?」


 日にちの感覚が麻痺しているのでカレンダーを見直す。わが街のマスコット、デンジャーケロリンが『今月も危険だ、気をつケロ!』とか言ってる絵が目に入る。このカレンダーは商店街にいる人は皆持ってたりするのだ。ちなみに来月のページをめくると『避ケロ!!』とでっかく書いてある。避けろ。何を?


 ま、いっか。とにかくなんか避けよう。さて明日は……


「あー、二月四日かぁ」


 てことは今日は二月三日だったわけだ。節分だったのだ。


 ……なんだとぅ?


「うあああ! 恵方巻き食べないと!」


 豆まきはともかくそれだけは諦められない!


「い、急いで用意しないと。きっとあそこならいっぱい余ってるはず」


 幸いジャージで寝てたからこのまま外出可能だ。てことでシュバッ!




 場所は変わってセイジ食堂。もちろん営業時間は終わっているし、主人のゲンゾウさんも床についている。でもたたき起こす。


「作れ! どうせ材料とか余ってるでしょ!」


「ったく、こんな時間に……いいけどよ。明日で客に出すのも気が進まなかったとこだ」


 この食堂はいつも作りすぎなのだ。ボリュームあっていいんだけど、経営的にはよろしくないと思う。客としては嬉しいからいいけど。


「早く作って」


「いや、作ってあるのが余ってる。持ってきな」


 うし、恵方巻きゲット。聞くところによると今年は西南西に向かって食べるといいらしい。


「しかしいっぱいあるねぇ」


「これでもかなり減ったんだぞ? 昼におもしろいボーズたちが来てな、『うおおおお! 西が二つもついているのだ、今日中に限界まで食べるぞ!』『やめてニッシー! もう十五本目よ!?』とか言って食いまくってくれたんだ」


 変な子もいるもんだ。


 さて、そんなことは置いとこう。あたしはもっと変な子にこれを食べさせにゃならんのだ。


「そいじゃ、ありがとねぇ!」


「お代は」


「シュバッ!」


「払えよオイ!!」




 所変わって元祖我が家。カカちゃんの部屋に忍び込む。


「よい子は寝る時間だぞ! でも起きろ!」


「……お姉?」


 布団を引っぺがし、おねむだったカカちゃんを持ち上げてベッドの上に無理矢理座らせる。


「さぁ、召し上がれ!」


「おにはー、そとー」


「ひどい! お姉ちゃんに向かって鬼だなんて」


「気持ちよく寝てるのを叩き起こすほうが鬼だよ……くあぁ」


「てい」


「むが!?」


 あ、せっかく口開いたと思って恵方巻き突っ込んだら怒った。


「だからなんだってばさ!」


「今日はこれを食べなきゃいけないんだよ! 西南西を向かって!」


 あと何か決まりあったっけ?


 あ、そうそう。


「ものすごいスピードで!」


 速ければ速いほど縁起がいいんだよね、たしか。


「ぅえ……寝起きでこんなの食べるの?」


「寝る前にものを食べちゃいけません! でも食え!」


「ヤ」


「食べないと無理矢理押し込むよ」


「う……お姉ほんとにやるよね。わかったよぅ」


 付き合いのいい妹ちゃんを持って、お姉ちゃん嬉しい!


「じゃ競争ね。はい西南西に向けて」


 長い恵方巻きを笛のように口の前にスタンバイ。


「せーの」


 キュィィィィィィン!!


「食べたわ」


「速っ! え、お姉? いまの何、食べる音だったの!? なんかドリルとかミキサーみたいな高速回転するもので何かを削りまくったような音がしたよ!?」 


「どちらかというと、大根おろしする機械に似てるかな。ほら、大根の先を押し込んだらそのままキュイーンって削りおろしてってくれるやつ。あんな感じで口を動かしたの」


「どんな感じなのか想像もつかない」


「こんな感じだよ」


 おかわりでもう一本食べてみる。


 口に恵方巻きの先を押し付けて、ぐいっと。


 キュィィィィン!


「うあ、手品みたいに消えてった」


「いいから早く食べなよ」


 その後、もむもむと頑張って妹が食べ終わるのを見届けて満足するあたしだった。


「さて、次だ。じゃあね妹ちゃん」


「げっぷ」


 素敵な挨拶に別れを告げ、今度は弟君の部屋へ。


「さぁ弟よ! おまえもこれを食べるのだ!」


 さすがに夜中まで起きている弟君。いきなり登場するあたしにも慣れたもんで、特に驚きを見せずにしかめっ面を見せてくれた。


「おにはーそとー」


「兄妹そろって言ってくれるねぇ。あたしのどこが鬼だ?」


「腕力と発想」


「それはともかく恵方巻き食べよ」


「鮮やかにスルーしますねお姉様。あーとにかく、それお昼に会社で食べたから遠慮しとく」


「だめ。お姉ちゃんと食べなさい」


「なんで」


「姉弟愛を深めるために」


「それに亀裂を走らせたくなかったらさっさと帰れ」


「はい、向きはこっちね。せーの」


「話を聞け!!」


「ごっくん」


「一口!?」


「さぁ弟君も食べなよ」


「一緒に食べるんじゃなかったのか」


「あたしあと五本食べるもん。君はゆっくりでいいよ」


「はぁ……一本だけだからな」


 なんだかんだで付き合ってくれる家族。あたしゃ嬉しいよ。これで今年も縁起よく過ごせそうだ。




 翌日。


「太った」


 幸先は悪かった。




 はい、その日に恵方巻きを食べたにも関わらず節分忘れてた作者です。

 節分の話を書けなかった、というわけで節分を忘れてた話を書きました。しかし恵方巻き、頑張って速く食べましたけど姉のようにはいきません。まぁ正しい食べ方はそこまで詳しくないのですが、なんか一言も喋らず食べるとか速く食べるとか聞いたことあるのでそんな感じに。


 とりあえず西南西とくれば彼を書かないと、うんうん。

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