カカの天下840「浮気事件発生!?」
「大変ですトメ君!」
「あい?」
どうも、呼ばれたトメ君です。今日も今日とて鼻歌まじりに夕飯の用意をしていたのですが、唐突にキリヤが乱入してきました。
「実は……実は……」
「おう」
「ユカさんが浮気したのです!」
「ざまぁみろ」
「トメ君!?」
おっと、つい本音が。
「や、ほら。独り身としては彼女持ちの不幸は蜜の味なわけで」
「トメ君! 私たちは親友ではなかったのですか!?」
うお、必死だ。ここまで余裕がないキリヤも珍しい。
「はいはい冗談冗談。詳しい話を聞かせてみ?」
「実は!」
「ざまぁみろ」
「トメくぅぅぅぅぅぅん」
本当に余裕ないなコイツ。珍しいからもうちょっと遊びたいな。
「うぅぅぅぅ」
「あー、悪かった悪かった。ちゃんと聞くから話せ」
前言撤回、ここまで落ち込んでるヤツに追い討ちは残酷すぎる。
「実は、先程のことなのですが……散歩していた私は喫茶店でお茶をしているユカさんを発見したのです。私は気さくに声をかけようとしました、しかしできませんでした。なぜなら男性と一緒だったからです!」
「ほうほう」
「私の知らない男性と二人で、楽しそうに笑っていたのです!」
「ほうほう」
「ひどいでしょう!?」
「え、それだけ?」
「はい!」
……こういうのは誤解ってパターンが九割だよな。
「なぁキリヤ。ちゃんとユカと話したりしてないのか?」
「恐くてできません!」
「落ち着け。きっと誤解だ。ユカだって友達くらいいるだろ」
「あんな性格で友達なんかいるはずありません!」
そこまで断言しなくても……あーでもユカに友達いないって話はどっかで聞いたような。
「じゃあ仕事の仲間とか?」
「いや、それはないです」
断言するなぁ。ていうかあいつ、何の仕事してるんだろ?
「まぁいいや。それで? キリヤは僕にどうしてほしいんだ」
「……どうしましょう」
「何も考えず相談に来たのか」
「とにかく動揺しちゃいまして」
うーん、今までこいつのユカに対する態度は余裕綽々だったけど、じつは熱烈に恋愛してたんだなぁ。
「どれくらい動揺しているかというと、土足でトメ君の家にあがってしまうくらいです」
「とりあえず靴を脱げ」
「はい」
「コラ、脱いだ靴をテーブルに置くな! 汚れるだろが!」
「はい」
「僕に渡されても困る」
「はい」
「調理中の鍋に入れるな!!」
なんだこいつは、カカみたいになってるぞ。
「とにかく動揺してまして。だってユカさんは綺麗です。綺麗な女性は油断なりません」
愛とはここまで人を狂わせるのか……と思いつつ「コイツわざとやってるだろ」と思ってしまう。
「この煮物おいしいですね」
「やっぱりわざとやってるだろ!」
「だって不安で。ユカさんが私以外の男を食ってると思うと」
「だからっておまえがウチの夕飯を食うことなかろうに」
調理中の夕飯を勝手に摘まむキリヤを止めつつ、どうしたもんかと考えてみる。
……結論。僕が下手に口を出すとロクなことにならなさそうだ。
「とにかくだ、ユカと話をしてみな。もし勘違いだったら気を悪くするだろうから、さりげなくな」
「わかりました……あ、もしもしユカさんですか?」
行動力ありすぎだろオマエ。
「ええ、実は聞きたいことがありまして」
「さりげなくだぞ、外堀から少しずつ埋めていく感じで」
「浮気してます?」
「特攻隊かおまえは」
いくらなんでも直球すぎるだろが。
「なるほど、それでは!」
しかも電話終わるの早いし。
「で、どうだったんだ?」
「誤解でした!」
「ほほう。詳細は?」
「わかりません!」
「……は?」
「とにかくあれは浮気じゃないとユカさんが言いました。だから浮気じゃないのです!」
「おまえ、それ言われただけで信じて終わりか」
「もちろんです」
「思ったよりイロイロと簡単な男だな、おまえ」
「好きな女性を信じずして何が男か!」
「つい一分前まで自分がどんなことを口走ってたか一文字違わず言ってみろ」
「私はユカさんを信じています!」
「そんなセリフは一言も口にしてないだろ!」
「お騒がせしましたトメ君! では」
去っていきやがった……本当にお騒がせだよ、なんだったんだアイツ。
「ま、いっか。夕飯の仕上げを……あれ」
夕飯が、ない。
キリヤ、全部食ったのか?
「あいつ、なんだかんだで夕飯たかりにきただけじゃないのか?」
また作り直しだよ、全く……でも本当になんだったんだろ。
キリヤさんもたまには暴走するのです。
愛は人を狂わせるのです。
私も昔は……まぁ深くは語りませんが笑
皆さんもキリヤみたいな恋愛してくださいね!(よくわからない煽り
しかし久々に更新いっぱいした気がする^^
もっとやろ!




