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カカの天下  作者: ルシカ
835/917

カカの天下835「今年も二人で」

「あけましておめでとう!」


「誰に言ってんだカカ」


「日本の皆に!」


「喪中の人がいたらどうすんだ」


「喪中って、去年に不幸があった人だっけ」


「そうそう。めでたくないぞ」


「んじゃこう言う」


「ほう」


「あけたから、おめでたいことあるといいね!」


「ん、いい子だ」


 さて、こんな冒頭ですが皆様あけましておめでとうございます。トメです。


「んじゃ初詣いこか」


「ういおー」


 変テコな返事をするちっこい妹を連れて、いざ、いつもの神社へ。


「しかし珍しいな、初詣に誰も付き合わないなんて」


「皆、忙しいらしいねぇ」


 毎年毎年わりと騒がしい年始を送っている僕らだが、今年は違う。誰にも「行こう」と声がかからないばかりか、こちらから「行こう」と誘ってもただ一人として付き合ってくれなかったのだ。


「……ま、神社に行けば誰かいるだろ」


「さぁねぇ」


「気のない返事だな」


「本当に皆忙しいみたいなんだもん。サエちゃんはまだ大掃除してるらしいし」


 いつまでやってんだ。


「サユカンは家族で旅行だし」


 おー豪華な。


「トメ兄だけだよ暇なのは」


「人聞き悪いこと言うな。僕は妹の世話で忙しいんだよ」


「じゃー今現在、何か世話してる?」


「とりあえず暴発しないか見張ってる」


「私、暴発するの?」


「するだろ。唐突に」


「暴発したらどうなんの?」


「なぜか笑いが起きる」


「いいじゃん」


 まぁな。


「こっちも全滅だよ。テンは引越しするとか言ってるし、キリヤは元旦から仕事で死にかけてたし、姉はどっか飛んでったし」


「ユカさんは?」


「……彼氏が働いてる隙に元彼が初詣に誘うってのはいくらなんでも」


 もごもご言いながら歩く。そもそもあいつと喋るのは気がすすまないんだよなぁ。昔のこともあって関係が微妙なままだし。


「ゲンゾウ三兄弟は?」


「あのおっさんたちと初詣したがるおまえをちょっと尊敬するよ」


 誘う度胸、僕にはない。


「まぁ、そんなわけで寂しいだろうが堪忍しろ」


「や、別にいいけど」


 おろ。


「何、その意外そうな顔は」


「や、毎年激しい正月だったから、てっきり物足りなさそうな顔すると思ってたから」


「トメ兄がいるじゃん」


「僕に激しくなれと?」


 それは難しい注文だ。僕には懐からブリを出す能力や獅子舞でかみついて着替えさせる特技なんて無い。


「トメ兄? おーい、何考えてんの?」


「僕には何ができるんだろう」


「なんで正月早々に重いこと言ってんの」


「や、でもさ。他にも誰か、いたほうが」


「なにさ。トメ兄は私だけじゃ不満だっての?」


「は? や、全然そんなことはないけど」


「今までだって、ずっと二人でやってきたんじゃないの。今年も一緒にやってくんでしょ?」


「お、おお」


「私ら二人いれば充分でしょ」


「……そだな」


 何が充分なのか、いまいちわからないけど素直に頷く。そかそか、そうだよな。なんだかんだで二人で暮らしてきたんだ。今年だって――


「カカ、今年もよろしくな」


「うん」




 そして誰にも会うこともなく神社へたどり着き、おみくじを引く。


「お、大吉だ」


「やったねトメ兄」


「よかったですね、トメさん!」


 おお、サラさんじゃないか。そっか、この人は毎年巫女やってるから神社にくれば会えるよな。相変わらず紅白鮮やかでよく似合ってる。


「あけましておめでとうございます、トメさん。カカちゃん」


「おう、あけましておめでとうサラさん」


「おめっとー。ねね、サラさん。ちょっとこっち来て」


「なんですか?」


 無防備に近づいてくるサラさん。


 カカは突然、彼女の胸倉を掴んで――


「ポロリとな」


 その胸元を開いた!!


「…………ォウ?」


「…………ワォ」


 僕とサラさんは妙な音を出した後、顔を爆発させた。


「なななななななにをするんですかぁ!!」


「新年だからめでたくいってみた」


「私は全然めでたくないですよ! と、トメさん、見ました?」


「見ました! しっかり見ました!」


「そこは見てませんって言うところでしょう!」


「す、すいません、動揺して! カカ、おまえなんてことを!」


「トメ兄が『今年はよろしく』とか言うから仕方なく」


「ちっがぁう!! 意味ちっがぅ!!」


「ほら、トメ兄のおみくじにも『色恋――ポロリが見れる』って書いてあるよ。さすが大吉」


「んなわけあるかぁ!!」


 ……そうだよな、忘れてた。


 こいつ一人いれば充分すぎるほど激しい展開になるんだった。今年も今年で、どうなることやら。


 まぁ、今年もよろしく。


「ん、もっかいやればいい?」


「やらんでいい!」




 改めまして、皆さんあけましておめでとうございます。


 ようやく初カカ天です。いやー、私は一つ学びました。

 飲食業をやってる身で年末年始に引越しするのは阿呆なことだったんですね。

 いや、薄らとわかってはいたんです。でもいけると思ったんです。年末年始ぶっとおし営業とか雪がどっさり降ったりとか無ければチョー余裕だったはずなんです。畜生。


 ……なんのせクタクタであります。しかし、しかし! 今年はカカたちにとって大事な年! 中学に上がる年! レベルアップする年! こんくらいでヘバってるわけにはいきません!


 景気付けに今から飲んできます!(ぇ


 というわけで皆さん今年もよろしくお願いします! 乾杯!!(はや



 ……でも心残りが。


 私自身は初詣にいけなかった……つまり……巫女さんが見れなかった……明日の昼に行くつもりだけど、見れるといいなぁ……

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