カカの天下834「よいお年を!」
こんにちは、カカです。今年がもうすぐ終わりですね。なんだか実感がわきません。
だから実感をわかせるために、皆に今年を振り返ってもらうことにしました。大晦日の昼下がり、知り合いへの自宅訪問を開始したいと思います。
まずはテンカ先生。
「テンカ先生、こんにちは」
「あたまいたい」
こんな挨拶初めて聞いた。
「あの、今年はどうでしたか?」
「飲みすぎた」
こんな一年の感想も初めて聞いた。
「忘年会に18回も参加したのはさすがにやりすぎたぜ……」
……うん、そんくらいやったなら一年の感想が「飲みすぎた」でもいいかもしんない。
「じ、じゃお大事に」
「あーくそ、いてぇ年明けだぜ……」
自業自得。
あなたに習った言葉です。
さてさて、次は……お、向こうから歩いてくる二人は。
「キリヤ夫妻だ」
「まだ結婚してないわよ!」
「はっはっは、いつにします?」
「軽く聞くんじゃないわよ!」
仲良さそうで何よりです。
「ねーねーキリヤン、ユカさん。今年はどーだった?」
「はっはっは! 最愛の人と素晴らしい時間を過ごせました!」
「あーあーあー! だからちっとは恥らえって言ってるでしょう!」
「じゃあこう答えましょう! 今年は天国と地獄だと!」
なんのこっちゃ。
「年末だからと羽目を外しまくるお客との激闘で傷つく私! そしてそれを癒してくれる天使! 口が悪い客の攻撃にやられ! 帰ればその客より口が悪い天使が癒してくれる! 次から次へと来るお客に圧倒され! しかし帰ればなんだかんだで優しい天使!! 地獄の後には天国がある! 去年の天国は酒しかありませんでしたが、今年は愛する人がそこにいる! 私は幸せでした!」
「……キリヤン、酔ってる?」
「あー、年末の飲食店は激しいから疲れすぎておかしくなってるみたいよ」
そういやいつだったかトメ兄から似たような話を聞いた気がする。この時期のキリヤンは壊れると。
「ユカさんはどうだった? 今年」
「うん、ネタに困らなかったわ」
「……なんの?」
「ふふ、さぁね」
うーん、なんのことだろ。ユカさんとはそんなに喋ってないから、まだまだわかんないことがいっぱいだ。来年はもっと仲良くなれるといいな。
「ま、いっか。じゃ私のことは忘れてラブラブしてくださいな」
「はっはっは! 任せてください!」
「……そんなノリのまま年越せるの?」
「越せますよ! 多分店で洗い物をしてるあたりに!」
「はぁ、やっぱりか。せめて初詣は一緒にいこーね。あんたが生きてたら」
「はっはっは! 死んでもいきます!」
「死んだら行かないわよ、埋葬するわよ」
ユカさんてば本当になんだかんだで優しいよね。多分。
「妬ましい」
うわ何この黒いオーラ。振り向くとそこにはサラさんが。
「いいなぁいいなぁ、私も彼氏ほしいなぁ」
「その乳使えばいくらでも寄って来るでしょ」
「そんなんじゃ嫌なの。もっとロマンチックがいいの」
なんて贅沢な。
「そんなサラさんの残念な今年はどうだった?」
「残念って決め付けないでよカカちゃん! 私としては充実した一年だったんだからね? 家族とは仲良く過ごせたし、お仕事もいっぱいしたし」
「じゃあ男関係以外はよかったんだね」
「……来年の目標の方向性が決まったような気がするわ」
とぼとぼと去っていくサラさん。またトメ兄を狙ったりするんだろうか。はてさて。
とりあえず彼女は置いといて、おたく訪問を続けよう。
「誰がオタクよっ!」
そういうわけでやってきました、トメ兄オタクのサユカンち。
「トメさんの……あぁ、うん。それならいいわ」
いいんだ。
「サユカン、今年はどうだった?」
「残念な年だったわ……」
「そうなんだ」
「今年もトメさんと結婚できなかった」
しばらくできないはずだよ。法律的に。
「明日こそは!」
来年じゃなくてまず明日なんだ。すごいなぁサユカン。このパワーは見習いたい。
「んじゃねサユカン」
「え、もう行くの? あがっていきなさいよっ」
「なんでさ」
「これだけしか喋らないのは寂しいじゃないの」
「……サユカン、この一年で少し素直になったかもね」
まぁ悪い気はしない。ちょっとお邪魔していこう。
――お茶を一緒して、しばらく喋って。適当なところでお暇し、次の目的地へ。
「あれーカカちゃん。大掃除を手伝いにきてくれたのー?」
「そんな面倒くさいことはしない」
ていうか言葉通りに年末大掃除してるんだね。まぁ家主があのサカイさんだからなぁ。
「ねね、サエちゃん。今年はどんな年だった?」
なんとなく予想していたことではあるけど、サエちゃんは満面の笑みで答えてくれた。
「お母さんと一緒に、すごく幸せな年を過ごしたよ」
そうだよね、念願のお母さんと一緒に過ごして、一緒に年を越せるんだもんね。いい一年だったに決まってるよね。
「もちろんカカちゃんとサユカちゃん、トメお兄さんと一緒だったのも大きいよー」
「むしろそれが全てだよね」
「そうかもねー」
快く頷いてくれるサエちゃんが大好きです。
「じゃ、サカイさんによろしくね」
「あいあいー。よいおとしをー」
サエちゃんの笑顔も見納めしたし、さてさて帰宅。
その途中。サエちゃんの笑顔を脳内でリピートする。
幸せな時間だ。
可愛かったなぁサエちゃん。最後の笑顔も最高だったなぁ。
……最後? サエちゃん最後になんて言ったっけ。
あ。そういえば私、皆に「よいお年を」って言い捨てるの忘れてた。どうしよう。もう一度戻るのは疲れるなぁ。ん? おお、いいもん見っけ。
「おーいタケダ」
「うおお、カカ君!?」
冬休み入ってしばらく会わなかったからって、そんなに驚かなくても。
「タケダは今年、どうだった?」
「素晴らしい年だった! なぜなら! こうして声をかけてもらえる程の関係を、カカ君と築くことができたのだから!」
「そっか、よかったね。じゃあ私からお願いとかされたら嬉しい?」
「ああ、嬉しいとも! 頼み、頼まれる関係……それは素晴らしい友人関係ではなかろうか!?」
「うんうん、助け合いは必要だよね」
「そうともさ!」
「じゃあ今から私の代わりに『よいお年を』って言ってきて」
「む? どこへだ?」
「テンカ先生のうちとキリヤンちとユカさん……は病院か。あとサラさんちとサユカンちとサエちゃんち」
「なぜそんなに沢山!? というか、そもそも根本的になぜそんなことを!?」
「言い忘れたから」
「め、メールで済ませればいいのでは」
「文章は心がこもらないでしょ。直接言わないと」
「俺が言ったらカカ君の心は直接伝わらないのでは」
「じゃあ私になったつもりで感情的に情熱的に心と愛と変を込めて言ってきてよ。あ、ちゃんと『カカから』って言ってよね」
「……えー」
「やれ」
「はい」
よかったよかった。これで問題ない。うちへ帰ろう。
「ただいま」
「おぉカカ。おかえり」
そういやこの人に聞いてないや。
「ねぇトメ兄、今年はどうだった?」
「んー? おまえはどうだったんだよ。今年、楽しかったか?」
「うん」
「なるほど。じゃあ僕の一年は満足いくものだった、ってことだ」
「トメ兄、それはシスコンにも程があるお?」
「ほっとけ」
「ほっとけないお」
「ほっとけ!!」
皆さん、よいお年を!
もう年が明けますね。
この一年。毎日更新は止めましたがなんとか書き続けることができました。最後くらいクリスマスから連続で書いてやろーと意気込んでいたものの、予想以上の忙しさで余裕が微塵もありませんでした。ヘトヘトです。
事情があるから仕方ないものの、飲食業やってて年末に引越しするのは自殺行為だと学びました。ハイ。
まぁ今月だけの話ではないですね。今年は全体的に仕事率が高く、こちらに力を注ぎまくることができませんでした。その分、カカたちに愛は注いだつもりですが笑
まだこれからも更新は不安定なままだと思います。とりあえずカカたちが中学に上がるまではなるべく頑張って書きたいと思っているので、どうか来年もお付き合いいただけたら嬉しいです。
また、この一年こうやって書き続けられたのも、やっぱり応援してくれる方々のおかげです。感想を返信する余裕もないのが心苦しいですが、この場で皆様にお礼を申し上げます。カカたちを見守ってくれて本当にありがとう。
私もキリヤと同じ年越しになりそうですが、皆様はどうかよいお年を!




