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カカの天下  作者: ルシカ
831/917

カカの天下831「さわがしイブ」

 どうも、カカです。


 先に言っておきますが、ここは夢の中です。なぜか知らないけどわかるんです。そういうときってあるよね? いつもは記憶とか曖昧なんだけど、今日に限っては珍しく寝る前の記憶がありました。


 そう、今日はクリスマスイブ。そして明日はクリスマス。


 今夜の夢は、もしかしたらサンタさんが見せてくれるパラダイスかもしれないのです!


 私はゆっくりと、その夢の世界を見渡しました。


 そして、見つけました。


 その大きなツリーを。


『イッツ・パラダイス!!』


 ぎっしりと桃のような実が生っている木。


 桃?


 いいや違う。実は全てジョーイ&マイケルの顔だ!! まさにイッツ・ナイトメア!! 


『HAHAHA! 聞いてくれよジョーイ!』


『どうしたんだいマイケル?』


『俺ってばクリスマスで嬉しすぎて屁をこいちまったぜ!』


『それがどうしたんだい?』


『HAHAHA! 屁の勢いが強すぎたせいでこの木の実がことごとく落下していくのさ!』


 落ちてくる。ジョーイとマイケルの生首がボトボトと。そして高笑いしながらこちらへ転がってくる。無数に。


「い、いやああああああああああああ!!」




 ……どうも、トメです。


 今夜はクリスマスイブ。なのでサンタ代わりでカカへプレゼントを置きにきました。

「うーん、うーん、なまくびあっちいけ」


「なんちゅー夢を見とるのだこいつは」


 今夜の夢を楽しみにしていたはずの妹はどうやら悪夢の真っ最中らしい。哀れな。


「さて、プレゼントを置いて……」


「なまくび……なまくび……」


 どうしよう、哀れにも程がある。助けてやりたい。そういえば、寝てる間に聞こえた声で夢が左右されることがある、と何かで読んだことあるぞ。よし!


 僕はカカの耳元で囁いた。


「ほっほっほ、サンタじゃぞ。助けに」


「来ないぞ」


「誰だ!?」


 余計な言葉を付け加えたのは――




 どうも、夢の中のカカです。ただいま無数の生首に追いかけられています。


「助けて、サンタさーん!」


 私の声が届いたのか、夢の世界に激震が走りました。


 そして生首は、すべてサンタさんの顔になりました。


「ほっほっほ、サンタじゃぞ」


「助けに来ないぞ」


『ほっほっほ』 


 絶望的な大合唱。泣きそう。




 余計な言葉を付け加えたのは――いつの間にか侵入してきていた姉だった。


「なにしにきた」


「サンタをしに」


「サンタを死に? 殺したのか」


 前々から人間離れしてると思ったが、ここまできたか。


「そして罪滅ぼしにプレゼントを代わりに配っていると」


「弟君、しばらく見ないうちに想像力豊かになったねぇ」


「夢を忘れたら人間終わりだからね」


「うんうん、そだね。というわけで、そんな夢の真っ最中なカカちゃんに、刺激というプレゼントをあげよう」


 姉は再びカカの耳元へ口を寄せ、囁いた。


「ぼきゃーん」


「何の呪文だそれは」




 夢の中のカカです。


 今、サンタさんの生首に追いかけられていたのですが。


 ボキャーン!! なんか生首が次々と爆発し始めました。


 赤いものとか黒い破片が飛んできます。


 私、もう泣いています。

 



「お、おい。なんか泣き始めたぞカカのやつ」


「むう、恐いものが全部ぼきゃーんと吹っ飛んでくれればいいと思ったんだけど」


「カカもろとも吹っ飛ばしてるんじゃないか?」


「かもねぇ」


 妹を泣かしたわりにはどうでもよさそうに言って、姉は何やらごそごそと取り出した。


「これがカカちゃんへのプレゼントだよ」


「……なに、それ」


「ブリ。美味しいよ」


 姉が取り出したのは1メートルを軽く超える魚。信じられないことに生きている。姉に尾を掴まれながらもビッチビッチと暴れている。 


「おまえ、それ枕元に置くつもりだったのか?」


「新鮮第一」


「貰う人のことを第一にしてやれよ」




 夢の中のカカです。


 爆発したサンタさんは全て、何故か顔だけそのままな人面魚になって復活しました。


 そしてビッチビッチ跳ねながら私を追いかけてきます。


 神様。私、なにか悪いことしましたか?




「ごめんなさい……ごめんなさい……」


 ついにカカが寝言で謝り始めた。よーわからんけど色々とヤバイのではなかろうか。


「とりあえずブリは絞めて黙らせたよ」


「黙ってれば枕元に置いていいもんでもなかろうが。台所にしまっときなさい」


「えーでも。起きて枕元にあるからビックリするわけで」


 そら起きた瞬間に巨大なブリとご対面すれば驚くだろうさ。


「トラウマになるし生臭さが部屋に移るから却下」


「ちぇ」


 とりあえず納得してくれたのか、ブリをしまってくれる姉……どこにしまったのかは気にしないでおこう。


「しかし弟君のプレゼントはなかなかに粋だね」


「そだろ」


「なにせわたしたちが夜更かししまくって作ったんですからねっ!」


「頑張ったよねー私たち」


 あら、なぜこんなところにサエちゃんとサユカちゃんが。


「どうやってうちに入ったんだ?」


「鍵、あいてましたよー」


「きっとカカすけが空けておいたのよ。サンタさんがきてもいいように」


 小六にしては夢見がち過ぎる気もするが、なかなか可愛いことするじゃないか。


「で、何しに来たんだ?」


「ふふふー、このサユカちゃんの格好を見ればわかるでしょー?」


 サユカちゃんの格好……


「エロいことしにきたの?」


「お義姉さんは黙っててくださいっ!」


「おりょ? あたしってば何やら漢字的に不思議な響きで呼ばれたような」


 ともかくサユカちゃんはいつかのクリスマスで見たサンタ服を着ていた。なにやら露出が多くなってる気もする。


「つまり、トメさんに頼まれてわたしとサエすけが作ったプレゼントが贈られるのを見届けにきたのですっ!」


「それでわざわざサンタの格好を?」


「はいっ!」


 この子、もしかしてコスプレが楽しくなってきてるんじゃないだろうか。


「ほほー。おねーさんもサンタ服着たいけど年齢的にアウトだわ。でもサエちんは普通の格好だね」


「あんな寒い格好できませんよー」


 相変わらずだなサエちゃん。


「それにしても、なんでカカちゃんは苦しみながら寝てるんですかー?」


「悪夢を見ているらしい。耳元で何かを囁くたびにおかしな寝言を漏らすんだ」


「それは面白そうですねー」


「わたしもやるわっ!」


 なんという友情。


「む、あたしも負けてられないね」


 姉が加わる。


「ふふ、俺様も混ざるとしよう」


 げ、父さんまで来やがった。


「あらあら、困った君たちだこと」


 母さん!? うあサンタ服似合いすぎ。


 ――意味のわからない揃い方をした彼女たちは、皆でカカの耳元へ囁くことに。


「一番手、サエ。いきまーす。コホン……」


 サエちゃんはいつもの純粋な笑顔で、こう言った。


「汚いお金」


 一体どんな狙いがあるのだ君は。


「二番手、サユカいきますっ」


 元気いっぱいサユカサンタ。


「愛、覚えていますか?」


 なんのタイトルだ。


「三番手、あたしがいくぜぃ」


 姉はもうやめたほうが……


「ムキムキふぇすてぃばる」


 ほら、ろくなこと言わねぇ。


「四番手、俺様が行く!」


 父さんよ、ここらで救いの手を頼むぜ。


「暑苦しい裸の侍が腹筋を三千回した後に『げろげーろ』と叫ぶ」


 んなこと言うから嫌われるんだぞアンタ。


「最後はママだね。ふふ」


 母さん、あんたくらいはマトモに頼むぞ。


「よいしょっと」


 母さんはカカを起こさないようにゆっくりと布団に入り、そのまま添い寝する格好となった。優しく娘を抱きしめて、耳元で囁く。


「よしよし、大丈夫、大丈夫。なんにも恐いことはないのよー」


 次第に安らかになっていく寝息。数秒前まではとても絵にできない顔色だったのが嘘のようだ。


「あなたを救ったのはママよー」


「まま……だいすき……」


 僕らの母ながら上手いこと囁いたなオイ。


「むぅ、母め。オイシイとこを独り占めしたな!? あたしだってカカちゃんに大好きとか言われたい!」


 無理だろ、ブリ持ってくるような姉じゃ。


「ユイナさんはこのままカカちゃんと一緒に眠って、自分がサンタさんからのプレゼントになるつもりですねー?」


「むっ、なによそれ。そんなことされたら、わたしたちのプレゼントのインパクトが薄れるじゃないのっ!」


「あぁ妻よ! その勝ち誇った顔も美しいが俺様にもどうか見せ場を!」


 なにがなにやらワカラナイ展開になってきた。


 そして――


「ほら、弟君も飲みなよ」


「なんで忘年会が始まってんだ」


「いいじゃねぇか。可愛い妹の笑顔を肴に飲むのもオツってもんだろ」


「なんでテンまで来てるんだ」


「そりゃおめぇ、酒がオレを呼んでいたからだよ」


「ふへへ、テンカせんせーもサンタ服着てくらさいよーっ」


「うあサユカ! てめぇ酔ってるな!?」


「ほらほら、わたひのかしてあげまふからぁっ」


「ここで脱ぐな!」


「……くー」


「ふふ、サエ君もおねんねだね。可愛い寝顔」


「妻よ、好きだ! 一緒に飲もう!」


「はいはい、酔っ払っちゃって。もう」


 こんな大騒ぎでも起きないカカ。


 さて、どんな夢を見ていることやら……


「はっはっは、忘年会の会場はここですか?」


「キリヤさん、声が大きいですよ! 深夜なんですから」


「お皿の割れるような声よりはマシですよー」


「なんですってサカイさん!?」


「あなたのこととは言ってませんよー。自覚あったんですねー」


「キー!!」


「おさらじゃなくておさるだったんですねー」


「このキリヤ、僭越ながら審判をさせていただきます。レディー、ファイッ」


「おーおー、サラもサカイさんも頑張れぃ、やれやれぃ! 姐さんはどっちに賭ける?」


「やっぱサカイちゃんが勝つっしょ。お?」


「じゃーん! 良い子は寝る時間にも関わらずクララ登場です!」


「クララちゃん、あたしと飲もうぜぃ。桜の酒とかあるよん」


「クララ一気飲みです!」


 こんな超騒ぎでも起きないカカ。


 ……ほんと、どんな夢を見ていることやら。




 お話は翌朝のクリスマスへと続きます。


 トメが依頼した二人というのはサエちゃんとサユカちゃんでしたとさ。正解者なし! まぁ普通すぎて誰も予想してませんでしたね笑


 プレゼントの内容、そしてカカの夢の結末は明日のお楽しみで。

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