カカの天下83「回転寿司の食べ方」
「ごちになりますっ!」
「おーう」
こんばんは。トメです。
給料日ということで、僕は気前よくカカと愉快な仲間達を回転寿司屋に連れてきていました。
と言ってもサユカちゃんは遅れてくるそうで、今は僕とカカとサエちゃんの三人しかいません。
別に隣に座ってるわけじゃないけど両手に花だなぁ。両方ともトゲと毒がありまくる花だけど。
さて、サユカちゃんはもうすぐ来るから先に食べていいとのこと。どれを取ろうかなーと流れてくる寿司ネタに視線をこらす、と。
「すいませーん。たまごください」
「すいませーん、いくらください」
……む。
「すいませーん。納豆巻きください」
「すいませーん、うなぎください」
むむむ!
「待たんかおのれら。ここは回転寿司屋だぞ。なぜに直接に注文ばっかりするのだ」
「だって時間たったお寿司なんか食べたくないし」
「やっぱり握りたてがいいかなぁと思いまして」
「おまえらなぁ……子供なんだからさ、こう、流れてくるお寿司を眺めながらどれにしよっかな〜って迷って楽しめよ」
「おいしくないの食べてなにが楽しいの」
うあ、正論にも程がある。なんかムカつく。
「まぁ、結局は食べたいもの食べるわけですし、それならおいしいのを食べたいじゃないですか」
「……いーよいーよ、僕は楽しく選びながら食べるから。ちぇ」
なんとなく居心地悪くなっていじけながら、僕は流れてくる寿司しか食べないと決意する。
そんな僕にも構わず、二人は注文していく。
「すいませーん。馬の串刺しください」
馬刺しな。串って入れるだけでものすごい意味に聞こえるな。
「すいませーん、河童捕まえて握ってください」
ああ店員さん困ってる。普通にかっぱ巻きくれればいいんですよー。
「すいませーん、トロシックスください」
あああ店員さん混乱してる。普通にトロくれれば……ってなんであの店員さんポケットからロトシックスの紙取り出そうとしてんだ。ていうかなんで持ってるんだ仕事中に。肌身離さず持って当たるように祈ってるのか。うーん……どりーぃむ。
「ごめん、遅れちゃったーってなにあんたらっ」
お、サユカちゃんの登場だ。
「せっかくの回転寿司なのになんで普通に注文しまくってるのよっ」
「だよなぁ!? おかしいよなこいつら。いやぁ、僕と同じ意見の人がいて嬉しいよ!」
素で喜んだ僕の言葉に、なぜかサユカちゃんは爆発した。
「そそそそそっそそうですよねっ!!! 回転寿司はやっぱり回転しているから押すし引くしじゃなくてオスのしのお寿司ですよねっ!?」
……前から思ってたけど、この子はなんでいきなりぶっ壊れるんだろう?
「トメ兄、いきなりサユカンを破壊しないでよ」
「あれ、これ僕のせいなのか。てっきり自然現象かと」
「うわ、にぶっ」
「にぶいですねぇお兄さん」
「……なんか知らないが悪かったな」
「そんなっ、トメは悪くないよっ」
……あれ、呼び捨て? サユカさん呼び捨てっすか? ま、まぁいいけどさ。
「とりあえず座って。さ、遠慮しないで食べな食べな」
「――ど、どどどどうしようご馳走になるのはいいんだけどどのお寿司食べればいんだろうそうだどうせならここで少しでも好印象になるものを食べるべきよでもお寿司で女の子らしいのってどれよどれを食べればいいのトロは論外高いから嫌な女と思われる玉子はなんか安っぽい女と思われたら嫌だしいくらは粒粒してるし(?)女の子っぽいお寿司はなによどうするわたしどうするわたしどうするわたし」
……? なんか小声でぶつぶつ言ってるけど聞き取れないなぁ。
と、サユカちゃんが動いた。
手を伸ばした先には……チョコレートケーキ!!
「うわ、邪道だ」
思わずぼそっと呟いた一言で。
爆発以降、周囲に熱気を振りまいていたサユカちゃんは……なぜかプシューとしぼんだ。
……あれ、やっぱこれ、僕のせいか。
その後、僕はカカとサエちゃんにたっぷりと怒られた、なんかデリカシーがどうとか乙女心がどうとか。
まぁ、結局何を言いたいかよくわからなかったけど。
……そこ、鈍いとか言うな。