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カカの天下  作者: ルシカ
819/917

カカの天下819「いったい何だったんだ→答え、誕生日」

 こんにちは、カカです。まず、これは相談があってサユカンを呼び出したときの話です。


「何よ、改まって」


「サユカンってエロいよね」


「帰る」


「ちょっと待って!」


 サユカンを前にして思わず言っちゃっただけだって!


「まったくもう、何よっ!」


「サユカンも知ってるでしょ? もうすぐサエちゃんの……」


「誕生日ねっ」


「違うよ、私と二人の結婚記念日だよ」


「帰っていい?」


「なんで帰るの!」


「見たい番組があるのよぅ」


「そんな番組よりも面白い話を私がしてあげるから!」


「へぇ、じゃお願いしようかしら」


「おっけー」




『むかーしむかし、あるところに素っ裸のサユカンとトメが幸せに暮らしておりました』




「終わり」


「ぶっ飛ばすわよっ!?」


「え、面白くなかった?」


「面白いとかいう以前の問題よ!」


「わかったよ。じゃあこんな話で」




『むかーしむかし、あるところに素っ裸の教頭がいました』




「終わり」


「ただの変態じゃないの!!」


「はいはい、わがままだなぁ。じゃこれで」




『むかーしむかし、みんな素っ裸でした』




「終わり」


「ただの事実じゃないのっ!!」


 あ、服が無い時代はそれが当然か。


「じゃあお礼として私の話に付き合って」


「聞いてないわね……はいはい、わかったわよ。とにかくサエすけを喜ばせようっていうんでしょ?」


「そそ」


「そういうことなら協力するのもやぶさかではないけど」


「じゃあ最初から協力してよ」


「結婚って聞いて萎えたのよ」


「え……サユカン、もしかして私のこと好きなの? だから嫉妬して」


「んなわけないでしょ! バカらしくてよっ!」


「私の結婚履歴をバカにするなぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「ぅえぇ!? は、はい。すいませんっ」


 ふぅ、思わず本気で怒鳴ってしまった。 


「とにかく何をしたらいいかな」


「サエすけの喜ぶことでしょ? 何か面白い格好でもすればいいんじゃないかしら。しょっちゅうわたしを着せ替えて遊んでるから、好きなんでしょそういうの」


 や、私も好きだし、どちらかというとサユカンで遊ぶこと自体が好きなんだと思うけど。


「よし、私サエちゃんのためなら一肌でも二肌でも脱ぐよ」


「脱ぐんじゃなくて着る話をしてるのよ」


「あ、そっか」


「わたし上手いこと言ったわよねっ」


「え、うん。そうかも」


「よし、これ今度トメさんの前で使おーっと。ウケるかなぁ」


 恋する乙女は頑張るねぇ。


「それで、どんな格好すればいいかな」


「もちろんエロい格好よっ」


 サユカンが私に今までの復讐をしようとしている気がする。


「でも私、サユカンみたいに胸とかお尻とかボリュームないよ?」


「それがイイっていう人が増えてるらしいわよ、こないだニュースでやってたわ。社会問題なんだって」


 そうなのか、それはタイヘンだ。いやヘンタイか。うん、私も上手いこと言った気がする。


「ん、まぁサエちゃんが喜ぶならなんでもやるけど」


「そう、それが一番大事よ! さぁどんな格好をしましょうか、意外性を突いてメイドとかいいかも。サンタにはまだ早いし……でもわたしが前に着た衣装とかもあるのよね」


 やっぱりサユカンは私に復讐しようとしている。


 まぁいいや。それでサエちゃんが喜んでくれるなら!


「あ、でもハロウィンとかしてないわよねっ」


「ふむふむ」


「夏祭りがいまいち盛り上がらなかったから、浴衣とか」


「ふむふむ」


「あっ! あのサカイさんの娘だし、ニーソックスとか好きなんじゃないかしらっ」


「ふむふむ」


「黒かしましまがイイ! ってこの間サカイさんが語ってたわ」


「ふむふむ」




 当日。


「カカすけ……君……っ!」


「とりあえず全部着てみた」


 必要な部分だけを切り取って装備したこの衣装。右腕にメイド、左腕に浴衣、右足に黒ニーハイ、左足にしましまニーソ、胴体はサユカンおさがりのエロサンタ服(サイズ調整済み)で、上はハロウィンのかぼちゃをすっぽりと被った。


「衣装を切ったのっ!? もったいないわよっ!!」


「サエちゃんのためならこれくらい容易い。どう? かぼちゃ仮面って感じ?」


「妖怪かぼちゃ女って感じよ」


 妖怪上等! クララちゃんの仲間みたいなもんだし、サエちゃんにはウケるはず。


「さて、早速サエちゃんのところへ……」


「大変だ、カカ!!」


「あれ、どしたのトメ兄」


「その格好にツッコむのは置いといて……いまサカイさんから連絡があったんだが」


『さっき、サエから電話があったんです。いいえ、正確には電話させられたんでしょう。サエは言いました、「さらわれる」と!』


 ――サエちゃんが、さらわれた?


 この誕生日というめでたい日に?


「……へぇ」


 舞い上がっていた熱が冷めていく。そして代わりに、どす黒い炎が私の中で生まれた。




 すぐに動いたのはもちろんサカイさん。独自の情報網を最大限に使い、犯人の居場所特定を急ぐ。


「どう? ゆーた」


「ひっかかりません!」


「く……こうなったら使うしかないわね、サエちゃんファンクラブ出動よー! 会長たる私の名の元に!!」


 極秘に訓練されていた特殊部隊、サエちゃんFCは見事な働きを見せ、見事に犯人の根城を割り出した。


 待機していた警察が動く。しかしシュー君からの情報によると動きが遅く、即出動というわけにはいかないようだ。


「私、待ってられない」


「お、おいカカ」


「お姉、いる?」


 シュバ!


「ここに」


「行くよ」


「承知」


「おい待て! 無茶だ! あとせめて着替えてから……おい!」


「ま、待ってよ、わたしも行くわっ」


 お姉、トメ兄、サユカンを引き連れて犯人へと突撃する。もちろん私は着替えていない。


「おう、待ちな」


「誰の許しがあってここを通る気だ?」


 しかし道中で立ちはだかる謎の男たち。なんだかヤクザの下っ端集団のようだ。


「お姉」


「応」


 一分もかからずケリはついた。


 走る、走る、走る。


 進んでしばらく、またもや私たちの行く先を塞ぐ邪魔者たちが現れた。


「誰? なんか用?」


「…………」


 問いかけても返事をせず、ただギラギラした目で凶器と狂気を見せびらかす老若男女。


「こりゃさすがにあたしでも手がかかりそうだね」


「おい姉、大丈夫か?」


「ちょっと時間かかりそうだから、先に行って。トメ、カカちゃんとサユカちゃんを守ってあげなよ」


「……さっさと逃げ帰りたいところだが、ここまで来たら仕方ない」


「おし、行きな」


 戦が始まった。私たちはその戦場を駆け抜ける。お姉が守ってくれるから左右は気にする必要なし。


 やがて背中に戦闘音が聞こえなくなった頃……


「うへへえへ、なんか可愛らしい子がきたぞぉ」


「男はいらねぇが、子供二人は上玉だな」


 今度は変態集団が現れた。


「うえへへえへ、ゴーゴーゴー!!」


 しかもいきなり襲い掛かってきた!


「く、僕が止める! おまえらは早く逃げろ!!」


「トメ兄、でも!」


「あいつらにとってはおまえらが大好物だ! だから居てもらっちゃ困る、早くいけぇぇぇ!」


「く……行くよサユカン!」


「いやぁっ! トメさんが、トメさんがイケナイ道にぃぃぃぃぃっ!」


「大丈夫! 敵は多分そういう趣味じゃないから!」


 一人、また一人と仲間を失っていきながらも進んでいくその道に――


「ふははははははははははは!! 我こそはかぼちゃ仮面!」


 私と同じような格好をした阿呆が現れた!


「仕方ない……サユカン、待ってて。あいつは私が倒す!」


「カカすけっ!」


 先手必勝、予備動作なしで駆け出し、速度は一息で最高速へ。銃弾のように突進する。


「ふははは! かぼちゃパーンチ」


 間抜けなネーミングのくせに鋭い拳が私の側頭部を狙ってくる。だから私はそのまま当てさせた。貫かれ、脳漿が飛び散る――無論、かぼちゃの。


 接敵直前でソレを脱いだ私は相手の左方に回りこみ、死角から首筋を狙って飛び回し蹴りを放った。実はあのハロウィンかぼちゃ、被ると視界が極端に狭まる――当たり前? うるさい。ともかく先にそれを脱いだ時点で私の勝ちは決まっていたのだ。


 そう、思っていた。


「止められた!?」


 見えていないはずだった、しかし掴まれた私の足、まずい、このまま振り回されると――


「ふっ!」


 掴まれた足を軸にして身体を捻り、無理矢理に逆の足で蹴りをもう一度!


「あぅ!」


 相手の頭部をかぼちゃごとぶっ飛ばすつもりだった、でも壊れたのは私の脚……この人、かぼちゃに金属を仕込んでいる! バカだ!!


「うぅ……くそぅ」


 身動きが取れなくなった……もう終わり? そう思った、そのとき!


「えーいっ!!」


 なんとサユカンが近くに落ちていたコンクリートの瓦礫をかぼちゃ仮面の股間に投げつけた!!


 クリーンヒット! かぼちゃ仮面は死んでしまった。


「はぁ……はぁ……助かったよサユカン」


「こ、恐かったよぅ……! も、もうっ! 無茶しちゃダメでしょカカすけ!」


「ごめん……でもこの人、本当に死んじゃったんじゃ」


「カカすけが殺されるよりマシよっ!!」


「サユカン……ありがと……」


「さ、行くわよ。サエすけを助けにっ!」


 サユカンは強いな。私も負けてられない!




 ――そして私たちはたどり着いた。


 サエちゃんの前に!


「ううぅー! やーめーてー!」


「えへへ、えへへ、やわらかーい」


「やーん! そこはダメー」


「ええのんかー、ここがええのんかー!」


 目の前に広がる、衝撃的な光景。


「ああ、カカちゃん! 助けに来てくれたんだねー!」


「なにぃー!?」


 状況を簡単に説明しよう。


 うん。


 サエちゃんが、前に一緒に住んでたおばさんに触られまくっていた。


「助けてー! さわられるー!!」


 さわられる、さらわれる。


 よくある間違いでした。




 後々、全てを把握したらしいサカイさんに話を聞いてみると。


「……え? いやあの、サカイさん情報網でも引っかからないほど大事件だったんじゃ?」


「いやー、超個人の犯行でしかも身内のじゃれあいだけだとひっかかりませんよー。サエちゃんファンクラブはご近所さんですから引っかかったみたいですー」


「途中で出てきたチンピラは?」


「たまたまあそこを縄張りにしてたみたいですー」


 後から警察さんが一掃したらしい。


「途中で出てきた犯罪者集団は?」


「たまたまあそこを溜まり場にしてたみたいですー」


 全部お姉が片付けたらしい。


「途中で出てきた変態は?」


「たまたまあそこでオフ会してたみたいですー」


 トメ兄は心に深い傷を負ったらしい。


「途中で出てきたかぼちゃ仮面は?」


「たまたま似たような格好をした子が現れて嬉しくなっちゃったらしいですー」


 入院らしい。


「……サエちゃんは?」


「おもしろい話を聞かせてもらったーと喜んでますー」


「なら、まぁ、いっか」


 なんとも人騒がせな誕生日事件でしたとさ。


 めでたしめでたし。




 ……我ながら「いったい何だったんだ」と言いたくなるものを書いてしまった。


 たまにはこういう寒気がするほど定番な展開を滅茶苦茶に書くのもいいもんですね、なんて思うのは私だけでしょうか笑 なんか遊んだーって感じがいっぱいです。


 誕生日なんだかハロウィンなんだかお祭りなんだか事件なんだかよーわからん日でしたが、サエちゃんは喜んでくれたのでよしとしましょう。


 というわけで二人とも、誕生日おめでとう&結婚記念日おめでとう!

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