カカの天下818「うわさのトメさん」
こんにちは、トメです。
最近寒くなってきましたね、そろそろコタツ出さなきゃなぁと思いつつ、まだそこまでじゃないしーなんて面倒臭がっている僕は今、畳の上でゴロゴロしながら雑誌を読んでいます。
「ねートメ兄」
「んー?」
同じく近くでゴロゴロしながら漫画を読んでいるカカが話しかけてきた。
「こないださ」
「おう」
「私が大人がどうとか言ってたときにさ」
「うん」
「トメ兄、私をずーっと監視する、みたいなことを言ってたよね?」
「あー」
そんなことも言ったなぁ。しかしこの雑誌に載ってるパーカーいいなぁ。
「それを学校に言いふらしたら流行った」
「へー」
色も好みだし、値段もお手ごろ。買っちゃおうかなぁこのパーカー……ってぇ。
「カカさん? いまなんておっしゃいました? もう一度お願いします」
「それを学校に言いふらしたら流行った」
「綺麗に言い直してくれてありがとう! なんてことしやがるこのパカ!!」
「ぱか?」
しまった。パーカー見てたからつい。
「や、そんなことはどうでもいい! ただでさえおまえの誕生日で色々と噂がたってしまった僕になんて追い討ちをかけるんだ!」
「なにさ、流行ってるっていうのはいい意味で言ったんだよ?」
「……例えばどんな風に流行ってるんだよ」
「んとねヤナツがサエちゃんに向かって『俺に君をずっと監視させてくれ!!』って告白したり」
「……サエちゃんの返事は?」
「『しねー』って」
すごい直球だ。剛速球だ。や、監視とか言われたら当然かもしれんが。
「つまりそんな風に流行ってるんだよ」
「ものすごい物騒なモノを流行らせてしまった気がする」
「ほんとだよ。どうしてくれるんだよ」
「流行らせたのおまえだろうが!」
思わず謝りそうになってしまった。
「あと私も言われたよ」
「何を」
「ずっと監視してやるって宣言を」
「誰に!?」
「出素夜さん」
「誰ですよ!? じゃなくて誰デスカ!」
「ですよですよ」
「そうですかそうですか」
なんでもいいや。
「んで、おまえはなんて答えたんだ?」
「デスヨ!!」
「……返事は?」
「デスヨ!!」
「その人、地球人じゃないのか?」
デスヨとしか喋れないんだろ。
「とりあえず肩を落として帰っていったよ」
「意思疎通できたんだ。やっぱ宇宙人か」
む? つまりカカも宇宙人ということになってしまうか。まぁ似たようなものだからいいや。
「そしてその流行は街へまで広まった」
「マジか」
「パカみたいだよね」
「蒸し返すな」
ちょっと恥ずかしいだろがパカ。
「とにかく。勇気を出せなかった各地の男子たちが、その言葉を支えに告白してるんだよ」
「絶対にそれ言うほうが勇気いるだろ」
「そして皆、逮捕されていく」
「当然だ」
「なんてことしてくれたんだ!!」
「おまえがな」
「でも成功例もある」
「ほほう」
「あの有名なジョーイがマイケルに告白したんだよ」
なぜか聞いたことはあるが、どんな人だったか思い出せない。もしかして知らないのかも?
「そのときの会話はこうだよ」
『ヘィ、聞いてくれよマイケル!』
『オゥ、どうしたんだいジョーイ?』
『実はね、僕は一生君を監視しようと思うんDA!」
『ホワッツ!?』
『オゥイエ!』
『ホワイ!? ナッゼー!? ドシテー!』
『なぜなら君のことが好きだからサ、アイラビュー』
『HAHAHA!』
『HAHAHA!』
「めでたしめでたし」
「え、ちょっと待て。それって結局どうなったんだ!?」
「とにかくそんな風に流行ってるんだよ。どうしてくれる」
「おまえがどうにかしろよ」
「……じゃあ、私が新たな流行を作るしかないか」
「それだ。何かいい告白言葉を考えろ」
カカはしばらく黙考した後、こう言った。
「パカ!!」
「しつけーよパカ!」
流行って難しいね。
さぁ皆さんも告白のときには「おまえを一生監視してやる!」と言いましょう。
私は責任を負いません。
パカ!!