カカの天下817「あなたを理解したつもり」
どうも、トメです……はぁ……
あの盛り上がりを見せたカカの誕生日会ですが、思い出したくないので回想も後日談もしません。とにかく次の日……え、そのときのことが聞きたい? うるさい、他の人に聞け。僕は知らん。あの日はきっと僕は寝てたんだ、夢見が悪かったんだ、超悪夢だったんだ、だから何もしてないし何も知らないんだ。むがー!!
さて、むがむがしたところで今日の話だ。カカがもらった誕生日プレゼントを整理していたので、なんとなく僕も手伝ってみることにした。
「……なんだコレ」
いきなり目についたのは、『変』と書かれた兜。
「なんか知らない一般の人からもらった」
「人気者だなおまえ」
「本当は『愛』とか『恋』とか書いてあるらしいんだけど、珍しい誤植を見つけたからってくれたの」
知らない一般の方にしては的を得たプレゼントだ。
「あとこれは……高級石鹸セットだって」
「おお、普通に使おう」
「高級おにぎりセットだって」
「うめぇ」
「うめぇ」
ほんとうめぇ。
「高級原始人セットだって」
「アウストラロピテクス、ネアンデルタール、北京原人、クロマニヨンと各種揃っております、って書いてあるな」
「私、ネアンデルタールね!!」
「いや、おまえは北京原人だろう」
「えー、ネアンデルタールだって!」
「それはどちらかというとサエちゃんだと思うぞ」
「むぅ……とりあえずアウストラロピテクスはお姉だね」
「それは同意」
多分誰もが同意。
「うわ、スポンジのクリームおひたしがある」
「またか、あの子も毎年頑張るなー」
「や、なんか今年は二つあるんだけど」
「……誰からきた」
「なんか知らない人から」
おまえ知らない人に大人気だな。
「あとこれは、サエちゃんから」
「……鯖のブローチ?」
日々スーパーを行き来する僕が見るんだから間違いない。このブローチは木彫りの鯖だった。
「これはサユカンから」
「……鮪のネックレス」
器用にビーズで作られた鮪だった。
「これはサラさんから」
「……秋刀魚」
本物だ、美味そー。いや、すぐに冷蔵庫いれなきゃ!
「これはテンカ先生から」
「鯨のぬいぐるみか」
あいつからのプレゼントとは思えない可愛らしい人形じゃないか。一応教師らしく子供が好きそうなものをわかってるということか。
「えーと、これはキリヤンから」
「おぉこれは秋鮭のムニエル、ってだからなんですぐ食べるか冷蔵庫いれるかしないんだ!!」
つーか料理を箱に詰めて送るとか何考えてんだあいつは。誕生会中に食わせろよ。
「これはタマちゃんとクララちゃんから」
「……魚拓?」
え……なんで?
どうしよう、ツッコミ方がわからん。
「これはタケダから」
「え、魚拓? ネタがかぶってるし」
ほんと残念なやつだなタケダ。
「これはシュー君から」
「おお、鰤の刺身!」
シュー君のくせになかなかいいものを……いやだからわざわざプレゼント箱にいれないでもっとわかりやすくしてくれれば最初から冷蔵庫に……
「これはサカイさんとゆーたから」
「さ、鮫革の財布」
また小学生にえらいもんくれたな。しかしこの革の鮫、まさかゆーたさんが捕ってきたとか……ないよな、姉じゃあるまいし。
「で、これはお姉から」
「……鰐」
また捕ってきたのか。前に食ったから揚げ美味かったのかな?
「さてカカ。そろそろ聞いていいか?」
「なんでみんな魚ばっかなんだろう」
あれ先に言われたし。
「鰐は魚じゃないけどな」
「や、漢字に『魚』入ってるじゃん」
おまえよく知ってるな。
「偶然かな?」
「や、おまえのことだ。きっと理由があるはずだ」
「や、でも私のことだからこそ変な偶然が重なっちゃったのかもしれないよ」
この妹、最近はかなり自身の理解度が高まっている。成長したな。
「……あ」
「どうした、心当たりがあったか?」
「確かこのごろ、マイブームになってた言葉があるんだけど」
「ほう」
「誕生日プレゼントについて聞かれたとき……」
『カカちゃん、なにかほしいものあるー?』
『ぎょっ! 何かくれるの?』
『うん』
『うおー!!』
「こんな感じで『ぎょ』と『うお』って会話を繰り返したような」
「……まさか、それで皆が魚がほしいと勘違いしたとか?」
「まさかぁ」
「まさかなぁ」
そんな皆さんに聞いてみました。
『え、カカちゃんのことだからそういう意味かと』
深読みしすぎ。
「私ならありうる!!」
おまえはわかりにくすぎ。
え、こんな誕生日プレゼントでいいのかって?
私は魚が大好きです。私から見ればカカが羨ましくてしょうがない。
だからいいんです。