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カカの天下  作者: ルシカ
816/917

カカの天下816「カカの今年の誕生日、後編」

 こんにちは……トメです。今日はカカの誕生日というめでたい日だというのに、なんとも阿呆な展開となっています。あれ、この日って毎年感動するような話になってなかったっけ? なんで今回こんなにはっちゃけてんだ。


「いっせーのーせ!」


 皆一斉に引いた棒くじ。棒先が赤かったら次の犠牲者だ。


「うわ、ぼ、僕ですか……」


 そしてソレを引いたのはザ・不幸と名高いシュー君。


「やったねシュー! いつも日陰者の君に見せ場ができたよ!」


「お姉様……いやあの、これをやったら一層日陰の中に行ってしまいそうな気がするんですが……」


「いいからやれ」


「はい喜んで」


 喜んじゃったよ。




 シュー君が看板を背負って街中を爆走します。


「ううう……はやく終わってはやく終わってよぉ……うぅ……僕、足遅いよぉ……」


 いじめられっ子のごとく走るその背中に輝く文字は――


『足拭きマット』


『ボロ雑巾』


『とってもフルーティ』


 酷い。そして意味がわからない。


 街人の反応は……


「あらまぁ、今度は何かしら」


「とってもフルーティーな足拭きボロ雑巾ですって」


「あの人がそうなの?」


「なんて可哀想……」


「でも食べたらフルーティーらしいぜ。奥さんお一つどうです?」


「んー、いらない♪」


 戻ってきたシュー君の一言。


「……僕……もう外に出れない……」


 そして姉の一言。


「シュー、よくやった」


「え、あ、はい! えへへ」


 シュー君は復活した。ある意味、誰よりも逞しい気がするこの人。


「さ、次いくよー」


 ちなみにカカは二回目以降、姉の背に乗って爆走する人をこっそり追いかけて見物している。僕らはカカからその様子を聞いているというわけだ。なんて性悪な。これで他人事なら面白いだろうけど、次は自分かと思うとあまり笑えない。


 続いて当たり(ハズレ)くじを引いたのは……


「ぬはぁ!! 俺かぁ!?」


 おそらくこんなイベントのために呼ばれたであろうタケダだった。さすがはアレなツートップ。こういうイベントは逃さないな。


「皆が走ってる間に大きい看板を作っておいたよ」


 カカ……おまえこういうときは本当に働き者だな。




 タケダが看板を背負って街中を爆走します。


「カカ君お手製の看板で、カカ君の頼み。男としては好きな女性の願いを叶えてこそ本懐。しかし、しかしこの内容は……」


 気になる看板の中身は。


『ザ・残念』


『なんか残念』


『ホント残念』


『とことん残念』


『もうオワタ』


 もうとことん残念の上に終わったらしい。可哀想だ。


 街人の反応は……


「あらあら……可哀想」


「さっきの人と同じくらい、なんか可哀想」


「よくわからないけどホント可哀想」


「いやもうとことん可哀想」


「人生オワタ」


 戻ってきたタケダの一言。


「俺は幸せなんだああああ!! 好きな女のために死ねて本望なんだあああ! うおおおおお!!」


 タケダの中では既に自分は死んだらしい。


「タケダ君、そう気を落とさないでー」


「さ、サエ君……」


「またもや私、看板の裏に色々と書き込んでたんだけどー」


 まさかサエちゃん。あんなに心がボロボロになったタケダにトドメを刺すつもりか!?


「ほら、見てー」


「こ、これは……」


『がんばれ!』


『すごいがんばれ!』


『とにかくがんばれ!』


『がんばれって言ってごめんなさい』


『やっぱオワタ』


「結局終わってるじゃないかああああああああああああ!!」


 やっぱトドメだ。タケダ死亡(心情的に)。


「さてさて、どんどんいくよー」


 そんな些細なことは意にも介さず続けようとする鬼妹。ま、タケダがああなるのはいつものことだし別にいいか。


「あ、ねぇねぇサエ、見てー。ゆーたが引いたわよー」


「すごーい。私たちの底辺が揃って引いたんだねー」


「ほんとねー。身の程を知ってるわねー」


 この親子こあい。


「ゆーた、か」


 主催者カカはその屈強な男の目を見た。


「ゆーた、やってくれる?」


「別によだれが出るほど楽しんでしまっても構わんのだろう?」


「やっぱいいや」


 世間の平和を考えて却下された。彼の大きい背中は少し寂しそうだった。


「はい次のくじ!」


 続いて赤いのを引いたのは……


「あ」


「あ」


「おお」


 誰もが驚いた。たまたま近くに居て、なんとなく参加した賢い猫……総理大臣が当たりを引いたからだ。


 カカは猫の目を見た。


「総理……やってくれるよね?」


 言葉が通じない。


「サエちゃん通訳」


「大臣、おねがーい」


「にゃあ!!」


 通じた!?




 さ、サカイ動物団が看板を背負って街中を爆走します。


「ニャアキシャー! モーワンブー! メエエエエ!!」


 そして気になる看板は!


 総理大臣、『弐矢亜』


 官房長官、『気射唖』


 ラスカル、『腕』


 日本経済、『猛』


 豚野郎、『武有』


 財政破綻と経営困難、『滅衛』 


 えーと、なんか暴走族みたいですけどニャアとかキシャアとかワンとかモウとかブウとかメエとか読みます。


 マントザル、『奇鬼異』


 ってマントザルいたの!? いつの間に!? キキイって字が恐いし!! うわーあとでサカイさんを問い詰めよう!


 ともかくそんなやつらが爆走して、街人の反応は……


『な、なんだあれは!』


『警察を! いや保健所を! いっそ軍隊をよべえええ!』


 になるかと思ったら……


「またサカイさんとこの子たちかい」


「アレらの散歩かぁ、いつもより風変わりだなぁ」


「さっきから何かイベントでもしてるのよ、きっと。あそこの人たちは本当にお祭りごとが好きねぇ」


「あはは、なにあのサル。空飛んでるー」


 慣れって恐ろしい……や、慣れの一言じゃ済ませられないだろ。どんだけ心広いんだこの街の人々。


 ともかくそんな動物団が戻ってきて、サカイさんの一言。


「お座りー」


 おお、みんな座った!!


「かえれー」


 飼育小屋に帰っていった!! なに今の! 『おすわり』とか『まて』の定番命令じゃなくて普通に日本語言っただけだよな!?


「さ、次いくよん」


 そんな不思議ワールドを当然のごとく受け入れるカカさん。子供って夢があっていいよな……うん、夢だ。今のは夢だということにしておこう。深くツッコんではいけない。


「次は……サラさんだ」


 ここで事件が起こった。


 先に言ってしまえば、看板の内容が十八禁だったからだ! 


 そこには『千変万化の皿』や『楽園の素敵な巫女』など、普通の肩書きもあったが……『乳神様』や『揺れる山脈』などという、なんかヤヴァイ単語もあり、終いには――とても書けない!


 とにかくちょっとイヤンな展開だったのでカット。


「私なんか割れてしまえばいいのよぉぉぉぉぉ!!」


 顔を真っ赤にしながら酒に走るサラさんを尻目に、またもや引かれるくじ。


「お、次はキリヤンだ」


「はっはっは! 恥ずかしながらこの私、精一杯走らせていただきます!」


 こいつも楽しんでやりそうだなぁ。こういう性格が羨ましい。や、看板背負うのは微塵も羨ましくないが。




 キリヤが看板を背負って街中を爆走します。


「はっはっはっは!」


 看板の内容は……


『早くユカとイヤンバカンしたい』


 それだけだった。街人の反応は……


「やぁねぇバカップルって」


 それだけだった。さすがあっさり爽やか味がウリのキリヤ。看板の内容はくどいのになぜか似合い、すっきりとした後味だ。


 戻ってきたキリヤは言った。


「さて、ユカさんに電話でもしましょうか」


 はいはいラブラブしてろーと色男をどかし、またもやくじ引きだ。いい加減終わりにしてほしい。まさか僕が当たるまでやるんじゃないだろうな。


「あ、テンカ先生が当たったー」


 嬉しそうなサエちゃん。カカも若干楽しそうだ。日ごろの恨みでも溜まってるのかもしれない。


「やだ」


 しかしテンはきっぱりと言った。


「なにぃ! 言うことを聞けぇ! 今日の私は主役様だぞ!」


 いきりたつカカ。しかし。


「オレはオレ様だ!!」


 げんこつ一発。


「ご、ごめんなさい……しなくていいです……」


 つええ。さすが後ろに用意されてた看板に『漢の中の漢』とか書かれるだけはある。


 ちなみに、さらにその後ろにはすでに走り終えたサユカちゃんたちが座り、お料理をもぐもぐしながら高みの見物としゃれ込んでいる。くそぅ、僕もあそこにいきたい。


「いっせーのーせ!」


 そして飽きることなく引かれたくじ。


「タマがあたったでしゅ!!」


 元気よく言ったのはタマちゃん当人! 嬉しそうだけど、今からやること理解してるのかな?


「うーん、この子一人で看板を持つのはきつくないですかー?」


「子供一人に街中を走らせるのも危ないよー」


「サエ、私たちが保護者としてついていきましょー」


「そだねー」


「クララもいくです!」


 そんな優しい雰囲気の中、カカが慈悲のない言葉をぶつける。


「じゃあ皆、看板背負ってね」


 おまえには血も涙もないのか。


「いいですよー」


「いいよー」


「はい!!」


 だが、それを予想していたかのようなサカイさんたちの反応。


 四人はプチ家族のように仲良く看板を背負い、和やかな雰囲気のまま街へ繰り出した。


「……ん?」


 気づいた。


「……んん?」


 なにか、重大なことに気がついたような。


 自分の周りを見る。カカしかいない。走り終えた人間はテーブルについてもぐもぐしてるし、サカイさんたちは街へ行っちゃったし。え、これってもしかして――


「じゃ最後はトメ兄決定だね」


「ハメられたあああああああああああああああ!!」


 あんの腹黒親子! 自分たちが一人で走るのが嫌だからって子供をうまいことダシに使いやがった! しかも見ろ街人の反応を!


「あらあら、また変なのがきたわよ」


「ああ、子供の遊びに付き合ってあげてるんだろ」


「優しいわねぇ。楽しそうだし」


 なんて温かな視線! そう、一人ではなく複数で、しかも子供と一緒に歩くということでヘンテコな看板の存在を薄れさせたのだ! なんという策士! 


 タマちゃんの看板には『ちびっこギャング』『無邪気な痛恨の一撃』クララちゃんの看板には『年齢? なにそれおいしいの?』『世界一しょっくです!!』とか書いてあるにも関わらず、純粋無垢な子供の笑顔で街人は全部スルー!


 サエちゃんの看板には。


『腹黒天使』


『あの笑顔には勝てない』


『笠原香加のお嫁さん』


『ものすっごい可愛いっしょ?』


『えっへん』


『時々白』


『小枝……こ……こわざ?(某CM)』


 とか妙ちくりんなこと書いてあるのに、どっからどうみても子供につきあってあげてるお姉さん役!


 サカイさんは保護者! っていうか看板背負ってすらいないし! あれいいのか! 詐欺だろ!


「サカイさん、腕力ないから看板持てないんだって」


「そんなもん根性で持てよ!!」


「さ、トメ兄……」


「や、や、やああああああああああああああああああ!!」




 僕が看板を背負い、泣きながら街中を爆走します。


 街の人たちの反応は……


「あらまぁ」


 あらまぁ、なんだよ!?


「おやまぁ」


 おやまぁなんだよ!?


「ぷ」


 笑うなあああ!!


「うげろ」


 いっそ笑ってくれええええ!!


 看板に並ぶ恥辱の言葉の数々。


『トメぽん』


『閃光のなんでやねん』 


『あのカカの兄』


『便利だけど最後はむくわれない』


『妹募集中、小学生以下』


『さっきの子が言ってた留が僕です』


『つまり女子小学生が嫁です』


『てへへ』


『ふへへへへへへへへ』


『耳が好き』


『うふ』


 なんで僕だけこんなに多いんだぁぁぁぁぁ!! 


「私のためにここまでしてくれる皆に囲まれて、私は本当に幸せだよ!」


「最後だけ良い感じにまとめんじゃねえええええええ!!」


 そんなカカの誕生日。


 いろんな人がものっそい恥かいたけど、カカが喜んでくれたので「ま、いいか」と思えてしまうのでしたとさ。


 めでたしめでたし。


 まぁ僕は思えんけどな。


 思えるわけねーよ!!




 はい、そんなわけで誕生日でした。よかったね、トメ(ぇ

 お次はもらったプレゼントの話になると思います。


 沢山の肩書きをプレゼントしてくださった方々、本当にありがとうございます^^ どの肩書きが誰の案かは載せません、面倒なので(ぉぃ


 なので、嬉しかったり喜んじゃったりした人は感想欄ででも自慢してください笑

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