カカの天下808「大人の階段、五段目」
どうも、いけいけゴーゴーな感じのカカです。
「ねぇカカすけ、考え直しましょっ! 兄に妹が告白なんて!」
「サユカちゃん、いくらトメお兄さんがオッケーしそうだからってそんな慌てなくてもー」
「慌てるわよっ! わたしだってトメさんのシスコンっぷりを知ってるものっ。真剣なカカすけの声を受け入れてド変態に成り下がる可能性だってなくはないものっ!」
「うわー、トメお兄さんのこと信用してないんだー」
「信用と妄信は違うのっ」
「……サユカちゃんのは妄信じゃなかったのかー、初めて知ったー」
「また一つ大人になったわねっ、よかったわねサエすけっ!」
「そんなことを堂々と言えるようになった辺りを見ると、サユカちゃんが成長してるのは間違いなさそうだねー」
そんな声を背中に聞きながらも、自宅へ向かってズンズン行進する私。
「ねぇカカすけ。あなただって本気でトメさんが好きってわけじゃないでしょっ!?」
「私が見る限りじゃートメお兄さんもカカちゃんもお互いが大好きだと思うけどなー」
「それは恋愛とは違うでしょっ!」
「友達から恋人へーなんてよくある話だよー」
「妹から恋人はないわよっ!」
「その筋のゲーム界隈じゃー常識のように溢れてるってお母さんが言ってたけどー」
ふと気づき、足を止める。
「あ、カカすけっ。考え直してくれたのっ!? そうよね、カカすけにはもっとピッタリな相手が見つかるわよっ」
「ある意味、トメお兄さんほどカカちゃんにピッタリな相手もいないと思うけどー」
くるりと振り返って、サエちゃんとサユカンに向き合う。
「私、忘れてたよ」
「え、なに? よくわかんないけど考え直してくれたのねっ」
「トメ兄まだ仕事だわ。電話する」
「微塵も直ってないねー」
「いやあああっ!!」
ぴ、ぽ、ぱ。コール音が鳴った。出るかな、仕事中だけど。
あ、留守電だ。やっぱ出れないかぁ、仕方ない。メッセージを残しておこう。
「ダメよカカすけっ! 大人はそんなバカなことはしないものよっ!」
トメ兄、私を大人にして――とかそんなようなことを言いかけて止まる。
「大人は……バカな」
ことは、しないの? じゃあ、私はどうすれば――疑問が巻き戻った。
「バカ……か」
やっぱり私はバカなのかな。
「どうしようもない、バカ……?」
一時消えていた不安感がこみ上がってくる。
自分の全てを否定されているようで悲しくなる。
「か、カカすけ?」
「カカちゃんどしたのー?」
電話を切る。サユカンを見る。
「ねぇ、私、やっぱりバカなのかな」
「え、うん。そうだと思う」
「ちょっとサユカちゃん! いつもどおり返しちゃダメー!」
「あっ……」
そうだよね……今までは気にしないどころか『バカ上等!』くらいの勢いだったんだけど、やっぱりバカはバカなんだよね。
大人はしないような、ことなんだよね。
「私……バカだから大人になれないのかな」
「そんなことないわよっ! ほら見て、あそこにいる人をっ」
「あ、なんていいタイミングにー。ほらカカちゃん、あそこに誰よりもバカな大人がいるよー」
「そうよ、キングオブバカよっ!」
二人の視線の先には――
「あ……ほんとだ、バカがいる」
「うぉーい妹ちゃん。いくらなんでもお姉さん相手にそりゃヒドイんでないかい? いくらあたしでも悲しくなるべ」
だって本当のことだし、なんて言ってしまっても「あっはっは」と笑い飛ばしてしまうお姉。そうだ、この人がいた。私が悩むなら真っ先に話を聞かなきゃいけないだろう、この人が。
「お姉さん、実はカカちゃんが悩んでてー、って、あれー?」
「お連れさんがいるわっ、失礼しましたっ」
そう。たまたま道端で出会ったお姉は、見たことのない女性と一緒だったのだ。お姉のバカオーラが強すぎて見えなかった。
「お姉、この人は誰?」
「ん、タケダのかーちゃん」
わ、この人がそうなんだ! 初めて見た。たしか旅行好きでしょっちゅう家に居ないとかいう話だったような……
いや、あんなやつのことはどうでもいい。今はとにかく、バカについての話を聞かないと。
そう思った矢先に――
「タケダのかーちゃんで、タマのかーちゃんでもある」
「「「は?」」」
この上なくバカな話が舞い降りた。
そのころのトメ。
「あー終わった終わった。ん、着信とメッセージ? カカからか。なんだろ。再生っと」
『大人は……バカな。バカ……か。どうしようもない、バカ……?』
ケンカ売ってんのかこいつは。
台風がきますね(カカ天と関係なし)。
皆様お気をつけて。
いやしかし、カカ天にも話的な意味で台風(嵐?)がくる……のか?




