カカの天下80「若気のいたり」
「カカすけ、君っていろいろな意味ですごいよね」
「なに、藪から棒に」
こんちわ、カカです。
今日も今日とて小学校。いじめっこを発見し追跡、撃墜、処刑執行を終えたところで最近友達になったサユカちゃんがこんなことを言ってきました。
「だってさ、いくらなんでも破天荒すぎるでしょ君の行動。いったいどういう育ち方したらそんな風になるわけ?」
「じゃあ聞いてみようよー」
私がなんて答えるか迷っている間にサエちゃんがほやほやと提案した。
「と、いうわけであなた! お答えくださいっ」
「……なぁ、そのあなたってのはなんなんだ?」
「ぅえ!? あ、いやそそそそそそそその口が滑ってちょっとええいやすいませんごめんなすってぇじゃなくてごめんなさいあれですよそこのあなた、みたいな感じで特に旦那様的な意味のあ、な、た♪ ではなくてですねっ」
「いや、いいんだけど」
「トメお兄さん、教えてー」
「むぐむぐー!!」
必死に抗議しようとする私の口は、サエちゃんがどこからか召喚した姉に塞がれていて何も言うことができない……!
「カカが小さい頃の話か?」
「そうそ、ついでにあたしが武者修行いってる間のカカちゃんズおもしろエピソードも教えてよ」
「はぁ。まぁ、いいけどさ。何を教えればいいんだ?」
「なんといいますか、カカちゃんがどうしてこんな風に育ったか知りたいんです」
「こんな風って……サエちゃんって本当、言うようになったなぁ。それとも元はこうだったのか? まぁいいや。じゃ、こんなのどうだろ」
それはカカが幼稚園に通い始めた頃だったかな。
とある和風の食事処へ行ったときのこと。
「これは、ここ!!」
そう言いながら、なぜかひたすらつまようじをソース入れに押し込めるカカ。
僕はもちろん慌てて止めた。
「なんでそんなことをするんだ!!」
「これはここなの!」
「なんで!?」
「ここにようじがあるから!!」
「そこに用事があるから……いつ思い返しても驚きだ。まさかあんな小さいときからオヤジギャグを使っているとは」
「でも、なんだかカカちゃんっぽいねー」
「そのわけがわからない主張をさも当然のように通そうとするとこがまさに、よね。つまようじがソースにどんな用事があるっていうのよっ」
「……むぐむぐ!」
「さ、次、次」
なんとかおとなしくさせたんだけど、カカはなぜかテーブルの下へ潜り込んだ。
小さい子って狭いとこ潜りたがるよなー、と思って放っておいたんだけど……
ゴン!!!
テーブルが一瞬浮いた。下にいるカカが身を起こしてしまい、頭をぶつけたらしい。
ゴン!! ゴン!! ゴン!!!
さらに浮きまくった。
どうやらテーブルが揺れるのが楽しいらしい。
僕はカカをなんとか引きずり出した。
「あたまいたい」
ならやるなよ。
「でも楽しいの」
「なんで」
「あたまいたいから」
僕の頭が痛くなった。とても精神的に。
「いつ思い返してもわけわかんないよなぁ。まぁ、カカって基本的にそんなんばっかだけど」
「理由もなしに思ったこと行動するところは変わってないねー」
「カカすけって、昔から変わらないのね」
「……むぐ」
「ま、そんなこと言ってるけど弟君だっていろいろと……」
「変な行動はあんたが一番だろ姉。昔じゃなくても現在進行形で」
「む、失敬な。じゃあ弟の変な過去を言ってやる」
「ほ、本当ですかっ!?」
なんでサユカちゃんが真っ先に反応するのかわからんが……
「へぇ、姉よりも変な行動を、僕がしたことがあるって?」
「うん」
「おもしろい、言ってみろ」
「野菜の皮むきあるでしょ。あれをお尻に」
「やめろおおおおおお!!!!」
「包丁を乳首に」
「やめんかあああああああ!!!」
「水道の蛇口を鼻にね」
「その台所シリーズは封印しろと何度も言っただろうが!! いい加減にしないとこっちも寝ぼけた行動シリーズで対抗するぞっ。歯磨きを目に」
「あああああ悪かった弟よっ」
僕の渾身の抵抗によって、なんとかこの秘密の暴露は回避された。
「ふう、やっと開放された……もういいから二人とも全部言っちゃいなよ。すっきりするよ?」
『どっぷりしてしまうわ!!!』
ハモる僕と姉。
『えー』
不満そうにハモる三人。
「カカはな、小学一年のときにバケツの中にお尻を」
「まてやトメ兄、私がとっくにどっぷりしてるのに、さらに何を!」
「もうどっぷりしてるならいいじゃないかっ!!」
こんな感じでぎゃーぎゃー騒がしい一日でしたとさ。