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カカの天下  作者: ルシカ
788/917

カカの天下788「やってらんね」

「聞いてくれよトメ!」


 ダン、と飲み干したジョッキを叩きつけるようにテーブルへ置いたテンは、唾なんだかビールの泡なんだかよくわからないものを撒き散らしながら叫んだ。どうも、それを撒き散らされたトメです。


 ジョッキ、テン、という単語が出てきたらもうわかるでしょう。ここは居酒屋『病院』で、僕らは飲み真っ最中というわけです。


「トイレのせいで家庭訪問ができねぇんだ!」


 そして前代未聞の話題が今、始まろうとしています。難易度が高いことこの上ねぇ。


「……家庭訪問に行く先々でトイレ中? そんなことあるわけないだろ」


「あるんだから仕方ねぇだろって何度も言ってんだろが!」


「何度も言われてはいないぞ」


「教頭に毎日言ってんだよ! でも信じてくんねぇんだ!」


 そりゃそうだろうなぁ。しかも毎日なんだ。


「オレは悪くねぇ! トイレが悪いんだ。トイレなんか滅んじまえ! んぐんぐんぐ」


 叫んだ勢いに任せてビールを一気飲みするテン。


「小さなお子様からお年寄りまで余すことなく困ることになるぞ、それが滅んだら」


「だってよぉ! だってだってだってよぉー! おかわり!」


 コイツたまにガキくさくなるよな。


「おかしいのはわかってんだよ。でも『まさかなー』と思いつつ次の家に向かうとやっぱりトイレ中なんだよ! ぜってーオレ呪われてるって! トイレの太郎さんとか次郎さんとか憑いてるんだって!」


 しかし、そこで通りすがりの霊媒師が口を開いた。


「いんや、おんしには何も憑いておらん。トイレが重なるのはただの運じゃ、偶然じゃ」


 なんともありがたいお言葉を残して去っていく霊媒師。なんだアレ。


「くそぃ、偶然じゃ仕方ねぇ」


「くそぃってなんだ」


「くそぅ、って言うのなんか悔しいだろ。トイレに負けたみたいでよ」


 くそ、まで言ってる時点で負けのような気がするけど。あ、すいません下品な話を。何せ酔ってるもんで。


「このままじゃいつまでたっても家庭訪問できねぇ」


「そんな毎日トイレとかち合うわけもないだろ」


「てめぇらもさっきはトイレ中だったじゃねぇか!!」


 ……あ? もしかして今日、カカの口癖がどうのこうの行った後でトイレに殺到したときに来たのかこいつ。あーそういや今日って家庭訪問だって知らせがあったような。忘れてた。


「ていうかさ、トイレが終わるのを待ってから家庭訪問を始めればええやん」


 トイレに一時間もかける人いないだろ。よっぽどお腹の中がステキな状態になってない限りは。そんな僕のごもっとも極まりない意見は、


「トイレした後じゃ気まずくて喋れねぇだろ!」


 なんか微妙な意見で一蹴された。


「あー……」


 僕は頭をぽりぽり掻きながら、とりあえずビールを飲んだ。んぐんぐ、んまい。心が落ち着いた。さてと。


「スッキリした後で清々しく喋ればいいじゃないか」


「できるかよ。『お日柄もよろしくて』のはずが『便通がよろしくて』から始まるんだぞ。そんな会話できっか!」


「すんなよ」


「家庭訪問に行ってまでトイレの話題で盛り上がってどうするんだよ」


「だから、そんな話しなきゃいいだろ」


「無理だ。トイレの後だぞ? おまえトイレ舐めんなよ?」


「舐めてたまるか馬鹿者」


「人間がトイレの話題に事欠くわけねーだろうが。人がどれだけの頻度でトイレを愛用してると思ってんだ。各々に独自のやり方が伝統として受け継がれているんだぞ、一子相伝で」


「おまえがトイレについて話したいだけだろ」


「ふざけるなよてめぇ」


「どっちがだ。大体なんで一子相伝なんだよ」


「二人目の子供からトイレを教えるのが面倒になってくるんだよ」


「育てたことあんのかよ」


「ねぇよ。でもトイレのことなら大体わかんだよ」


「おまえいつの間にトイレの先生になってんだよ」


「先週からだよ畜生! オレだってなりたくてなったんじゃねぇ!!」


 ダン! と再び飲み干したビールジョッキをテーブルにたたきつけるテン。まぁお疲れ様ですねぇ。あ、僕のビールもないや。


「おかわりー」


「トイレのおかわりはもういらねぇ!」


「誰もトイレのことなんて言ってないだろ!?」


 とにかく。散々トイレについて談義した結果――仕事なんだから我慢して、トイレの話にならないようにうまく家庭訪問しなさい、ということになった。


 別に談義しなくてもそれしかない気はするが。


「トメ! じゃあ明日はてめぇの家に家庭訪問に行くからな!」


「はいはい」


「トイレすんなよ!」


「無茶言うな!!」


 これでまたトイレのタイミングで来たら……まさか、な。




 腹減りすぎて飲食業なんかやってらんね、なんて思いつつ仕事を終えた後にこんなん書きました。


 や、もちろんお客様の前では笑顔で仕事しましたよ! でも裏では空腹でぐったりしながら「お客さんいーなーあんなに食べれて……はぁ」なんて心底思ってたんですよチクショー! 


 私もたまにはお金出していいモン食べたい……給料日来たら……ふふふ……


 さて、相当に私事を書いてしまいましたが。次はテンカ先生の家庭訪問です。もしくはトイレです。多分。


 それにしてもすごい勢いで夏休み期間が過ぎそうです(多忙すぎて)なので不定期とか言ってるうちに夏休み終わっちゃうやばいやばい、いっぱい書きたいのに。

 これはもうお盆過ぎたら連載頻度アーップってことで頑張るしかないのかもかも。


 あとですね、なんとカカ天の二次作っぽいのを書いていただきました笑 

 感想欄にも書かれているのですが、『拓未』さんが『カカ天劇場』として公開されたり後悔されたりしています。始まったばかりですが、ぜひ検索してみてくださいな^^


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