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カカの天下  作者: ルシカ
787/917

カカの天下787「テキ」

 こんにちは、トメです。もうすっかり夏休みですね。にも関わらず学校へ行ってしまったバカもいますけどぶはははチョーウケる! コホン。いかんいかん、僕はこんなキャラじゃない。


 ともかくウチのカカも夏休みですよ。それが理由かはわかりませんが、最近カカに一つのブームができました。


 それはとある口癖です。そう、例えば……


「ねーねートメ兄。はやく夕飯的なもの作ってよ」


「なんだよそれ。夕飯を作ればいいのか? それとも夕飯っぽい何かを作ればいいのか?」


 ○○的な。これである。


「じゃ夕飯っぽい何かで」


「マジか」


 というわけで、まず夕飯を作る。とんかつとサラダ。それに味噌汁だ。


 次に、近くにあったティッシュをいくつかくしゃくしゃに丸めて、茶碗に詰めてみた。白いしふんわりだし。ご飯的なものの完成だ。


 さらに千切って細かく丸めたティッシュをサラダに振りかけてみる。サラダの一部的な感じになった。


「よし、できたぞカカ。夕飯的なもの」


「おー、どれどれ?」


「食べれそうで食べれなさそうに仕上げました」


「ティッシュを無駄遣いするんじゃありません!」


 こいつ殴りたい。


「ちゃんと食べられる程度にボケたんだからな。ティッシュさえ取れば元通りになるんだから。ちゃんと夕飯的な何かだったろ?」


「ビフテキ!」


「今日はとんかつだっつの」


 すかさずツッコんだのが気にくわなかったのか、カカは茶碗に詰まっていたティッシュを掴んで僕へと投げつけてきた。


「射的!!」


「テキをつければなんでもいいんか。とにかく、おとなしく席についてなさい!」


 僕の厳しい口調がムカついたのか、カカは荒々しくこちらへ向かって指差し、こう宣言した。


「敵だ!」


「じゃあ食うな」


「あ、ごめん! ほんとごめん!!」


 まったく、困ったものだ。




 次の日。サエちゃんとサユカちゃんが遊びに来ても、カカはまだ口癖を使っていた。


「ねね、トメ兄。洗濯バサミ的なものってある?」


「洗濯バサミがほしいのか。それとも洗濯バサミのようで実は大いなる何かがほしいのか。どっちだ」


「トメお兄さん、いつもツッコミご苦労様ですー」


「いい加減にトメさんもスルーすればいいのに。カカすけったら先週からずっと言ってるんですよっ」


「や、カカの口癖を直したら僕の勝ち、みたいな競争心がいつの間にか生まれていてだな?」 


 でもなかなか直らないから腹いせに、ご要望の洗濯バサミでカカの鼻を摘まんでやった。


「ふごぁっ!?」


 とても女の子らしくない悲鳴をありがとう。


「ふごぁ! ふごぁ!」


 やっておいてなんだが、もうちょっと可愛く痛がれ。


「あーはいはいっ! わたしが取ってあげるからジッとしてなさいカカすけ。ほっ」


 バチーン!!


「ったぁぁぁぁ! 痛い的っていうか痛い! もんのすごく!」


「ごご、ごめんなさいっ! つい手が滑って一番痛い取り方をっ!」


 皆さん、わかりますよね? 大体の人が経験したことあるはず。挟んだ力を緩めないまま勢い良く引っ張ったときに感じるあの痛み。見るだけでも痛い。でも僕は特に何をするでもなく、お茶をすすりながら子供たちの見守りモードに入った。


「サユカンこのやろー!」


「わ、わざとじゃないわよっ!」


「じゃあわざと的にやったのか!」


「頷けばいいのか否定すればいいのかどっちなのそれっ!?」


 ケンカ勃発かと思われた二人だったが、サエちゃんの一言がそれを抑えた。


「まーまーカカちゃん。お鼻が真っ赤になってて可愛いよー?」


「へ、そう? サエちゃんが言うならそれでいいや」


 あんだけ痛そうな音させたわりにはあっさりしているカカである。


「んじゃサエちゃんも鼻を赤くして可愛くなってみようか」


 そして予想を上回る返しを即行でやるのもカカらしい。バチーン!!


「……ぃ……! ぃ……! ぃー!!」


 よほど痛かったのか、サエちゃんはか細すぎる悲鳴をあげながらその場に蹲ってしまった。両手の平で顔を覆って、まさか泣いたか?


「は! 私はなんてことを!」


 カカは自分の過ちにようやく気づいた。


「サエちゃん大丈夫? 大丈夫!? ごめんね、ごめんね、私としたことが嫁に家庭内暴力を振るうなんて……ほら、顔をあげて。大丈夫? わ、鼻が真っ赤。可愛い、可愛いすぎるよサエちゃん! 写メ撮っていい?」


 訂正。あんまり過ちに気づいてないっぽい。


「……ぃー……!」


 サエちゃんはまだ声を出せないらしい。 


「まったくもう、何してるんだか……」


 呆れかえったサユカちゃんに、カカの視線がロックオン。


「じゃあ次は順番的にサユカンがバチーンする流れだよね」


「どういう流れよっ! 君がサエすけに謝ってめでたしめでたし、でいいじゃないっ!」


「元はといえばサユカンのせいだ! 痛い的な目にあわせてやる」


 洗濯バサミを持ってサユカちゃんに襲い掛かるカカ! 


「きゃっ!」


 驚きつつもカカの魔の手を受け止め、顔に迫る洗濯バサミをガードするサユカちゃん。


「ぐ……! い、痛い的な目って、ど、どんな目よっ」


「痛いけど気持ちいいって言うのだ!」


 そろそろ教育上よろしくない方向になってきた。止めるかな。


「おい、やめろおまえら」


「と、トメさんにされたら気持ちいいかもっ」


 勘弁してください。


「だってさ、トメ兄! さぁ!」


 さぁじゃねぇよ。本当に勘弁しろよ。




 ――結局、サユカちゃんが逃げ切る形で洗濯バサミ戦争は終わった。サエちゃんは未だに蹲って「ぃー」って言ってる。もしかしたらイイのか? まさかな。『痛い』の『い』だ、間違いなく。


「それでカカ、洗濯バサミは何に使うつもりだったんだ?」


「手芸部的なこと」


 おお、初めてこいつの口癖が的確な表現をした。こいつらのやることって、いっつも手芸部っぽい何かなんだよなぁ。


「ところでサエちゃんがずっと俯いたままなんだけど、放っておいていいのか?」


「そだね。おーいサエちゃん、そろそろ泣きまね的なことやめなよ」


「バレたかー」


 泣きまねだったの!?


「せっかくコレを理由に脅して変なことしてもらおうと思ってたのにー」


 しかも何か黒いこと考えてたらしい。たしかに泣きまねっぽい何かだ。


「あ、姉的な生き物が外を歩いてる」


 的確だ! 姉のようでそうじゃない、大いなる変な生物! これ以上に正しい用法はない。負けだ、僕の負けだ。『的な』という言葉がここまで正しい以上、僕はもうこの口癖を直させようなんて思えない。


 そんな激しくどうでもいい一日が、今日も過ぎていく。


 なんかバチーンとした音と共に。


「あ、トイレ」


「僕も」


「私もだー」


「わたしもっ!」


 あれ。そういや今日って他に何かあったような。なんだっけ。忘れちゃった。




 この話、最後に何があったのか……ていうか誰が来たのか皆さんならおわかりですねっていうか誰でもわかるか。


 いやしかし、またえらく更新遅れたもんで申し訳ないです。


 最近一回身体を横にしたら動けなくなっちゃうんですよぉ。休んだら書こうと思ってもつい寝てしまい……

 なるべく頑張りますが、お盆を越えるまでは仕事がべらぼうに忙しいので不定期に拍車がかかるかもしれませんが、ご容赦いただけると嬉しいです……的な。

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