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カカの天下  作者: ルシカ
784/917

カカの天下784「それは伝説となる」

 こんにちは、トメです。


 今日はなんと日食が見られるということで、平日の午前にも関わらずお馴染みメンバー(一部)でサカイさん宅に集まってしまいました。もちろん皆、仕事は休みです。カカたちは学校ですけど、授業で日食を観測するとか言ってました。


「はいはい、それではー」


 太陽用の望遠鏡をセットしたところで、サカイさんが集まったメンバーに声をかける。


「本日は皆様、忙しい中でようこそいらっしゃいましたー」


 顔ぶれは僕、サカイさん、サラさん、キリヤとユカのカップル、ゆーたさん、シュー(だったよな、名前。たしか)、タマちゃん(寝ている)。以上だ。


「ニャーわんブーもーメェェェェ!!」


 し、失礼しました! サカイ動物園も人数に入ります! そうだよな、ツッコミできるレベルなら人として数えてもいいよな。


「さてさて、早速――カツコちゃんが太陽を食べる様子を観測しましょうの会を始めましょー!」


 サカイさんの宣言に、自然と拍手する僕たち。


「いやぁ、うちの姉も出世したもんだよな」


 鼻が高すぎてピノキオになりそうだ。


「さすがは私の先輩です!」


 サラさんってばテンション高いな。日食なんて滅多に見られるもんじゃないから興奮してるみたいだ。


「今日だけは私のこと、にっしょくん、って呼んでもいいですよ!」


 それ男の子じゃないのか。


「はっはっは、しかし人の身で太陽を食せる時代が来るとは。楽しい世になりましたねぇ」


「なに言ってるのよキリヤ。そんな阿呆みたいな話あるわけ――もがもが」


「ユカさん、ロマンとか、KYとか、そんなの覚えたほうがいいですよ。はっはっは」


 そうそう、みんなでピノキオになったほうが楽しいんだよ。


「おおー! いよいよカツコちゃんが太陽にかじりつきましたよー!」


「え、本当ですか!?」


「サラさんには見せません」


「ちょ! こんなときくらい意地悪しないでくださいよぅ! それに私はにっしょ君です!」


「はっはっは、よく見えます。綺麗に欠けてきましたねぇ」


「あーあー! こういうときは最初に彼女に見せるのが普通じゃないの! こらキリヤ、どきなさいよ!!」


 大騒ぎしながら望遠鏡へ群がる女性群+1を尻目に、僕とゆーたとシュー(だったよな? しつこいけど)はあらかじめ配られた日食グラスを装着して空を見上げていた。おお、こんなぺらぺらなメガネのくせして意外とくっきり映るじゃないか。


 ちょっとずつ欠けていく太陽。


 頑張れ、姉。


「くー」


 ちなみにタマちゃんは寝ていた。




「にっしょ君は僕にこそふさわしい!!」


「……ニッシー、誰に言ってるの?」


 なんか知らないけどニシカワ君が先走りました、でも私はカカです、はい。


 授業の一環として、皆で日食を見上げています。もちろん配られた日食グラスを装着して。


「いいかー? 日食ってのはな、オレの友達が太陽を食う現象のことを言うんだぞ。わかったか?」


『はーい』


 テンカ先生の説明に、素直に頷く私たち。


「せんせー、じゃー太陽はなくなっちゃうんですか?」


「その心配はねぇ。なぜなら――」


 テンカ先生の説明に、改めて「なるほどー」と頷く生徒たち。


 よかったね、お姉。みんなの人気者だよ。帰ってきたら太陽の味、教えてね。


「私、てっきりカカちゃんが食べるのかと思ったー」


「あまいわねサエすけ、カカすけならあと十年はしないと無理よっ」


 うん。悔しいけどその通りだ。それにしてもすんごいなー、本当に欠けてく。




 おほほ、校長です。


「皆さん、運がいいですねぇ。このような珍しい現象に遭遇できるとは」


「はい、その感動が教育に結びつけば幸いです」


 あらあら、教頭にしては無難なお言葉だこと。


「それにしても、我が校の元生徒が太陽を食べるまで成長するなんて。こちらも感動的なことですわねぇ」


「はい、その妹君にもぜひ頑張っていただきたいところです……おお、ちょうどいい具合に雲ってきましたぞ。これなら肉眼でも欠けているのが確認できます!」


「ところで。なぜそんなに普通なのですか、教頭?」


「一時的に、とはいえ太陽がデストロイしてるのです。私ごときがそれを邪魔するわけにはいきません」


 おほほ、変な人。


 


 ――誰もが空を見上げている時間。


 場所はカカたちが住む街の商店街、とある家族の会話。


「ねーねー、あれってカツコっていう怪獣が食べてるってほんとー?」


「こらマサオちゃん! どこでそんな妙な話を――」


「こらこらマサエ、子供の夢を壊すな」


「マサキさん……そ、そうね。こほん! そうよ。あれはカツコっていう怪獣の仕業なの」


「カツコってこあいー?」


「そうよ、太陽を食べるくらいだもの。おっきいの、恐いのよ。マサオちゃんが嘘をついたりしたら、太陽みたいに食べられるんだから」


「こあい! ぼく、いい子にする」


「よしよし、いい子ね」


「……あれ? どんどん欠けてた太陽が戻っていくよ! 太陽はかじられちゃったんじゃないの?」


「きっと吐き戻しているのよ」


「猫舌なんだね」


「そうだ。怪獣カツコは猫舌なんだ。だからマサオも、熱いものはフーフーしてから食べるんだぞ」


「はーい!」


「よしよし、いい子ね」




 ――そして、日食の間。とある隠れ家にて。


「……ふむ、見事な日食だなぁ。ところでカツコ」


「なにさ、父」


「なぜ俺の隠れ家なんぞにいるのだ?」


「こないださ、酔った勢いで『あの太陽を食うのはあたしだ!』って宣言したら、なんか皆に本気にされちゃって……いつの間にか都市伝説扱いされちゃったのよ。なぜか」


「日ごろの行いだな」


「いっそのこと本当に太陽食ってやろうかと思ったけど、さすがのあたしでも無理だったからさ。とりあえず日食中は身を隠しておこうかと思って」


「うむ、皆の夢を壊さないための配慮ということか」


「まさかここまでノリのいい街だと思わなかったわ」


「そのおかげでおまえは伝説になれたのではないか」


「ナマハゲと同列になったって嬉しくないわよ。あたし、女だよ?」


「そうだっけ?」


「オイこら父親」


「ふふん。カカあたりが伝説を上塗りすることでも期待しながら我慢するんだな。せんべいでも食うか?」


「食う」


「おお、まるで太陽を食ってるようだ」


「しょっぱい太陽だねぇ。バリバリ」




 ――街に一時の感動を与えたカツコに幸あれ。




 というわけで連続更新。


 太陽を喰らう伝説の怪獣カツコ、ここに降臨。


 さて、皆さんは日食見ました? 私は観測イベントに参加しまして、日食グラスからも望遠鏡からも欠けてる様子を見てきました。

 作中でもあったように、ちょうどよく雲ってくれたりして肉眼で見ることもできました。結構暗くなったし、ちょっと感動!


 その感動を怪獣で台無しにしてごめんなさい。


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