カカの天下782「カカとドラマ」
こんばんは、トメです。
ただいまカカと一緒に夕飯をもくもく食べながら、テレビドラマを見ています。
「もくもく。ねぇトメ兄、このドラマおもしろくないね」
「うん」
同意も同意。話自体も陳腐だけど、それより主演女優がヘタすぎる。綺麗って理由だけで選ばれたな、この人。
「早くお母さんのドラマが見たいなぁ」
「そういや延期になったんだな、母さんがやる『枝毛が止まらない』ってドラマ」
「なんでも話の内容が恐ろしすぎて、主役のお父さん役とお母さん役と妹役が全部逃げ出したらしいよ」
その話自体が恐いわ。
「だからその役を全部お母さんがやることになって、撮影に時間がかかっているとか」
カカの言ったことを理解するまで一分かかった。
「……は? 一人、三役?」
「や、元々主役だから、四役」
「なにその母さんワールド」
「監督がヤケで発案して、試しにやってみたら思ったより面白そうだったから採用されたらしいよ、お母さん曰く」
「枝毛じゃなくて別のもんが止まらなくなってるじゃん」
「お母さんファンはウハウハだね」
どこまでいくんだろう、母さんと枝毛は。
「それはともかく。このドラマ、ほんっとにつまらないね。私が監督したほうが絶対おもしろいよ」
「ほほう。じゃあカカならどんなドラマを作る?」
「例えば……このサラダ」
カカはテーブルに乗っている、食べかけの明太子と大根のサラダを指差した。じゃなくて箸差した。
「箸を無闇な方向へ向けてはいけません。それで、そのサラダがどうした」
「サラだ!!」
「言うと思った」
「麺、太鼓、サラだ!」
「サラさんに何が起こってる」
確かになんかドラマはできそうだけど。
「ま、今のは言ってみたかっただけ」
今のはも何もおまえ基本的にそれしかないだろ。
「私の題材は、隣のサラダ」
大根サラダの隣、もう一つの明太子サラダに目をやる。そしてカカが口を開いた。
「一緒に住んで、はや一年。彼は今日も帰ってこない。仕事だ仕事だと言いながら、あの女と会っているのはもはや明確。もう我慢ならない、別れなければ!!」
なんだいきなり。
「でもその前に復讐してやるわ。明日の靴には噛みまくったガムをたっぷり詰めてやる、明日のお弁当には今キレた勢いで割っちゃった湯のみを入れてやる、明日の鞄の中に猫の死体を入れてやる、ちゃんと防臭加工して会社に入るまで気づかないようにしてやる、しかも社長の愛猫にしてやる、調理法とか細かく書いて最後に『さぁ美味しく召し上がれ』って書いてやる。賞味期限は明日よ。お早めに!」
あの、いま夕食中なんですけど。
「私の作戦が組みあがっていく。そう、これは制裁よ。あの人が私を裏切った罰を下す! そしてキッパリと別れてやるわ……この、一年間お世話になった、家を捨てて……」
カカが瞳をきらりと光らせ、ソレを見る。
「ドラマ、『居別!!』」
それキャベツだから。キョベツじゃないから。
「キョャベツ」
「発音しにくいです」
「主役はサラだ!!」
「そっちに繋がるんだ」
なぜだろう、失礼ながらちょっと似合うかもしれない。湯のみとか割る辺りが。
「もちろんハッピーエンド」
「どこをどうしたらそうなるのかすごく見たい」
「そしてカカ監督のドラマ第二弾が始まる」
「かかかんとくって言いづらい」
「聞け! こほん……あ、そうだ。ねぇトメ兄、聞いていい?」
「聞けばいいのか聞かれればいいのかどっちだ」
「なんでもいいじゃん。それよりさ、確か自分のことを『しょーせい』って呼んだりする人いるよね?」
「小生、な。僕は実際に見たことないけど、いるらしいぞ」
「よし……今度こそコホン! 小生には現在、大問題が起きておる。割れる、割れるのだ。小生の大切な場所が、割れてしまう。誰か助けてくれ!」
今度はシリアスだな。でもカカの視線の先にはソーセージ。
「ドラマ『小生、痔』」
痔ですか。大事な場所ってお尻ですか。何度も言うけど食事中なんだけど。
「もちろんハッピーエンド」
「最終回に痔が治るんだな」
「めでたしめでたし」
「治るまでにはどんなドラマがあるんだ?」
「どんどん割れてくの」
「とことん見たくないな」
「そしてカカ監督ドラマ、第三弾!」
「もうお腹いっぱいなんだけど」
「『キョャベツVSしょうせいぢ』」
「戦うんだ」
カカの右手には一本の箸で刺されたキャベツ、そして左手にはもう一本の箸と、それに刺されたソーセージ。
「キョャベツが吼える、なによ、私の方がおもしろいんだから! あれだけやって裁判沙汰にして更に勝っちゃうんだから! しょうせいぢが反論する! いいや、俺のほうがおもしろいね! なにせもっと割れてやるんだから! キョャベツ叫ぶ! 血を見るわよ! しょうせいぢも叫ぶ! 俺なんか最初から見とるわ! なにせ割れてるからな! さぁさぁこの勝負どっちが勝つのか! おっとまずはしょうせいぢが仕掛けた! 切れ痔ビーム! 赤い、このビームは赤いぞー!!」
ハイテンションで両手を動かすカカの頭に拳骨を一発。
「ってぁい! ……うぅ、なにするのよぅ、トメ兄」
「食べ物で遊ぶんじゃありません」
「今のでキョャベツの勝ち」
「なんでだ」
うん、しかし。
確かにあのドラマよりカカのほうがおもしろかった。
久々にトメとカカが喋り続けるだけの話を書きました。ちょっとこんなダラダラを続けよっかなーと思います。
最近ダラダラしてないですからね。あー皆さんも一緒にダラダラしましょー。息抜き息抜き。カカ天は基本的にダラダラ読むもんですから。うん。
カカが熱い? あんまダラダラしてない?
よしわかった。次はもっとダラダラさせてやる。
それにしてもダラダラ連呼しすぎだ私。