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カカの天下  作者: ルシカ
781/917

カカの天下781「デザートみたいに甘くない」

 こんにちは、サラです!!


 今日はなんと、トメさんとお茶をご一緒する日なのです! 半ば強引に取り付けた約束ですが、デートはデート。久々の恋愛感溢れるイベントに胸の高鳴りが隠せません。


「たしかにねーちゃんの胸は高い。隠せない」


「あら、物理的な高さでしょうか。それともお値段がですか? 確かにお姉様はお高くつきそうな素晴らしい胸をお持ちと思いますが」


「お持ちっていうか、むしろモチじゃね?」


「こら、弟ちゃんも妹ちゃんもそういうこと言わないの!」


「甘いぞ子供たちよ、胸といえばモチモチよりもムチムチだ」


「お父さん!!」


 私の家族はいつの間にこんな元気になったんでしょう。確かに元気に笑っていこうって誓いましたけど。こんなカカちゃんたちみたいに……って、そういやあの子らを参考にしろって言ったの私じゃん。がーん。


 ま、まぁいいわ。ともかく今日はデートなのよ。


 騒がしい家族を捨て置いて出かける私。目指すは待ち合わせ場所、そしてその後はお気に入りの喫茶店でお茶とおしゃべりが待ってるわ。トメさん好みの和風デザートもあるステキなお店だし、いい雰囲気になってくれればいいけど……


 でもなぜか待ち合わせ場所はファミレス東治の前。


 それがいけなかった。


「あ、トメさーん……げ」


「や、サラさん」


「よぅ、サラ」


 なんと、ファミレス東治へ普通に食事しようとやってきたテンカさんと鉢合わせしてしまったのだ。おのれファミレス東治。


「こないだはトメに奢ってもらったしよ、今度はオレが奢る番だしちょうどいいぜ。サラの分も奢るぞ? 給料入ったからには恐いもん無しだぜ!」


 なんというお邪魔虫。


「やったなサラさん!」


 そして素直に奢られるのが嬉しいらしいトメさん……ダメよサラ、怒ってはダメ。だって彼は主婦みたいなものだもの、出費が減ると喜ばずにはいられないのよ。私と二人きりよりも奢りが大事なのね、とか思ってはダメ。


「あん? なんだサラ、随分と不満そうじゃねぇか」


「へ、そ、その」


「まさかデートってわけじゃねぇだろうし、別にいいだろ?」


「…………」


「あぁん? まさかデートなのか。サラってトメのことは友達と思ってんじゃなかったっけ」


 トメさんに聞こえないように耳元で言われ、顔が赤くなったのを感じる。それを見てテンカさんは全てを理解した。


「なーなー! トメ! サラさんなー、トメのことがなー?」


「ちょちょちょちょっとテンカさん!? あなたどこの小学生ですか!!」


「貴桜小学校の」


「小学生ではないでしょうが!!」


 ものすごくニヤニヤされてるぅぅぅ! と、身と心の危険を感じていたそのとき。


「おやおや、騒がしいと思ったらあなたたちでしたか」


 お邪魔虫二人目、ファミレス東治のバイトリーダーキリヤさん出現。つくづくおのれファミレス東治め。そもそもなんでここが待ち合わせ場所なんだろう。謎だわ。


「おや、サラさんはどうしたのですか?」


「おう耳貸せや。実は」


 テンカさんがキリヤさんの耳にごにょごにょ、って――


「ねーねートメ君、サラさんってばトメ君のことねーえー?」


「キリヤさんまでやるんですかい!?」


「私の小学校はもうちょっと西にあります」


「聞いてないし!」 


 あぁもう! 滅茶苦茶よぅ。


「なぁ、さっきからなんなんだよ。とりあえず皆でお茶しようってことでいいのか?」


 トメさん本人はさっぱりわかってないし!


「……行きますか、テンカさん」


「……ああ。さすがに可哀想に思えてきた」


 しかしなんと、トメさんのあまりの鈍っぷりに呆れてくれた二人が気を利かせて解散してくれた! 喜んでいいんだか悪いんだか。


「あれ。なぁなぁ奢りは?」


「トメさん、行きましょう」


「でも、奢り……」


「いいから!!」




 相変わらず恋愛へ発想するのが苦手なトメさんだけど、なんとか喫茶店に連れ込むことに成功。お茶もきた、お菓子もきた。これからが本番!


 でもこの人を相手に、一体どうやって恋味たっぷりな会話をしてみせよう? どうすればいい雰囲気になるのかな。んーと、んーと。


「よし、サラさん」


 そんな風に悩んでいたんだけど、トメさんから口を開いてくれた。やっぱり男の人はこういうときにリードしてくれるのね!


 真剣な表情……な、何を話してくれるんだろう。


「それじゃ相談を受けようか」


「……へ?」


「なんだよ。今回の目的を忘れたのか?」


 なんでしたっけ。


「サラさんがなぜ、スーパーおっぱいなんて言い始めたのか。その相談を受けるために僕は来たんだ」


 そうだったあああああああああああああ!!


「さぁサラさん。一体なにがあったの!?」


「え、えぇ、えぇとぉ」


「よほどのことが無い限り、あのサラさんがスーパーおっぱいなんて発言するわけないよね?」


 どうしよう。


 なんかピンチだ。


 よくわかんないけどピンチだわ!


「さぁ、サラさん! なんでスーパーおっぱいと!?」


「うー、あー」




 後日。こっそりついてきていたテンカさんたちに私とトメさんの会話を聞かれていたことが判明。


 すごく真剣な表情でおっぱいについて語っていた(風に聞こえた)私たちは、おっぱいコンビとして仲間内で有名になってしまった。


「聞いたよ、サラちゃん」


「な、なんですかカツコさん」


「トメと二人で、おっぱいバズーカを発射するために頑張ってるんだって?」


「頑張り方がさっぱりわかりません!」


「あたしも協力するよ!」


「勘弁してください!!」


 ほんと勘弁してください……うぅ、やっぱりうまくいかないなぁ……


「まずはトメのおっぱいをサラちゃんサイズに!」


「ちょっと見たいじゃないですか!!」


 ……これはちょっとうまくいってほしい。




 はいサラさんざんねーん。がんばー。


 トメざんねーん。ざまぁー。


 姉ないすー、がんばー笑 


 ああ、それにしても豪華な白玉あんみつが食べたい。

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