カカの天下78「素直じゃない子」
ちわ、面倒くさい授業も終わったところのカカと申します。
さて今日も帰ろうか、そう思ったところで。
「サエちゃん、あれって本当に何なのかな。普通に入ってくればいいのに」
「わかんない。とりあえず聞いてみればいいんじゃないかなー」
と、いうわけで。
昨日や一昨日と同じように授業が終わってから私達の教室前をウロウロしているサユカちゃんに話しかけることにしました。
「なにしてるの。サユカちゃん」
「むっ!? 出たわねカカすけ!」
「そうそう、最近お通じがようやく出るようになったのよ」
「そっかーちゃんと出たんだ。でもサユカちゃんはなんで知ってるんだろ」
「見てたの? やーらし」
「なんでやねん!!」
サユカちゃんは相変わらず正統派なツッコミをしてくれる。でもちょっとおもしろみが足りないな。トメ兄を見習え。
「で、なにしてるの。一緒に帰りたいの?」
「違うっ。まず説明すると……わたしにとってカカすけは敵なの」
「ふむふむ」
「そして、わたしは敵の様子を探りにきてるってわけ。弱点ないか、とかね」
「そんな危ないこと考えてる人と一緒にいる必要ないね。じゃサエちゃん、二人で帰ろうか」
「……え」
あ、ちょっと本気で寂しそうな顔した。
「探るなんて、あからさまにそんなこと言っちゃダメだよ、サユカちゃん。そういうことは胸の内に隠しておいて、上辺だけでも仲良く見せるものなんだよー?」
うーん、サエちゃん、本当にたくましくなったもんだ。私のおかげで。
あれ、「お前のせいで、だろ」ってトメ兄の声が聞こえた気がするのは気のせいか。
「じゃ、じゃあ! 今のは嘘っ」
じゃあ、とか言ってるけど本当に嘘なんだろうな。わかってるんだけど……
「へぇ、私達と一緒に帰りたいんだ」
「う……そ、そうよ」
「私達ともっと仲良くなりたいんだ」
「うううっ……そ、そそそうよ」
恥ずかしさに悶える顔がたまらんね。
ん? 「おやじくさい」ってトメ兄の声が聞こえたような……これも気のせいだよね。
「私達のこと愛してるんだ」
「そ、そ、そ……そう? あれ? そう、じゃ、ないけどそういうことにしたほうが……え、どうしよう!?」
本当、素直じゃないのに素直だなーこの子は。かーわい。
「はいはい、これくらいにして。カカちゃんもサユカちゃんも一緒に帰ろ?」
「うう……サエすけはカカすけのこと愛してるの?」
「うん」
ぼんっ!! と私の顔が爆発した。
「ちょちょちょちょちょっと! なななななななななななななにを言ってるの」
「じゃ、わたしも愛してるってことにしておこ」
「えっ!? ちょっと、じゃあ三角関係に……! え、ちょっとサエちゃんそんなにくっついて、もしかして誘ってる!?」
「カカちゃんナニ言ってるの?」
やばいやばいやばいいつものクールな私はどこいった!?
サエちゃんの突然の言葉に私の混乱は絶頂ピークで宇宙まで飛んでってあらフシギ火星にはやっぱ火星人がいるんだなぁと思ったのも束の間その火星人達の顔が全部トメ兄の顔でしかも揃って「おまえさ、本当にその道でいいのか」とかわけわかんないことを言ってきて――
「ちょっとカカすけ。どうしたの。なんか顔色が信号機のごとく変わりまくってもはや虹色よ?」
「しかも空の虹じゃなくて、こぼれた油とかに浮かぶ変な虹色だねー」
「……え、えっとね」
急に取り乱した私をフシギそうに見つめる二人の視線で、とりあえず頭は少し冷えた。
「か、帰ろうか」
「んー……? うん」
「仕方なく帰ってやるわよ」
うーん、サユカちゃんをからかってやるつもりがとんだ返り討ちに……でもサユカちゃん別に悪くないしなぁ。この行き場のない怒りっぽい感情はどうしてくれようか。
あ、そうだ。
あそこにぶつけよう。
「トメ兄は今日いちいちうるさいんだよ!!」
「は? 僕、帰ってきてからまだ何も言ってないぞ」
「この道でいいんだよっ。なんかハーレムっぽいのもいいじゃない!!」
「いや、何の話?」
「ふー、すっきり。もう余計なこと言わないでよね」
「……一体なんなんだ我が妹よ。こら、妙にすがすがしい顔で去っていくな」