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カカの天下  作者: ルシカ
779/917

カカの天下779「継続は力なり」

 おはようございます、サラです。


 最近は雨が続いていましたが、今日はいいお天気。私は清々しい気分で、家族のために朝食を作っていました。


「んぁ……ねーちゃんおはよ」


「あら弟ちゃん。珍しく早いんだね、おはよう」


 いつもならお父さんと寝ぼすけナンバーワンを争っている弟、ヤナツ君がパジャマ姿で台所までやってきた。まぶたが重いらしく、半分目が開いてない。あまり見えていないまま冷蔵庫に向かったせいか、私に真正面からぶつかった。


「……おう」


 寝ぼけた顔が私の胸に直撃、ぽよんと跳ね返されるヤナツ君。


「おはようございます」


「えーと、弟ちゃん。どこに挨拶したの?」


「おっぱい」


「お姉ちゃんのおっぱいに別人格はありません!」


「こんなにでけーのに、なんで彼氏いないんだ?」


「大きなお世話です!!」


「大きいのはおっぱいだろ!」


「なんでワケのわからない理由でキレてるの!?」


「朝だからだ! 寝ぼけてるんだ!」


「自分で言ってれば世話ないよ! さっさと顔洗いなさい!」


 まったくもう……あ、妹ちゃんが起きてきた。別名イチョウちゃん、らしい。


「おはよう! 今日は久々に弟ちゃんのほうが起きるの早いよー」


「ふぁ……おぱようございます」


 おぱ……?


「だからなんでおっぱいに挨拶するの」


「いえ、噛んだだけです。目線がそっちにいってるのは身長の問題と、寝起きで顔を上げるのが辛いだけですわ」


 スラスラとまぁ……最近はこの子も侮れないからなぁ。


「ところでなぜお姉様には彼氏ができないのでしょう」


「……もしかして私たちの会話、聞いてた?」


「はい? よくわかりませんけど、その豊満な胸を見てなんとなく思いついたのですが」


 この兄妹はそろってホントにもー。


「んぅ……おは、よう……ふあぁ」


 あら、天気がいいからかしら。いつもは誰かが起こさないと寝たままのお父さんが、自分から起きてくるなんて。


「む」


 ふと立ち止まるお父さん。目線は、また私の胸?


「はぁ……死んだ母さんのほうがでかかった」


「大きなお世話すぎるわよ!!」


 うちの家族はほんっとにもー!!




 ――とはいえ。うちでは割と何度もあるやりとりなので気にせずに仕事へ行き、お花屋さんを頑張った。そう、いつものこと。なのに少し気になった。


「彼氏……か」


 仕事の合間にふと考える。前にトメさんを追っかけてたときに「やっぱ彼氏はいいや」って自己完結したんだけど……やっぱり、いて困るもんでもないのよねぇ。きっと。


「やっぱアレが原因かなぁ」


 先ほど花屋の前を通った二人。こっちは仕事中だけど、向こうはお互い昼に仕事が無い身なのか、騒ぎながらも楽しそうに歩いていた。


 キリヤさんと、ユカさん。


 あの二人を見ていると……なんかムカつく。


 じゃなくて!


 仲のいい彼氏、彼女って、外から見ると……


 やっぱりムカつく。


 でもなくて!


「ちょっといいなぁ、って思うのよねぇ」


 でも私の周りの彼氏候補といえば……うぅん、トメさんくらいだよね。


「でも友達宣言しちゃったしなぁ……いつぞやのホワイトデーにくれた手紙も、思いっきり『これからも友達で』とか書いてあったし……それでもいいんだけどさぁ」


 なんにせよ、悩んでも無駄かもしれない。


「慣れてない、からなぁ」


 私は同年代の女性に比べて、明らかに恋愛に疎い。かといって仲のいい同年代の女友達には恋愛なんて気にしない人ばっかりだから相談もしにくい。テンカさんとか、サカイさんとか……いやサカイさんに相談はしないと思うけど。ケンカしかしないし。


「サラちゃんサラちゃん、ご苦労様。ちょっと休憩したら?」


「あ、カツコさん。いいんですか?」


「いいよいいよ、そんだけ早く仕事やってくれたんなら少しくらい」


「ど、どうも……」


 花屋の先輩、カツコさん。


「いやぁ、それにしても仕事上手くなったねぇ。うっかりミスすることもなくなったし」


「ミスするたびにカツコさんがフォローしてくれたからですよ。私、おっちょこちょいなせいで同じ職場に長くいたことないから……」


「新人育成も仕事のうちよ、気にすんな」


 豪快に笑うカツコさん。格好いい。なんでこれで女性なんだろう。


「人ってね、なんでもすぐにできるもんじゃないのよ。よく『向いてない』とか言って職種をすぐに変えちゃう人いるけどさ、個人が向いてる仕事なんてそうそうないもんよ。つべこべ言わずに自分を向かせるしかないのさ」


「はぁ」


「世の中、うまくやる人間ってやつぁ自分を仕事に向かせた人だ。向いてる仕事を見つけた人じゃないんだよ」


 向いてる仕事がある人は確かにいる。でもきっと、見つけられない人のほうが多い――確かにそうだ。私は結局、あれだけ職を転々としても見つけられなかったし。この花屋さんだって最初はミス連発で覚えも悪く、とても向いてるとは思えなかった。


 でも、褒めてもらえるようになった。続けてきたおかげで。


「慣れてないのがなんだか知らないけど、同じことだよ?」


 カツコさんはにやりと笑った。さっきの独白を聞かれていたらしい。


「慣れてないなら、慣らせばいいんだよ。どうせ時間はあるじゃん? 死ぬまで」


 せっかくの人生。挑戦するだけしてみろってことか。


「……ありがとうございます、カツコさん」


「いいってことよ」


「それにしても不思議です。仕事中だとこんなに頼れる先輩なのに、なんでプライベートだと『ああ』なんですか?」


「そりゃあんた、それが社会人だからだよ」


 なんだかんだ言ってやっぱりこの人は人生の先輩だ。その笑顔に感謝しつつ、ちょっと決意してみた。


 もう一回、少しだけ頑張ってみようかな、と。


 友達宣言だって、もしかすると『向いてないから』って逃げたかっただけなのかもしれないし。




 というわけで。その日、夕飯の買いものにスーパーへ行くとトメさんを発見。早速突進してみた。試しに、珍しくハイテンションで。


「こんばんは! 超サラです!」


「お、おお。元気だねサラさん、こんばんは」


「いいえ、私は超サラです! スーパーサラです!」


「スパ皿? ああスパゲティの皿」


「違います!」


 いつものやりとり。でもほんの少しだけ積極的に。


「じゃあどこがスーパーなの?」


「胸です!」


 えっへんと開き直ってそこを張ってみた。


「…………そ、そう」


 ちょっと引かれた。しょぼーん……


 で、でも頑張るんだからね!! 


「スーパーおっぱい参上!!」


「さ、サラさん何があったの? 僕、相談に乗るよ?」


「じゃあ今度お茶しましょう!」


「うん、うん。だから落ち着いて」


 結果オーライ!!




 向いてる仕事、向いてることって、なかなかないんですよねぇ。私自身が何にも向いてない人間なんで。

 今の仕事しかり、前の仕事しかり。覚えが悪かったったらありゃしない。初めて書いた小説しかり。恥ずかしすぎて鼻血がでます。


 でも続けているうちに向いてることが見つかったりするもんです。よく『仕事するなら三年は続けろ』とかいいますが、その通りだと思います。続けられないよほどの理由が無い限りは、なんであれ続けてみるべきだと思います。

 それで身に付くことがきっとありますから。


 ……や、最近身近にちゃっちゃと仕事辞めまくってフラフラしてる人間がいたんで。

 それに加えてサラさん最近影薄いよーなにやってんのー! っぽい感想がちらほら見えたのでこんなん書いてみたわけです。


 もちっと頑張ってみようかサラさん。


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