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カカの天下  作者: ルシカ
777/917

カカの天下777「縁起イイ!!」

 こんばんは、トメです。


 今日は七夕ですね。我が家の庭には例年通り笹がぶっ刺さってます。姉が毎年どこから引っこ抜いて持ってくるのかは謎ですが、犯罪の匂いがするので今年も触れないでおきます。


「はいトメ兄、短冊! ちゃんと書いて吊るしてね」


「ああ、わかった。わかったけど……相変わらずクリスマスツリーみたいな笹だなぁ」


 去年と同じくキラキラする飾りをつけまくった笹の木は、相も変わらず無駄にご利益がありそうな気がしないでもない。


「トメ兄、てっぺん見て!」


 笹の木のてっぺん? 星の飾りでもあるのか。


「……なにあれ」


 てっぺんには確かに飾りがあった。しかしクリスマスツリーによくある星ではなく、立体の『7』が横に三つ並んでいたのだ。


「今日は七月七日でしょ。よく考えればすごくラッキーな日なんだよね」


「……なんで三つ並べた」


「そのほうが縁起いいかと」


 パチスロ屋のイベントにしか見えないんだけど。


「……や、短冊にしっかり願い事さえ書かれていれば大丈夫。これは七夕、願いを叶える笹の木だ。大丈夫、大丈夫」


 ほら、すでに吊るされているこの短冊なんかどうだろう。さぞかし夢のある願いが書かれているに違いない。どれどれ。


『豚のシャツ』


 どんな願いなのか見当もつかねぇ。


 全然大丈夫じゃない。なに豚のシャツって。むしろ僕がブーイングでブーブー言いたいくらいだ。


「なぁカカ、この短冊はどういう意味だ?」


「あ、トメ兄は知らないのか。んとね、私たちね、相談したんだよ。短冊に何を書いてお願いすればいいのかなって」


 私たちっていうのはカカサエサユカのおなじみトリオのことだろう。


「願い事って、簡単に言うとほしいものでしょ」


「まぁな」


「そんなわけで、今回の七夕はそれぞれが考えたラッキーアイテムを吊るすことになりました」


「なるほど」


 ……なるほど? 


 何が「なるほど」なのか微塵もわからない。


「なぁ。今、どうやって話が飛んだ?」


「お姉の背中に乗ってひとっ飛び」


 そうか……それなら仕方ないか……


「だからトメ兄も、自分が考えるラッキーアイテムを書いてね」


 そんな想定外すぎることを突然言われてもなぁ。ラッキーアイテムって自分で勝手に決めていいのか? 『豚のシャツ』を見る限り、いいんだろうけど。


「こんばんは、トメさん。カカちゃん」


「おやサラさん。こんばんは」


 言い忘れていたけど、今年もお月見パーティを開催する。仲のいい人には大体声をかけているから、結構集まるはずだ。うちはそんなに広くないけど、庭に集まって団子を口にしながらダラダラ話すくらいはできる。


「お客では私が一番乗りですかね? それでは早速、短冊を吊るさせてもらいます」


「サラさんもラッキーアイテムを書いてきたのか?」


「もちろん。事前に聞いてましたから」


「素直に書いてきたんだな。疑問に思わなかった?」


「やですねぇトメさん。カカちゃんの言うことに疑問を持ったって仕方ないでしょう」


 さすが付き合いが長いだけある。


「それで、サラさんのラッキーアイテムは?」


「おっぱい?」


「やめてくださいよカカちゃん!」


 おもわずそっちの膨らみに目がいってしまった。おのれカカ、ありがとう。


「それで、結局アイテムは」


「皿です」


 おお、開き直った。丸くなったなサラさん。


 いそいそと吊るされる短冊を見た。おお、本当に書いてある。


『四角い皿』


 丸くなったわけではないらしい。


 まぁ丸い皿なんてどこにでもあるから、ラッキーアイテムにするには身近すぎるよな。


「お団子の準備は終わってるんですか?」


「うん、大体は。だからのんびり皆が集まるのを待てばいいよ」


「はーい」


「のんびりだから、のんちゃんね」


「サラです!」


「そうだぞカカ、今日は四角いサラさんだ」


「え、丸いよ? おっぱいとか」


「私自身はただのサラです!」


「無料なんだね。使い捨て? おっぱいが」


「有料です! 耐用年数は結構長いです!」


 何に使うんだろーねーなんて会話してると、徐々に人が集まってきた。


「こんばんはー、トメお兄さん。カカちゃん」


「サエちゃん! ラッキーアイテム書いてきた?」


「私はラッキー顔にしてみたー」


 なんじゃそりゃ。サエちゃんの手元を覗き込む。


『きゃわいい表情』


「みんな、ラッキーになりたかったらきゃわいい表情をするんだよー? ほら、トメお兄さんも」


 ぜってぇしねぇ。男の意地にかけて。


「ふふ、明日のサエちゃんファンクラブはきゃわいい表情でいっぱいになるね」


 カカはなんか嬉しそうだけど想像するだけで気色悪いんですけど。古今東西、モデルとかでも無い限りはきゃわいい表情を作ろうとしたって本当にきゃわいくはなれないもんだ。男は特に。ていうかなんだ、きゃわいいって。可愛いじゃいかんのか。


「こんばんは、トメさんっ!」


「……サユカン、他の人にも挨拶しようよ」


 おっと、またもや来客が。


「こんばんは。サユカちゃんはどんなラッキーアイテムを書いてきたの?」


「はいっ! 頑張って変わったものを書いてきましたっ」


 カカの友達だからってソレ頑張らなくてもいいのに。


「わたしのはラッキー行動ですっ」


 ラッキーな行動……カカなら『十人以上の通行人がいる場所で片足立ちでくるくる回りながら全力全開で「でゅみゅみゅみゅう」と三十回叫ぶ(きゃわいい表情できゃわいい発音で)』とか言いそうだけど、サユカちゃんのは?


『肩たたき』


 平和だ。この子は平和だ。


「そ、それであの、トメさんっ!」


「はいな?」


「か、肩たたき、しても、いいですかっ!?」


「僕に? ま、まぁ、いいけど」


「では失礼してっ!」


 とりあえず縁側に座る。後ろに回ったサユカちゃんはトントンとリズムよく僕の肩を叩き始めた。別に凝ってはいないんだけど、なんか楽しそうに叩いてるのでこのままにしておこう。ときどき「えへ、えへへ」とか後ろから聞こえるのはあえてツッコまないほうがいいんだよな?


「皆さん、こんばんは!」


 お、キリヤだ。後ろには隠れるようにユカが。おーおーいいねぇ仲良くて。


「よ、キリヤ。短冊は――」


「私はラッキー名前を考えてきました!!」


 なぜ僕の周りにはアイデア派しかいないのか。 


「えと? それは何か、おまえの指定する名前ならラッキーになれるのか」


「はい。正確には文字です。この文字が入っている名前ならばラッキーです!」


 キリヤが掲げた短冊を見る。


『超』


「日本人にはレベル高い名前だな、おい」


「心配なさらず。自己紹介のときに『私は超キリヤです』とか言えばいいのです」


 すごい。何がすごいって、こいつが言うと違和感ないのがすごい。


「ユカは――」


「こ、こんばんは!!」


 いきなり何かと思った……ああ、他のみんなに挨拶したのか。口開く機会なかったもんな。まだうちの連中に慣れてなくて緊張してるのか。


 仕方ない。幼馴染として、話題提供でもしてフォローしてやるか。


「ユカは短冊に何書いてきたんだ?」


「トメに関係ないでしょ。肩なんか叩かれて、本当にジジィかババァみたいね。名前にぴったり。ちゃんと年金もらえてる?」


 幼馴染、玉砕。なんで僕にだけこんな風かね、この人は。


「こらこらユカさん、あまりそういう言い方をするものではないですよ。ここはこの超キリヤに免じて」


「免じれないわよ。大体あんたが変なこと言い出すからワタシまで恥ずかしいんじゃないの!」


「ここにいる人は大抵変ですよ?」


「あーあーだからワタシにも変になれって言いたいわけ!?」


「はっはっは、大丈夫、すでに結構変ですから」


「変態的に爽やかな顔してふざけてんじゃないわよ!」


「なにせ超キリヤですから」


 ……棘のあるモノ言いはキリヤにも向くようになったか。やっぱコレが素なんだなぁ。でもキリヤは上手いこと流すなぁ。お似合いだなぁ。


 ちらりと見えたユカの短冊には『黄色いハンカチ』と書いてあった。普通だ。でもこれから変になってくんだろうなぁ。


「クララ参上です!!」


 おっと、どこからともなくクララちゃんが。


「こんばんは、クララちゃん。短冊書いてきた?」


「もちろんです! 七夕のラッキーアイテムといえばこれですよ!」


 みんな七夕とか関係なしに書いてるけど、どれどれ? 七夕といえば……


『短冊』


 ……や、そりゃそうだけどもさ。短冊に『短冊』て書かんでも。


「タマも参上でしゅ!」


 どこからともなくパート2。


「タマちゃんの短冊は……」


『シュー』


 アイテム扱いですよ、警官のおにーさん。


「おぅ、随分と集まってんなぁ」


 テンの短冊は見るまでもない。十中八九、『酒』と書いてあるに違いない。


「どうもどうもー、差し入れを用意してたら遅れましたー」


 久々にサカイさん登場。短冊には『4』という数字。ラッキーナンバーにしては不吉だ。あえてサカイさんを信じるか、縁起が悪いとされる常識を信じるか、それは君次第。


「しかしいよいよ賑やかになってきたな」


 庭の中心に聳え立つ笹を囲むように、僕たちは思い思いの時を過ごしていた。


 早速ケンカしてるサラさんとサカイさん。議題はおっぱいだ。


 同じくケンカしてるんだかイチャついてるんだかわからないキリヤとユカ。いいぞ、もっとやれ。


 すでに一人だけ缶ビールを空け、目を細めながら笹を見上げているテン。その横にはタマちゃんとクララが同じように笹を見上げていた。たまにしている仕草はテンがビールを飲むマネをしているらしい。三人揃ってぐいっと。ちょっと面白い。


 「集まりすぎて狭いね」とか言いながらここぞとばかりにサエちゃんにひっついてるカカ。ほどほどにな。


 縁側には僕、後ろには未だに肩たたきしてるサユカちゃん。いいかげん肩が痛い。言わないけど。


「あれ、なんか忘れてるような」


 僕がそう呟いた瞬間、ソレはやってきた。


「ふはははははは!!」


 声高らかに現れたのは――


「短冊よ、我に力を! 豚の血で真っ赤なシャツを着込み! 頭には黄ばんだハンカチをねじりハチマキにして装着! 右手に四角い皿、左手に酒を持つ、きゃわいい4しゃいの超姉、シューに乗ってここに見参!」


 紛れも無いバケモノが現れた。


 笹を中心とした人の円が崩れた。みんなが一歩、引いたからだ。


「さぁ、この皿に月見だんごを乗せぃ! そして誰かあたしに肩たたきをするのだ」


 普通に叩いてやった。殴ったともいう。


「で、姉の短冊は? ラッキーアイテムはなんて書いたんだ」


『あたし』


「無茶言うな」


 とりあえずもっかい殴っておいた。えぇと、ラッキーアイテム、というかラッキー人物は『姉』ってことでいいかな。お姉さんでも、姐さんっぽい人でもいいから、そんな人と仲良くなればカツコ的祝福が降りるかもしれないとのことだ。


 全員のラッキーアイテム……や、『ラッキーなんちゃら』が笹に吊るされた。


 さぁみんな、好きな『ラッキーなんちゃら』を選んで、身につけたり近づいたり超自分とか言ったりしてみよう。運勢が少しだけよくなるぞ。しかも一週間は続くらしい。根拠はない。


 あ、僕の短冊?


 『漬物』だ。みんな、漬物食えよ。そしたら僕の祝福が降りるから。多分。


「さて、団子でも用意するか」


 縁起のいい『7』がそろった日。この日もこの先も、みんながラッキーでありますように。




 サブタイトルはどう見ても直球です。本当にありがとうございました。


 えー。あまり肩肘張らず、いつもどおりで、ちょっとラッキー混じりなお話にしてみました。


 さぁ皆さん、好きなキャラのラッキーなんちゃらを実行しましょう。一週間はラッキー期間が続きますよ。


 サエ様信仰者はちゃんと一週間、きゃわいい表情で過ごしてくださいね。

 キリヤ好きはちゃんと自分の名前に超をつけて話してくださいね。面接のときも「斉藤さん……あの、斉藤さん?」「いいえ、私は超斉藤です」とか答えるんですよ。

 

 なにせ今日は7月7日。そして777話。五つも7がそろってるのです。それぐらいのご利益はあるでしょう。

 ふふふ……最近の不定期更新を知っている人は、突然の連続更新にて今日777話をやるとは思わなかったはず。今までのはコレをやるための作戦だったのだよ!


 嘘です。昨日思いついて、というか気づいて頑張りました。あはは。感想欄でさらに7時7分に投稿を期待されてましたが、さすがにそいつぁ無理でした。今日は半月以上ぶりに久々のお休み、そんな時間に起きれません笑


 さてさて、皆さんにラッキーがありますように^^


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