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カカの天下  作者: ルシカ
773/917

カカの天下773「甘いもの食べたい」

 こんにちは、サエですー。


 今日は学校の後、いつもどおりにカカちゃんサユカちゃんと遊びました。ナマコになって、とても楽しかったです。皆がナマコ王になれて満足したから解散となったのですが、ちょっと消しゴムがなくなっているのを思い出したので商店街へと足を延ばしました。


「……甘いもの食べたいなー」


 今日はお母さんが遅く帰って来る日。できるだけ一緒にご飯を食べたい私としては待ってあげたい。でもお腹は空く。だからパフェでも食べてお母さんが来るまで辛抱したいところなんだけどー。


「あ、ファミレス東治」


 ここもパフェとかおいてるんだよねー。でも……財布の中を見る。222円しかない。お小遣いはもらっているものの、何かあったときのために貯金してるから手持ちは少ないんだよねー。消しゴム買えればいいやーと思ってたし。でも甘いものが食べたい。


「おー」


 なんとなしに店内を覗いたそのとき、私はいいものを発見した。


「いらっしゃいませ!」


 そして躊躇なく来店する私。


「おやおやサエちゃん、こんにちは」


「こんにちはーキリヤさん」


 かけもちバイトを増やしたらしいってトメお兄さんから聞いてたけど、さすがにここのシフトもしっかり入ってるみたいだねー。


「お席は……」


「あそこ」


「ですよね」


 キリヤは苦笑しながらも案内してくれた。席の前まで来ると「ではごゆっくり」と残してそそくさと去っていく。


 そして、その席には――そんなキリヤの後姿を憮然とした表情で睨んでいるユカさんが。ね? 色んな意味でいい者でしょー。


「ご一緒していいですかー?」


「……へ!? あ、ああ。君はたしか、カカちゃんのお友達?」


 お花見のときくらいしかまともに喋ってなかったけど、覚えていてくれたようでよかったー。


「挨拶が遅れたわね。こんにちは」


「こんにちはー」


 意外と礼儀正しい。


「何か飲む?」


「お金ないんですよー」


「子供から取ろうなんて思ってないわよ。好きなの言いなさいな」


 ……トメお兄さん以外にはホント優しいなーこの人。


「バナナジュースがいいです」


「了解、押すわよ」


 ベルのボタンを鳴らすと、すぐに店員さんが来てくれる。


「ご注文は?」


「……バナナジュース一つ」


 ただしキリヤじゃなかった。ユカさんは不満そうに唇を尖らせながらも注文してくれる。


 店員さんが去ってから、私は思ったことをそのまま口にした。


「なるほどー。勇気を出して彼氏さんが働いている店に来たものの、肝心の彼氏さんが構ってくれないものだから不満が満々でー、でもせっかく来たからには構ってもらわないと気が済まないっていう意地でここにいる感じですかー?」


「なんでわかるのよ!?」


 わかりやすい。


「なに。もしかしてあなた、子供ながらに恋愛しまくってるタイプ?」


 恋愛に敏感だからわかったのかーと言いたいみたい。でも確かに最近はそういうマセてる子が多いって聞くね。小学生なのに化粧してる子とか。


「そうとまでは言わないけどー、私の主観でよければアドバイスくらいはできると思うよー」


 お母さん直伝、相手から話を聞きだすときに常套句。『私の主観でよければ』というのがポイントだ。だって主観なんだから。あくまで思ったことをアドバイスっぽく言えばいい。


「……恋愛、詳しいの?」


 私は早くも届いたバナナジュースに口をつけ、とろけそうになるほっぺを支えながら幸せな甘みを堪能して……やがて返事をした。


「運」


「変わった発音をするのね」


 うん、とは言ってないよ。肯定する返事なんてしてないよ。だから嘘なんてついてないよ。大丈夫。恋愛話でしょ? 少女漫画いっぱい読んでるから。大丈夫。


「じゃあ相談してみようかしら。あの人……なんでワタシに構ってくれないのかしら」


「それを説明するにはチョコレートパフェが必要ですねー」


 そんなわけで注文され、やってきましたチョコレートパフェ。フルーツいっぱいにチョコソースたっぷり、おいしそー!!


「たとえばですねー、こうやって、もぐもぐ」


 さっきのバナナジュースもよかったけど、念願のパフェを食べることができて私の幸せパラメータは最高潮に達していた。


「こんな感じで、上からどんどん食べていくでしょー? これもたしかに美味しいんですけど、ここ! 一番下、チョコソースが溜まりに溜まった底の部分、これが一番美味しいんです」


「つまり?」


「最後に一番美味しい思いをすれば、人は満足できるんですよー。それまで苦労したなら、なおのこと。だからユカさんも、こんな風にもやもやした末にキリヤさんが抱きしめてくれたら、すごく満足できるんじゃないかとー。きっとそういう作戦なんですよ」


「なるほど……そんなようなことも、前に、あったような気が」


 あったんだ。やっぱりキリヤ、本気の恋愛となると上手くできないとか嘘でしょー。


「でも、だからって放っておかれるのは納得いかないんだけど」


「それはですねー、ユカさんに足りないものがあるからですよー」


「それは何?」


「それを説明するにはいちごクレープが必要ですー」


 そしてまたまたやってきました、クリームといちごソースを惜しげもなく使いまくった甘々しさ絶好調のクレープが! んー、クリームの甘みといちごの酸味、そしてクレープ生地の触感がたまらないー!


「ユカさんにはですねー、このクレープのような、包み込む優しさが足りないんですよー」


「た、足りないかしら」


「はい。なんだか包むというよりズバッと覆いかぶさるような勢いに見えますー」


「そうなのかしら……」


 余裕が大事なんだよねー、余裕が。全部少女漫画の受け売りだけど。それにしてもクレープおいしー。


「それで、ワタシはこれからどうすればいいのかしら!?」


「んー」


「ねぇ、相談に乗ってよ」


 もうお腹いっぱいなんだけどなー。


「えーと……じゃあ、あれです」


「あれ?」


「持ち帰り用のサンドイッチです」


 後で食べよう。


「はい、買ったわよ。これがどうなの?」


「三度以上アタックすればいいと思いますー」


「……ダジャレ?」


「そこまですればきっと、キリヤもお持ち帰りしてくれますよー」


「……なにを」


「ユカさんを」


 あ、顔が沸騰した。


「べ、別にそこまでしてほしいわけじゃないのよ!! ないんだからね! だから帰るわ!」


 これが証拠と言わんばかりの勢いで逃げ去っていくユカさん。うーん、誰かさんを見てるような気分だ。なんだかいつも一緒にいる誰かさんを。


「やれやれ、帰してしまいましたか」


「あ、キリヤ」 


 今の今までこっちのテーブルに近づきもしなかったキリヤが、いつの間にか隣に立っていた。


「せっかく焦らしに焦らして最後に抱きしめてあげようと思ってましたのに」


「……本当にそうするつもりだったんだー」


「はっはっは。さてサエちゃん? これは当店からのサービスです」


「カフェオレ?」


「白と黒が混ざり合って、最後にはやっぱり黒くなる。少し甘いけど、少し苦い。サエちゃんみたいでしょう?」


「……むー」


 反論できない。やっぱりできる大人は手ごわいなー。


 まぁいいや。美味しい思いできたし。ユカさんの悩みもちゃんと解決したし。


「あ、お会計」


「すごい勢いで逃げながらもユカさんがちゃんと払っていきましたよ」


 やっぱり律儀だあの人。


 うーん、それにしても。


 カフェオレおいし。


 あ、消しゴム買わないと。




 最近は安定していたのですが、なんか忙しくなってきたので更新遅れてきました。申し訳ない。

 そのくせサエちゃん書くと文字量が多めになってしまうから困る。愛だ。


 パフェ、クレープ、バナナジュース……ほしい。今すぐ!(いま仕事の休憩中


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