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カカの天下  作者: ルシカ
768/917

カカの天下768「結婚宣言」

「そういえばさ、サユカン。なんでトメ兄とユカさんがなんでもないってわかったの?」


「それは話せば長いことながら」


「そこを短くー」


「前にわたしとトメさんの誕生日だったじゃない。そのときに指輪をもらったんだけど」


「はいはい、その自慢はもう百回は聞いた」


「実はね、わたしがトメさんに贈ったのも指輪だったのよっ! あまりに運命的すぎる偶然よねっ!」


「そこまでうまいこと直感が働くと逆に気持ち悪い」


「なんかストーカーじみているというかー、呪いの類みたいだよねー」


「素直に驚いてよっ! わたしなんか驚きすぎて幸せすぎて自慢できなかったんだからっ!」


「それで、その呪いの指輪がなに?」


「祝いの指輪よっ! その、ね? ユカさんとのデート疑惑が持ち上がってるときに、トメさんが指輪をつけててくれたの。あの生真面目なトメさんが、前の女と付き合おうっていうときに他の女の子からもらった指輪をつけるわけないでしょ? 特にわたしなんか結婚して生涯を捧げます宣言してるのに」


「恐い」


「恐いって言うなっ!! とにかくっ、わたしはその指輪を見て確信したわ、ユカさんとは何かの間違いなんだってねっ! キリヤさんとユカさんがくっついたのは驚きだけど」


「ところでサユカちゃん。それならその指輪、婚約指輪なんだよねー? じゃあ薬指にはめればいいのに」


「ほんとだ、中指にはめてるや。それもなんか呪いの意味あるの?」


「呪いって言うなっ! こ、これはその……薬指は、指輪が本物になったときにとっておくのっ!」




 どうぞ、カレーです。召し上がれ。


 違った。どうも、インドです。


 ただいま休み時間。次の授業の準備をしていたのですが、ふと隣からカカちゃんたちが喋っている声が聞こえてきました。そこで気になる単語が。


「サユカちゃんが……婚約指輪……?」


「どうしたのですか、かのちゃん」


「あ、いっちゃん」


 同じく準備を終わらせたいっちゃんが寄ってきました。


「なんかね、サユカちゃんが婚約指輪を用意したらしいの」


「あら、随分と大人なんですのね」


「き、きっとタケダ君に用意したんだよ。どうしよう(注意:インドちゃんは周囲との交流が少ないため、『タケダがモテる』と途方も無い勘違いをしています)」


「えぇと、本当にタケダさんごときにあげると仰っていたのですか?」


「言ってない。とーめー人間がノロい、とか言ってた気もするけど」


「……あらあら、本当にどうしましょう(注意:多少カカたちと交流のあるイチョウさんはなんとなく察しつつもあえてツッコまないことにしました)」


「私も負けないようにしなきゃ。そうだ、こんなときはメルちゃんに相談しよう!」


 週に数回はメールしてるメルちゃん。とても気さくで面白く、優しい彼女はきっと相談にのってくれるはず。ぽちぽち……どうすればいいの、と。送信!


「おらー、授業はじめっぞー。席につけ」


「席の煮付けってなんですか?」


「カカ、それはあまり面白くない」


「ざんねーん」


 あ、返信がくる前に授業が始まっちゃった。とりあえず授業に集中!




 ……授業が終わって、一分も経たずに返信がきた。まるで授業が終わるのを待っていたような、むしろ同じ授業を受けていたかのようなタイミング。


 偶然ってあるんだなぁ。そんなことを思いながらメールを開いた。


『ふんじばって無理やり誓わせればいい』


 なるほど!


「かのちゃん、どうするの?」


「ふんじばって無理やり誓わせる」


「ダメですよ! かのちゃんがどれだけそのメルちゃんを信用してるかは知りませんけど、そんなのはダメですわ。ここはわたくしが尊敬する人に相談してみますから!」


 そう言っていっちゃんは自分の携帯を取り出して、ぽちぽちメールを打ち始めた。やがて送信ボタンを押して……すぐに返信がきたみたい。


「なんて書いてあった?」


「よし、わかりましたわ」


「うん」


「ふんじばって無理やり誓わせましょう」


 同じ返答だったんだ。


「ちなみにその尊敬してる人って誰なの?」


「ふふ、恥ずかしながらわたくし、とあるファンクラブの副会長をしてまして。サ――そのお方に直接聞いたのですよ。副会長特権ですわね!」


「へー。よくわかんないけど、会長さんは誰なの?」


「うーん、てっきり事務のゆーたさんかと思いましたが、あの方もわたくしと同じ副会長みたいですし……謎ですわ」


 そっかー。ほんとよくわかんないけど。


「おらー、授業やっぞー。ちゃくせーき」


「はーい」


「……おいカカ、ボケは?」


「え、毎回やんなきゃならないんですか!?」


 先生がきた。とりあえず授業に集中!


「あ、かのちゃん? プロポーズの言葉、ちゃんと考えておいてね」


 え、わ、そっか、どうしよう。授業に集中できない!


「さて、算数の時間だが……まずは! オレの今日の夕食は何がいいか、決めたいと思う」


 集中できなくていいや。だって答えは一瞬で出ます。カレーですよカレー。えっと、プロポーズの言葉……




 そして、昼休み。


 とりあえずタケダ君をふんじばりました。


「な、何をするのかね!?」


 場所は屋上。不意をついて縛り上げたタケダ君は怯えてる。可愛い。


「さぁ、かのちゃん。言ってあげて!」


「うん……」


 どきどき。


 どきどき。


 私の、結婚を誓う言葉を、今こそ!


「あなたのカレーを食べたいです!」


 なんで二人とも目が点になってるんだろう。


「……え、あの、それプロポーズの言葉?」


「ま、毎日味噌汁作ってほしい、っていうのを参考にしたんですけど」


「怒涛の勢いでわかりにくいですが……た、タケダさんに伝わりましたかね?」


 いっちゃんと二人でタケダ君の様子を見る。


「そうか……」


 あ、わかってくれたかな?


「俺をカレーの具にして食べる気だな!(あなたのカレー=タケダのカレー=タケダを具にしたカレー、と勘違いしたみたいです)」


 い、いくらなんでも、そんな美味しそうなことなんて考えてないのに! ひどい!


「離せ! 俺は食われるのはごめんだ!」


「ま、まぁまぁ落ち着いて。かのちゃんにそんなつもりはなくてですね」


「やはり元凶はおまえか、イチョウ! 影の黒幕というわけだな! ああ、前からそんな顔をしていると思っていた」


「わ、わたくしは前からどんな顔をしていたんでしょうか……」


「タケダ君のバカ!」


 なんでわかってくれないんだろう。私は悲しくて逃げ出してしまった。


「……え、俺が悪者!?」


「そうですね、悪者です。そしてわたくしはそれを退治しようとする黒幕……ふふふ」


「へ、いや」


「だってそういう顔なんですわよね!?」


「ご、ごめんなさい、つい口が滑ってああああああああ!!」


 後ろから声が聞こえるけど、私は悲しくて聞いてなかった。


 だって、勇気を出したんだよ? あなたのカレーを食べたいって……ああ恥ずかしい! なんて恥ずかしい!


 でもわかってくれなかった。くすん。




 わかってくれなかった。

 そりゃそうだ、とお思いのそこのあなた。

 デスヨネー。


 あと、今日のサブタイトルを見てトメ関連だと思ったそこのあなた。


 ざんねーん。


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