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カカの天下  作者: ルシカ
765/917

カカの天下765「ユカさん、お願いします」

 ……こんにちは、ユカです。ただいま最悪な気分です。はぁ。


「めっちゃらかったら!」


「らびんびべんぽ!」


 それというのも、その、彼氏になってしまったキリヤのことです。彼は、とてもつかみ所がなくて……


「ぽっぴんぱ、てーしゅくてーでんべんたらさ!」


「さちゃい」


 さっきもいきなり現れたトメたち相手に驚くどころか『さぁさぁ始まりますよキリヤの恋物語! 聞きたい人はあとで私にラーメン奢ってください! OK? OK!! では始めましょう!』とか言い出してノリノリで話し始めるし……


「いんどぺんでんすどい!」


「いんでぺんでいすででぃ!」


 思わず逃げ出しちゃったわよワタシ。はぁ……今頃いろいろと話してるのかしら。あの人のことだから、あることないこと適当にうまく話しそうだけど。あーあーでもわからない、あの人わからない。なんかいつも笑ってるし。なんか不可解なほど口回るし。


「いにゃなやうんついすしとととととととと!」


「とんとととんとんトントントン!」


 あーあー、でも。


「クララの勝ちです!」


「タマ負けたでしゅ……」


 この子たちのほうがわからないわ。


「クララちゃん、タマちゃん? さっきから私の後ろで何してるの?」


「もちろんしりとりです」


 し、しりとりだったんだ。意味不明な言葉ばっかりで全然気づかなかった。でもなんで? そんな視線を感じ取ったのか、クララちゃんは答えてくれた。


「実はですね、いきなり気持ちよさそうな顔して逃げ出したユカを追ってきたものの上の空だったので暇つぶしを始めたのです」


「き、気持ちよさそうな顔って何よ! ワタシは恥ずかしかったの!」


「キリヤがノロケを始めたのが嬉しかったんじゃないのですか?」


「嬉しいわけないでしょが!!」


 な、なによこの子……小さいくせに妙に耳年増ね。本当に見た目通りの年齢なのかしら。


「じゃ、そゆことにしておくでしゅ」


 タマちゃんも変に聞き分けいいし。なんだこの二人。


「それでユカ、キリヤとはどんな風にラブラブなのですか?」


「なっ!?」


「おー、らぶらぶでしゅか」


「そうですよ、タマ。大人は恋人と二人だけになるとラブラブするのです。他の人に見せられないくらい甘くとろける時間なのです。クララそのときの話が聞きたいです!」


 ほんとなんだこの子!? なんでこうピンポイントで恥ずかしいところを突いてくるのよ! 子供なら子供らしくワタシの怒鳴り声に怯えて引っ込んでなさいよ! なによその「ハイハイ恥ずかしいんですね」みたいな顔! いつもは全開でガキなくせに今は子供らしくないったらありゃしない!


「……そんなこと、あなたたちには関係ないわ。ワタシは帰る!」


「わかりました。えっちなことばかりしてるって皆に報告します」


「待てぇぇぇぇぇぇ!!」


 なによその「どうしたんですか?」っていう無垢な顔は! 絶対わかっててやってるくせに!


「大体ね。まだ付き合い始めたばかりなんだから、そんな話はないわよ!」


「じゃあ付き合うまではどうだったんですか? ラブラブしてませんでしたか?」


「し……してた、けど……」


「クララわくわくです! どんなことしてたのですか!?」


「べ、別に大したことはしてないわよ……その、彼ったらよく病院の前を通るようになったのね? 仕事へ行く道を変えただけって言ってたけど、あんまりにも通るから、ワタシもなんだか無視するのは悪いなって思って、外に出て、声かけて、一緒に、ご飯食べたりして」


 そ、その店がよりによって、カウンターしか空いてなかったりして、すぐ隣同士に座って。そしたらそしたら、彼ったらいきなり「好きです」なんて言ってきて。


 それも周りに聞こえないように耳元で囁いてきて、くすぐったくて逃げようとしても手を握られたら逃げられなくて、また「好きです」なんて言われて。


 それしか言えないのか、とか。もっと気の利いたこと言いなさいよ、とか。


 そんな反論しても「だって大好きですから」なんて言われたら何も喋れなくなって! あーあー思い出すだけで顔が核爆発するわ! だいたいなんで「好き」とか言うのよ! 優男なら優男らしく「愛してる」とか言いなさいよ! それを「好き」とか連発するから逆に可愛いとか思っちゃってわあああ! さっきだってさっきだって! 誰も見てないのを確認してからいきなりちゅーされて! 絶句したワタシがなんとか抗議しようとしたら「はっはっは、つい♪」なんて言われてまた何も言えなくなって――


「ってワタシはどんだけ暴露してるのよおおお!」


「しりとり」


「り、り……」


「そしてチビすけどもは聞いてないし! ワタシってばすごく恥ずかしいヤツじゃないの!!」


「それで、どこからどこまでが妄想なのですか?」


「あーあー! 知らない知らない! どうでしょうねー! 全部妄想かもしれないし全部本当のことかもしれないわねー!」


「とりあえずらぶですね」


「らぶらぶでしゅね」


「知らないもん知らないもん! ワタシもう知らないもん! 何が本当かはそっちで判断しちゃいなさいよバーカ!!」


「やっぱり気持ちよさそうです」


「どこがよおおおおおお!!」


 はぁ……いや、ほんと。真実は想像に任せます、ええ。




 ――オマケ。


「……あの人」


 それを遠目に見ていたサユカちゃん。


「ユカさん、よね。なにしてるのかしら、というか」


 サユカちゃんは「うーん?」と首を傾げながら、


「ああいう暴走、誰かに似てるような……誰に似てるのかしら」


 知らぬは本人ばかりなり。




 果たして真実はいかに。


 キリヤの言うように、口下手ながらもなんとか上手くいったのか。


 ユカさんの言うように、常にキリヤの口撃がずっきゅんずっきゅんとハートを撃っていたのか。


 てか、ちゅーしたのか?


 二人がくっついたのだけは確実な事実。それ以外の真実はご想像にお任せします。

 

 ……いやまぁ、結局ユカさんから告白したのを考えれば……ねぇ?


 最後のおまけは、載せる直前に思いつきました。書き終わってから誰かに似てるなーと。

 この二人に妄想合戦させるのも楽しそうだなぁ。


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