カカの天下761「怪獣サユカン」
「あんぎゃああああああああ!!」
注意、叫び声はイメージです。どうもカカです。ちなみにこれは私のイメージ映像……違うな。私のイメージ文章です。
「ぎしゃあああああああああああああ!!(イメージです)」
場所は私の部屋。先ほどまでトメ兄とユカさんラブラブ疑惑について会議してたんだけど、やがて限界を超えたらしい彼女が壊れ始めたのです。
なんかイメージ的にも人としてヤヴァイ方向へ向かっているのは――恋の怪獣サユカン。そう、彼女はトメ兄へ想いが強すぎたせいか変貌してしまったのだ。
「どうしよーカカちゃん。サユカちゃんを退治するか封印するかしないと」
「トメ兄が帰って来る前に決着をつけないといけないね。サワサカのおじいさんは?」
「逃げたー」
あのジジイ、煽るだけ煽って自分だけ……オイシイな、参考になる。今度私もやろう。でもこういうことはサエちゃんのほうが先にやりそうな気もする。
「それで、カカちゃん? どうするー、あれ」
あれ、と言われて再度サユカンのほうを見た。
「ぐぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃががががががががががぁっ!!(あくまでイメージです)」
どうしよう。このままだとトメ兄が食べられちゃう。
「なんとかして落ち着かせよう! サエちゃん、手はある?」
「うん、まかせてー。獣には獣で対抗だよー。いでよ、サカイ動物園!」
けもののむれがあらわれた!
モー!(日本経済)ブー!(豚野郎)ワンワンワン!(ラスカル)メェェェ!(経営破綻&財政困難)
「さぁ、サユカちゃんを止めるんだよー!」
対峙する獣たち。
威嚇するサカイ動物園! モー! ブー! ワン!! メェェェェ!!(しかし見るからに家畜、もしくは食料)
吼えるサユカン! きしゃああああああああぎゃるるるるるるぉぉぉぉおおおお!!(こっちは明らかに肉食獣)
「あ、サカイ動物園が倒れた」
「……動物のほうが死んだふりしてどうするのー」
「総理大臣と官房長官は?」
「上の人間はいつだって自分の手を汚さないもんなんだよー」
そっかー、そういうもんだよねー。
「さて、どうしようか」
勝利の咆哮をあげた怪獣サユカンはのっしのっしと廊下へ向かい始めた。もしや、もうすぐ帰ってくるであろうトメ兄の元へ? まずい。
「カカちゃん、阻止!」
「よっしゃ!」
私はサユカンより早く部屋から出た!
台所へ行った!
バケツに水を入れた!
廊下に出たサユカンにぶっかけた!!
「お、サユカンの動きが止まった」
成功か?
「きしゃああああああああああああああ!!(だからイメージですってば)」
「攻撃対象がこっちにきた!?」
「当たり前だよー」
「ですよねー!?」
だだだーっと逃げて距離を確保! さぁ次はどうする。
「ここは私にまかせてー」
サエちゃんが前に出た。そして手に持った携帯をサユカンに向ける。
『サユカちゃん……』
トメ兄の声だ。怪獣サユカンの動きがぴたりと止まった。
「サエちゃん、これは」
「いつか使おうと思って密かに録音しておいた、トメお兄さんの音声だよー」
なるほど、これで愛の言葉の一つでも囁けばサユカンも封印されてくれるだろう!
『おしりがかゆい』
「ろくな言葉じゃないんですけど!?」
「あー、間違えたー! これ宴会とかで披露しようと思ってたやつだー!!」
「あんぎゃあああああああああああああ!!(なんか恥ずかしい)」
サユカンがくるくる回りながら周囲を破壊しつつ迫ってくる。再びだだだーっと逃げて距離をとる私たち。
「も、もう一度だー!」
『サユカちゃん……』
再び流れるトメ兄の声。今度こそいけるか!?
『おなかも、かゆいんだ』
「なんでそんなにかゆいの!?」
「まーたーまーちーがーえーたー!!」
「ふぎゃあああああああああああああ!!(なんかもうムカついてきた)」
廊下を突進してくるサユカン! 危ない!
どーん!
サユカンは見事に私たち――の脇にあった棚に激突した。そしてぶっ倒れる。
「……いちゃい」
「痛いー? 痛いよねー。すごい音したもんねー」
「慣れない暴れ方するから……お」
玄関から音が。トメ兄が帰ってきた! サユカンがのびてる今のうちに!
「えっほえっほ……トメ兄おかえり!」
「おぅカカ。ただいま」
呑気なトメ兄はいつもどおり。すぐに逃げてもらわないと!
「今ね! サユカちゃんが来てるんだけど――」
「あ、そなの? じゃあちょっと部屋に戻るわ」
「え? え? なんで? や、ちょっと、そっちにはサユカンが」
トメ兄はなぜか少し急いで廊下へ向かい、そのまま自分の部屋へと小走りしていった。
サユカンとすれ違うこともなく。
「あれー? 怪獣サユカンどこいった?」
「成仏したのかなー」
「誰が怪獣よっ!」
うわビックリした!? いつの間にか私たちの背後にサユカンが。
「ど、どこ行ってたの」
「おトイレ」
意外とマイペースだなこの子。
「そんなことより、もしかしてトメさん帰ってきた?」
「うん」
「きしゃああああああああああ!!」
「また怪物化したあああああ!?」
どうしよう! おトイレで一緒に邪悪な気も流しちゃったのかと思ったのに! このままだとトメ兄に向かって「浮気か? 浮気なんかあぁんっ!?」って詰め寄っちゃう。それはそれで面白いけどなんとかしないと。
「お、サユカちゃん。やっほー」
そんな私たちのやきもきも無視してトメ兄登場! サユカンは詰め寄るべく怪獣の足音をのっしのっしと響かせ、トメ兄へと突進を始めた!
そして唐突に足を止めた。
「……あ」
「あー、あはは」
呆然とするサユカン。照れ笑いらしきものを浮かべるトメ兄。
やがてサユカンの頬が赤くなってきて……なぜか、そのまま逃げ出した。
「え、え? 怪獣サユカンが……」
「鎮まった……そして逃げ出したー」
わけがわからない。サユカンはやたらとトメ兄を凝視していたけど、何か見たのだろうか。服はちゃんと着ている。社会の窓も開いてない。
「なんでサユカちゃん、おとなしくなったんだろー。今の今まで怪獣化してたのに」
サエちゃんが当然の疑問を口にすると、トメ兄は歯切れ悪く言った。
「んー、あー、このアイテムに封印効果でもあったんじゃないのか?」
アイテム? どの? え、え?
結局この日、サユカンの謎はわからないままだった。
後からサユカンに話を聞いたら「トメさんは、ユカさんとはなんでもないわよっ」と断言していた。
……ほんと、わけがわからない。
随分とまた更新が遅れてしまいました〜
季節の変わり目は体調を崩しやすくていけませんねぇ……皆さんも気をつけてくださいね〜
ちなみに今日の話は。
昨日、仕事中にお客さんが「きしゃあああ!」と叫んだのを見て思いつきました。