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カカの天下  作者: ルシカ
760/917

カカの天下760「ちびっこ探偵社の事件簿?」

 引き続きカカです……いいえ、カカ探偵社です。発足してから三十秒くらいです。本社は私の部屋、つまり現在私たちが集まっているこの場所です。


「それでは会議を始める!」


 わー、ぱちぱちぱちー。拍手してくれるのは愛すべきサエちゃんと恐るべきサユカン。何が恐るべきか? 顔だ。


「え、えーと。今回の議題は! 私たちがそれぞれ見かけたダブルデートの――」


「アレはデートじゃないっ!!」


 あまりに予想外の重低音な叫びに、私とサエちゃんの身体がビクッと震える。


「で、でも、サユカンは、ほら」


「直接その二人を見たわけじゃないんだからー」


「そんなことは関係ないっ! 二人がデートなんてそんなこと、絶対にないわっ」


「サユカン。絶対なんか絶対にないんだよ」


「どっちよっ!?」


 あ、自分で絶対って使ってるや。


「とにかく二人はデートしてないのっ! よりも戻さないの! ユカさんは死ぬのっ!!」


「そ、そこまで勝手に話を作るのはいくらなんでもー」


「きしゃあああああああっ!!」


 ダメだ、なんか人の声じゃなくなってきた。こないだ誕生日で色々あったせいかトメ兄への想いが今までになくスパークしてるのかもしれない。


 とにかくそっちの話はツッコまないほうがよさそうだ、うん! 


「じゃあ先にキリヤンとサラさんの関係について――」


「そんなことはどうでもいいのっ!! トメさんの方が大事よっ」


 ええええええ。今そっちツッコまないって決めたばっかなのにぃ……


「仕方ないよーカカちゃん。こっちの話を進めよー」


「うぅ……サユカン恐いよぅ……」


「話っ!! 進めっ!」


 あぁもう、わかったよぅ!


「じゃあまとめるよ! 昨日、トメ兄とユカさんは二人で喫茶店でお茶したあと、ケンカっぽくイチャイチャしつつも失踪! しばらくして帰ってきたトメ兄はなんか嬉しそうだった。『いいことあった?』って聞いたら『まぁな』って言ってた」


 見ない。見ない。サユカンの顔は見ない。サユカンの悲痛な叫び声も聞こえない。


「そこで何があったのかは全く教えてくれなかった。それで……サエちゃん?」


「私の奴隷情報ネットワークを使った結果、重要な証人を見つけたよー。ではどうぞ、ユカさんのお祖父ちゃん、だっけ? サワサカのおじいさん」


 待っていたかのように私の部屋に入ってくるおじいさん。本当に待っていたんだろう。部屋の扉の外でずっと。ごめんなさい、お疲れ様。


「ではサワサカさん、証言をお願いしますー」


「うむ。ユカのことじゃが……」


 ごくり、と固唾を飲んで聞き入る私たち。


 サワサカさんは三人をゆっくり見渡したあと、重々しく口を開いた。


「ユカはけっこおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


 ビックリした、結婚かと思った。


 結構、なんだ?


「胸がある」


「んなことは聞いてないわぁっ!!」


 サユカン爆発。


「おまえさんらは胸がない」


「んなことは聞いてないわぁぁっ!!」


 サユカン再爆発。


「可哀想に」


『同情すんなぁぁぁぁぁっ!!』


 私ら大爆発。


「……サワサカさん、ボケたー?」


「ほっほっほ、そんなに褒めてもなにもでないぞい」


「褒めてないから何か出せ」


「じゃあわしの自慢の尻を出そうか」


『帰ってください』


 私たちの心が重なった。しかしじいさんは「ほっほっほ」と余裕で流す。やはり歳を重ねてるだけ手ごわいのか、と?


「ユカがいつぞや手紙を読んでいたことがあっての」


 唐突な話。きょとんとする私たち。


「その少し後かの、なにやら編み始めたのじゃ。何かのプレゼントと言っておったの」


 このおじいさんは何を話して――や、待て。


「手紙って……もしかしてホワイトデーの、トメ兄の手紙?」


「あー、そういえばそんなのあったねー」


「プレゼントっていえば、最近トメさんの誕生日があったわよっ」


 つまり、トメ兄の手紙でユカさんはよりを戻すつもりになった? そして誕生日プレゼントを渡して仲直り? トメ兄の機嫌がよかったのは、そのせい?


 サエちゃんもサユカンもその推理に至ったらしい。


 神妙な顔のサエちゃん。


 サユカンは――


「さ、サユカン!?」


「も、モンスター……」


 サエちゃんが呆然と呟いた。そんな顔になっているのだ。


 なんとかしないと。このままではサユカンがお姉の仲間入りをしてしまう。


「そしてユカはええ身体しとる」


「黙れジジィっ!!」


 ユカさんにトメ兄が悩殺される前に、なんとかしないと!!


「しかし女の戦いはエロいほうが勝つのじゃぞ?」


「悪かったわねぇぇぇぇっ!!」


「ま、まぁまぁサユカ――ン? ってなに、サエちゃん」


 ヒートアップするサユカンを抑えようとしたら、サエちゃんに止められた。


「カカちゃん、サユカちゃんはあのままにしておこー」


「なんで!? サエちゃんだってあの顔を見たでしょ、ヤバイよ!?」


 必死に訴えてもサエちゃんは首を横に振った。そして「あれを見て」とサユカンとサワサカじいさんの二人を指した。


「ユカはエロい! おまえさんらはエロくない! これは事実じゃ!」


「小学生なんだから仕方ないでしょっ!」


「まぁおぬしの尻はいい線いっとるがな」


「ほ、ほんとっ!?」


 サエちゃんは深々と頷いた。


「あのままいけば、またすんなりサユカちゃんにエロい格好させられるよー」


「……サエちゃん。いい趣味してるよね」


「そんなに褒めても何もでないよー」


 褒めてないから何か出せ、とは返せなかった。なんとなく。


 えーと、とにかく。なんとかしないと。




 今回の事件。


 それは、サユカちゃんの顔です。



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