カカの天下751「仲のいいことはいいことです」
こんにちは……トメです。突然ですが皆さんに、重大なお知らせがあります。
「んしょ」
僕、笠原トメは。
「えっほ、えっほ」
なんと、寄生虫にとりつかれてしまったのです!
「よっこいしょ。ふぅー」
ああ、おそろしい……一体どんな目に合わされるのやら! おにーさん恐い! それにしても耳がかゆい。
「でさ、カカ。一息ついたところ悪いんだけど、聞いていいか?」
「なんじゃらほい」
「なんで一生懸命よじ登って僕の背中にはりついてるんだ?」
「寄生虫のテレビ番組見たらやってみたくなったの」
そんなこったろうと思ったわぃ。あー耳かゆ。
「ああ! なんて恐ろしい! これから僕はどうなってしまうのか!?」
そんなことを思いつつもノってあげる僕ってば良いお兄さんだなぁ。
「えと」
なんだその間は。どうするか考えてなかったんかい。予定もネタもなく兄によじ登るなんてそうそうできないぞ。さすがカカ、兄として鼻高々の逆だ。
「みーんみーん」
とりあえず鳴いてるし。てかそれセミだし。ていうか耳かゆいし。
「おなかすいた」
「夕飯の料理は終わってるもののすごく準備しづらいんですけど」
「よきにはからえ」
「適当によろしくって意味ですよね、それ?」
聞く耳もたないカカにため息をつきながらも準備開始。作ったおかずを皿によそって、カカをおんぶしたまま居間のテーブルへと運んでいく。
「さて、準備できたぞ寄生虫」
「あーん」
「……食わせろってか」
仕方ない。僕は箸を取っ――
「ばく」
「僕を食うんかい!?」
あ、でも耳を噛まれたおかげでかゆいのが消え――
「痛だだだだだだだ!!」
「噛み千切れない。安い肉だね」
「おまえはその安い肉の妹だろうが」
「知らないの? トメ兄。私はお母さんのいい肉をもらってるんだよ」
「ほう?」
「まず、トメ兄は胸肉だけど」
なるほど。さっき夕飯の買い物で見た一番安い肉だな、鶏の胸肉……うーん、母さんの胸肉と聞いて嫌な気が微塵もしないのは僕が男の子だからでしょうか。
「私なんかお母さんの肝臓をもらってきたんだよ」
「今すぐ返してこい」
確かに肉屋で高かったけどその言い方は恐い。あー、なんか僕も母さんの胸肉を返したほうがいいような気がした。そしたらもっと大きくなるのか、母さんの胸? いやん。
「トメ兄、あーん」
「ああ、今度こそ飯だな。えーと箸は」
「ばく」
「頭を噛むな!」
「あご痛い」
「知るか!!」
「む、なんだその口の利き方は。私は寄生虫なるぞ!」
「この虫ケラが」
「……えぅ」
おっと、思わず反撃不能なツッコミを入れてしまった。
「あーはいはい! ごめんごめん! 寄生虫は虫ケラなんかじゃないよな! もっと、なんだか、すごいよな! 普通の虫とレベルが違うよな!」
そう、普通の虫より遥かに気持ち悪い。
「うん、寄生虫は偉いのだ!」
でもなんか尊厳は取り戻したらしく元気になった。よかったよかった。よくねぇ。
「トメ兄、気をつけ!」
「おまえに気をつけるのか? 言われるまでもない」
「そうじゃなくて!」
「もっと気をつけろと? カカ……おまえ今度は何やらかす気だよ」
「ちーがーう! じゃあ前ならえ!」
「前にはテーブルと夕飯しかないが何をならえと」
「にゃー!!」
おーおー、ままならなくて鳴いちゃったよ。久々に聞いたな、この叫び声。
「私はきせーちゅーなのにー!!」
「はぁ。結局、何がしたいんだよカカは」
「規制!!」
わかりづらいダジャレだ。
「……虫はどこいった?」
きせい、はわかる。しかし、ちゅうは?
「ちゅー」
「ちゅーをするな!!」
危ない。僕のほっぺが大ピンチだった。
「くけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「……なにそれ」
「奇声」
「……虫は?」
「ちゅー」
「ちゅーをするなっつうに!!」
えー、こほん。
その後、だるくなって背中から床へ寝転がる僕VS本気で僕を絞めつけにかかったカカの激しい戦闘があったりしたのだけど……その勝敗は!
僕のほっぺが三回ちゅーされた。
……これ、勝ちか? 負けか?
さて、キャラ人気投票でワンツーフィニッシュを決めたお二人。めずらしくラブラブさせてみました。
ええ、ラブラブです。くっついてますし、何よりちゅー! ラブラブです。
いつもどおりに見えるのは気のせいです。
兄妹なのにちゅー? とお思いのそこのあなた。
気にスンナ。