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カカの天下  作者: ルシカ
745/917

カカの天下745「だって手芸部だし」

「勧誘をしよう!」


 現在時刻は昼休み。優秀なるクラブ員の二人を前にして、私は指令を発しました。あ、ども。どっかの艦長っぽく胸を張っていい気になってるカカです。


「わかったー、私は体育館で遊んでる子に声かけるねー」


「わたしはグラウンドにいる子に声をかけるわっ!」


「じゃあ私はヤツらの本拠地である五年生教室前廊下にて作戦を行う! それぞれ健康を祈る!」


「うん、健康大事だねー」


「……なんだっけ。拳法?」


「あちょー」


「カカすけの方こそ健忘症じゃないの。健闘よ、健闘っ!」


「ん、それを折る」


「折ってどうするのよっ!」


「おっと間違えた。ほら、似てるから」


 漢字が。


「ではとにかく祈る! 解散!」




 ――サユカの勧誘。校庭にて。


「んーっと、運動会のときに見た四年生……今は五年生だけど、大体の顔は覚えてるのよね……あ、いたっ! 三人もいた、けど、話しかけるのは何気に緊張するわね……あーあー、こほん。あ、え、い、う、え、お、あ、お!」


 発声練習の後は、腕を大きく広げて!


「トメさんよっ、わたしに力を!」


 ちゃらららっちゃらー(何かの音)。


「よし、おっけ。ねぇねぇ、そこの女の子たちっ」


「あ、はい。なんですか?」「……なによ」「ナンパ? ナンパ? にひひ」


「君たちはもうクラブって決めてるのっ?」


「はい、私は決めてますよ」「……別に」「やっぱりナンパ? にひひ」


「じゃあさ、わたしたちのクラブを見学してみない?」


「えぇと、そうですね。見るだけでしたら」「……別に」「ナンパ受諾!」


「ほっ、よかった! じゃあ早速来てみて? ちなみに手芸部なんだけど」


「失礼します」「……逃げる」「ぎゃあああああああ!!」


「え……なに、この反応」




 ――サエの勧誘。体育館にて。


「おーおー、みんな元気に運動してるねー。えっと、私は大きな声出ないから事務所で拡声器を借りて……あ、すいませーん。これ貸してくださーい。あ、どうも宮崎先生。始業式からの生徒の風当たりはどうですかー? あー、豪風で台風で猛吹雪ですかー、ご愁傷様ですー。えー? 私の力でなんとかー? 無理ですーめんどいですー。ではではー」


 こほん、と咳払いして、体育館で遊ぶみんなに拡声器を向ける。


『手芸部ですけどー』


 バスケをしていた男子がコケた。転がったボールに躓いて他の男子も次々にコケた。バドミントンをしていた女子のラケットがすっぽ抜け、そのまま相手の額に激突。バレーをしていた全員が滑り込みレシーブ(ボール無し)をキメ、設置されていたバレーネットがなぜか壊れて床に倒れ、高位置にあるバスケットゴールもなぜかガクッと傾いた。落ちなくてよかった。あ、一個落ちた。


 そしてサエ以外に立っている者は居らず、なんか阿鼻叫喚っぽい地獄絵図風味になってしまった。


『……失礼しましたー』


 手芸部、と口にしただけなのに。




 ――カカの勧誘。教室前廊下にて。


「手芸部ー、あー、手芸部はいらんかねー」


 最近作ったケロリンの着ぐるみ(キリヤンが持ってたチ○ルチョコの着ぐるみを改造した)を着て手芸部っぷりをアピールしながら勧誘している私。


 しかし。


「手芸部だよぉー」


「うぎゃあああああああああ!!」


「手芸部なんだけどぉー」


「助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


「手芸――」


「笑わされるうううううううううう!!」


 なにさ。笑えるならいいじゃんさ。


 ……なんだかうまくいかない。せっかくフレンドリーになるために廊下の真ん中をケロリンの着ぐるみで闊歩してるのに! ほら、周りを見てよ。みんな私に注目して――


「……ねぇねぇ、あれ見て」「また手芸部?」「うわ、やっぱ噂どおりだな」「あそこに入るなんて、とてもとても」「お、俺、お笑いに興味はあるんだけど」「やめとけ! レベルが違う!」「体も心も壊れるよ? 面白い感じに壊れるよ?」「うん……わかった、俺は堅気の道を行くよ」「偉い!」「カタギってなんだ?」「市の町長の名前だよ」「市長じゃないのか」


 ――注目して、逆効果になってるっぽい。ええい、こうなったら!


「そこの女子!」


「ひっ!!」


「手芸部に入らない!? 今なら洗剤とトメ兄がついてくるよ!」


「無理です! 不可能です! あたし、お笑いなんてできないもん!」


「お笑いなんて考えなくていいから!」


「絶対に嘘だわ!」


「なんで断言できるの! 手芸部っつったら手芸するだけの活動だよ!?」


「手で芸を作るんでしょ!! つまりは芸人でしょ! お笑いでしょ! 無理!!」


「なんでそうなるの! あ、私らのせいか。ってそれは置いといて、とにかく一度入ってみればわかるって!」


「そんなことになったらアタシの人生はおしまいよ!」

「本気で必死だねチクショウ!!」


 うう……ここまで拒否されたからには戻るしかないか……


 私はしょぼーんとしながら家庭科室へと帰ってきた。そこには同じく肩を落としたクラブ員の二人が。


「あ、カカちゃんー……」


「ダメだった……みたいだね」


「ええ。カカすけは格好からしてダメね」


 なんだとぅ。その通りだ。


「……こうなったら自分たちで作るか、新入部員を」


「人形でも作って『コレが部員です』とでも言うつもり? また変な伝説になるわよ、『手芸部の伝説その三十五、人造』とか」


 どんだけ伝説あるのさ。


「なんならヤケになってもう一つ伝説を作っちゃおうかー」


「なにする気よ……あ」


 ん、どしたのサユカン。私の後ろに何か――あ。


 何かじゃない。誰か、がいた。




 そして、再びクラブ活動の日。


「……なんで俺がここにいるのだ?」


「それはねー、タケダ君が私たちの奴隷だからー」


「そんなわけあるか!」


「そう思ってるのは君だけよっ」


「マジでか!?」


 そんなわけで、仕方なくタケダを新入部員に引き込んでクラブ解散を阻止したのでした。まぁ去年ほどタケダをうざいと思ってないし、いいけどね。


「じゃあ活動を始めよっか」


「待て! 俺はお笑いなんかできないぞ!」


「意外とできると思うけどー」


「い、いや、でも」


「つべこべ言わないのっ! じゃ、活動開始っ!」


「いやあああああああああ! どんな恐ろしい活動が俺を待っているのだ――!?」


 ……ちくちく。


 ……かちゃかちゃ。


「カカちゃん、そっちのビーズとって」


「ん」


 ……かちゃかちゃ。


「カカすけ、この布どう?」


「いいと思うよ」


 ……ちくちく。


 ……ちくちく。


「ん、どしたのタケダ」


「地味だ!!」


「や、だって手芸部だし」


「なぜだ!?」


「や、だって手芸部だし」


「これじゃまるで手芸部ではないか!?」


「や、だって手芸部だし」


 めでたし、めでたし。だって手芸部だし。




 というわけで、短期間に三連続くらい投稿してみました。うん、いい気分転換になった。ありがとう手芸部。


 仕事あってもこんくらいのペースで書けないことはないんですが、そこはまぁ心の余裕とか色々あるのでご勘弁を笑


 さてさて、もうすぐ人気投票〆切りですよー。お忘れの方は早めにね^^

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