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カカの天下  作者: ルシカ
744/917

カカの天下744「サユカの任務、注」

 うふふサユカです!! 別にうふふが苗字じゃありません。浮かれてるんですうふふ!


「――というわけで、手芸部の危機だーって三人で騒いでたんですよっ」


「そのわりにはサユカちゃん、危機感なさそうだね」


「さすがトメさん、よくおわかりでっ! わたしには秘策があるのですっ」


「ほう、どんな?」


「ダメだったら他のクラブへ適当に入ればいいんです」


「……手芸は?」


「あの二人なら例えバスケ部に入っても活動を無視して手芸するでしょ」


「あぁ、なるほど。そんな光景見たことないけど容易に想像できるなぁ」


「それでいつの間にかバスケ部もカカ部になるんですっ! あ、笠原部のほうがいいですか?」


「うちの家系は一体なんなんだろね」


 わかります? わかっちゃいますっ!? そうです、今、愛しのトメさんと二人でデート中なのですっ!


 事の発端は、わたしがサエすけから奥義を授かったことからです!


『サエすけっ! トメさんをデートに誘うにはどうすればいいのっ!?』


『素直に言えばいいよー』


 というわけで、内気なわたしは見事に『トメさん、デートしてくださいっ!』と言うことができたのですっ! そして作戦通りに商店街を二人でデート中。さすがはサエすけ、そんなことを素直に言えないわたしの心をちゃんとわかってますっ!


 え? 素直に言ってるじゃん、って?


 ……え?


 ……あれ、ほんとだっ!! この上なく直球に誘ってるよわたしっ! 作戦も何もないじゃんっ!


「サユカちゃん、クレープ食べる?」


「はいっ!!」


 えへへ……甘い……クレープだけじゃなくていろいろ甘い……まぁ細かいところは現在が幸せだからいいや、結果オーライで……多分わたしがこう思うのも見越してるんでしょうねサエすけ。恐ろしい子。でも感謝。えへへ。


 しかし!


 そんな幸せは長く続かなかった!


「おートメちゃん!」


「あ、タイヤキ屋のお姉さん」


 な、なによこの女はああああああああああ!


「今日はどうするの? うちのおいすぃータイヤキ、何匹買ってくの?」


「や、その」


 わたしのトメさんに、なに気さくに話しかけちゃってんのよっ!


「タイヤキよ? 買うとメデタイのよ? しかも食べると死タイが生きタイと思っちゃうくらいに美味しい&タイ力が回復するんだから!」


「そんなことはぜっタイにないだろ」


「あらあらトメちゃんも上手になったみタイね! でも残念、死タイはそもそも食べることができないから、ぜっタイにないとも言い切れないのよ!」


「ええい、益タイのない話を」


 な、なんて楽しそうなのかしらっ! それにお姉さんの、あの目!


「さぁ、買いタイでしょう? 食べてみタイでしょう!?」


 絶対にトメさんを狙っている目だわっ!(注:狙ってるのはトメの財布の中身です)


「あら、そちらのお嬢さんは……噂の妹さん?」


 むむむ、さも今気づいたかのような仕草。トメさん以外は目に入っていなかったということかしらっ!(注:商売人な姉さんは財布の中身がある人を優先的に視界へ入れます)


「どんな噂かは知らないけど、この子は妹じゃなくて」


「彼女ですっ!!」


 こんな年増に負けるわけにはいかないっ! そう思ったわたしは思わずこう答えてしまいましたっ! えっへん!


「えっ……でも、年齢が」


「わたしはトメさんより年上ですっ!」


 またまた嘘ついちゃいましたっ! で、でもでも、わたしはトメさんを盗られたくないんですっ! 


「トメちゃん、本当?」


 こんなわたしの気持ちをどうかわかって!! わたしの目を見て! そう願いながら、わたしはトメさんを見つめます。


 その視線を受けたトメさんは、やがて頷いてくれて、


「……まぁ、本当」


 きちんとわかってくれました! さすがトメさん、愛の力ですねっ!(注:実際のトメの心境は『ああ、また変な遊びが始まったんだろうな』と良いお兄さん風味です。あと、『この商売お姉さんうざいし、変態扱いでもなんでも嫌ってくれるならそれはそれで』とも思ってたりします)


「う、嘘よ! だってそんなに若くて、お肌もとぅるっとぅるで、どう見ても小学生か中学生……絶対にサバ読んでるでしょ!?」


「へいらっしゃい! 鯖を一匹かい!?」


「魚屋さんは呼んでないわよ!(注:ここは商店街です)」


 えっと、横から唐突におっちゃん湧いてきてビックリしたけど……


「とにかく、わかったら年増と魚屋さんは引っ込んでなさいっ!」


「と、とと、年増ですって!? あたしゃこう見えても二十代なのよ!」


「うっそだーっ! どう見ても三十代よ! サバ読みすぎっ!」


「へいらっしゃい!!」


「魚屋さんは引っ込んでろって言ってるでしょ! (注:ここは活きのいい商店街です)とにかく、身分証明にあたしの免許証を見なさい! ほら、ちゃんと二十代でしょ!!」


「なんて不細工な顔っ!!」


「きゃあああ! 写真は見ないで! 免許証の写真は不細工に映るもんなのよ!」


「あ、生年月日が見えなかったわっ。やっぱりサバ読んでるでしょっ」


「やぁ、我輩の名前はサバだよ」


「魚で腹話術までするんじゃないわよ、しつこいわね魚屋!! サバを読む、と鯖は違うでしょ!!」


「なにを言う! 同じだ! サバを読むの語源はな、昔は鯖が途方もなく大漁に獲れて、それを漁師がものすごい速さで数えていって数が合った試しがない、という事からきているんだ! だからその鯖もこの鯖も一緒だ!」


「そんな豆知識いらないわよ! なによ! うちのタイヤキがあんたんとこの鯛より売れてるのを根に持ってるの!?」


「そりゃーてめぇんとこはソレしか売ってねぇんだから当然のことだろが! 売り上げはこっちが上だ!」


「ふん! 最近、のどぐろ(注:高級魚です。めちゃうま)を仕入れたからって調子に乗ってんじゃないわよ!」


「乗ってるのは調子じゃねぇ! 脂だ! この魚の美味さはてめぇにゃわかるめぇ!」


「タイヤキと魚を一緒にすんじゃないわよ!」


「その言葉さっきのてめぇにそのまま返すわ!!」


 ギャーギャーと商店街戦争を始めたタイヤキ屋さんと魚屋さん。わたしとトメさんは、そろり、そろーりとその場から逃げ出しました。


「……ふぅ、なんだったんだ結局」


「トメさんっ!」


「は、はい?」


「わたし、トメさんの彼女ですよね!?」


「や、違う」


 ガーン!!


 う、うう、さっきは答えてくれたからもしかしてと思ったのにぃ……


「えっ……と、サユカちゃん」


「はぃぃ……」


「そこでお茶しよっか」


「はいっ!!」


 トメさんとお茶っ! トメさんとお茶っ! 


 え? 落ち込んでたのはどうしたかって?


 だって、一緒にお茶よっ!?


 デートよっ!?


 今はダメでも、『彼女』と言わせるチャンスはまだまだあるんだから!


「トメさんっ! これ読んでください」


「かれおんな」


「妖怪!?」


 でも道は遠そう……でも負けないわっ!




 注:枯れ女。いろいろ人生に疲れて枯れた女が進化した妖怪。友達をどんどん枯らしていくので注意。愛という水をあげれば人間に戻る。


 例:サカイさんが一時期それになりかけていた。




 注:のどぐろ、という魚の名前を出したのは、私が昨日食べたからです。塩焼きだった。やばいぐらい美味かった、でもヤバイぐらい高かった。うぎゃあ。

 

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